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zoom RSS 『マン・レイ展がやってきた。』前衛芸術家兼映画監督マン・レイ展に行ってきました。

<<   作成日時 : 2010/10/26 20:10   >>

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 いまからおよそ30年前に亡くなった、ロシア系アメリカ人の写真家であるマン・レイの名前を大阪市営地下鉄の吊革広告でたまたま見かけたのは先週梅田に出かけた帰りでした。

 その車両のその位置に乗り込んだのは偶然ではありましたが、数年前に前衛映画の記事を書こうとしたときに選んだのがマン・レイの作品である『ひとで』だったこともあり、今週休みが取れたので、中之島にある国立国際美術館まで出かけていくことにしました。

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 今までに行ったことのない場所なので、JR福島駅から先は歩いて探さなければ行けませんが、のんびりと“ちいさんぽ”みたいにウロウロしようと思います。

 まあ梅田の近くなので、分からなくなったら場所を聞き込みしていけばなんとかなるでしょう。お昼もあのへんで探そうと思います。美術館に行くのも久しぶりです。学生時代は絵を見るためにニューヨークまで出かけていき、メトロポリタン美術館や近代美術館で一週間過ごしました。

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 長期休暇が取れたら、もう一度行ってみたい場所です。ゴッホ、ルノワール、モネ、レンブラント、ピカソ、ゴーギャン、ダリ、デ・キリコなどの絵画は生で見たほうが迫力があります。奈良からなので、大阪駅手前の福島駅に着くまでは一時間程度、快速電車に揺られなければなりませんが、座って行けるだけましなのかなあ。

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 奈良駅も改装されてしまい、どんどん無駄な公共工事の影響で昔の面影や趣が減ってきています。まあ、それはともかく福島駅に到着し、まずは目印になる浄正橋を探しました。しばらくすると堂島川を渡るとすぐに一見しただけでもそれとわかる建物が遠くに見えました。

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 地下三階に下りて、会場に入っていくと膨大なコレクションに囲まれました。特にゼラチン・シルバー・プリントによって撮影された写真群はどれも艶めかしく、質感が繊細であるのに被写体の命がこもっているようでした。

 モデルには超のつく有名人が数多く、イヴ・モンタン、ヘミングウェイ、ピカソ、ダリ、キキ・ド・モンパルナス、イサム・ノグチ、ジャン・コクトー、エルンスト、ブルトン、ストラビンスキー、エヴァ・ガードナー、ポーレット・ゴダード、ヘンリー・ミラー、エリック・サティら錚々たる顔ぶれを撮った写真が並べられていました。

<尊敬する芸術家の一人 ジャン・コクトー >

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<もっとも驚くべき前衛芸術家にして成功者 パブロ・ピカソ >

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 彼は写真だけではなく、エッチングやリトグラフなどの版画や絵画、そして映画にも才能を発揮していたので今回の展示では彼の集大成を見ることが出来ます。また僕にとっては今回最大のサプライズだったのが映画で、彼の監督した代表的な作品である『ひとで』『理性への回帰』『エマク・バキア』『さいころ城の秘密』が巨大なスクリーンで繰り返し上映されていたのです。

 国立国際美術館サイトでのマン・レイ展についての記載でも写真や版画のことを主に紹介していて、映画をまるでなかったかのように無視していたので、展示されていないのだと思っていたので、とても嬉しくなりました。

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 以下は簡単な感想になります。

『ひとで』 数年前に書きましたので今回は省略します。ただし大きなスクリーンではじめて観る『ひとで』は美しく、そしてグロテスクな艶かしい動きを見せてくれます。

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『理性への回帰』…2分少々に過ぎない短編です。フィルム上に釘や砂を撒き、それを感光させてフィルムに焼き付けるという手法を使っています。激しく明滅するので、目がチカチカします。ほとんどがこういった意味不明の映像が続き、最後にキキ・ド・モンパルナスの裸体が映し出されて終わる。理性というのは本能が基礎なのだろうか。

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『エマク・バキア』…20分程度の作品です。今回上映されたなかではもっとも理解しづらいかもしれません。また固定にしろ、移動にしろ、とにかくブレがひどく、大画面で観ていると気分が悪くなる方も出てくるでしょう。『理性への回帰』や『さいころ城の秘密』にも出てくるイメージや彼の制作した造形物がここに頻繁に現れます。

 彼はイメージで楽しんでいるだけなのか、それともストーリーと一体とならねば成立できない商業映画へのアンチテーゼを提起しているのだろうか。

『さいころ城の秘密』…20分くらいだったかなあ。『エマク・バキア』を経験した後に始まる。ストーリー性があるので、随分と分かり易く思えます。ここで印象的なカットがありました。それは場所が室内プールで(天井からブランコが吊られていて、こりゃブルジョア的だなあなどと思いながら観ていました。)、底には人影が映し出されていて、その影は移動していく。

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 水面はきらきらと光が反射し、人が飛び込むと水しぶきが立ち上がり、波紋を広げていく。人影と水面の間にはゆらゆらした様子が見え、たしかに水の層が存在しているのを感じるでしょう。不思議な雰囲気に満ちた作品で、奇妙な魅力を持っています。

 字幕付きのものはなかなか見ることが難しいので、一見の価値はあります。ただすべてがサイレント作品なので、全部観ると40分以上を無音の空間で過ごさねばいけませんので、ご注意ください。

 実際、ぼくが行った時はぼく一人しか観客がいませんでした。『さいころ城の秘密』から観始めて、『エマク・バキア』まですべてを観てから出て行きましたが、中にはぼくより後に来て、ぼくよりも随分先に出て行く人ばかりでした。ドラマチックなものでも期待していたんでしょうか。

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 残念だったのはマルセル・デシャンとの共作だったためか、『アネミック・シネマ』が上映されなかったことくらいでした。大画面であの回転運動を観たら、どうなっていたのだろうとか、フランス語の難解な文字をどう日本語訳するのかを楽しめたことでしょう。

 映画のことはこのくらいにしておきます。

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 さあ、見終わるとまだ展覧会を半分しか見ていないことに気付きました。いよいよ後半へ移っていきますが、40分間の集中でかなりへばっているでしょうが、気を取り直し、カラーに変わっていく晩年の作品まで一気に見ていきましょう。

 全部見終わるとお買い物コーナーがあり、さまざまなマン・レイのグッズが所狭しと並べられている。スカーフ、トートバッグ、カレンダー、ポスター、ポストカード、Tシャツ、グラス、マグカップ、今回のパンフレット(分厚く、書籍と言ったほうが適当かも。)、ピンバッジ、ストラップなどなどマン・レイが生きていたら、おそらくひっくり返るであろう商品がたくさんありました。

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 ぼくはパンフレットとマグカップ、それとひとでプリントのTシャツを購入しました。ひとで柄がおしゃれかどうかは疑問ですが、あまりないプリントですので、迷わずに買いました。マグカップもMOMAのものを思い出させるシンプルなカップだったので、ついつい買ってしまいました。秋の夜長にカフェオーレでも入れましょう。

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 この美術館にはイタリアン・レストランがありましたので、そのまま入っていきました。茄子とベーコンのパスタ、フィレ肉とポルチーニ茸のグリル、生ハムのサラダ、マカロンでサンドしたアイス、そしてエスプレッソがセットになったコースが出ていたので、それをいただきました。

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 値段が安い割にはボリュームがありますので、お試しください。帰りも堂島川を回遊している遊覧船を眺めながら、のんびりと駅まで歩きましたが、休みの日に初めての道を歩いていると時間がゆったりと流れていくように思えます。行くときは結構どんよりと曇っていましたが、帰り際には良く晴れていて、お昼休みのOLさんやサラリーマンがのんびりと会話しています。水面がキラキラ光り、川の匂いにどこか潮のかおりが混じっていて、いつか行った海を思い出していました。

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 帰りは大阪まで歩き、電車に乗って家に戻りました。またあの美術館に行きたいなあ。


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 エレナがロジェを溺死させる場面の緊迫感の高まりは、この作品の頂点だと思います。物語の前半からのロジェの苦悩も切実な感情表現でしたが、この船上での二人の罵り合いには緊張感の極限が表現されています。  わたしはエレナに溺死させられる場面でのロジェには強烈な感情移入をして、身震いしてしまったほどです。 ...続きを見る
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 ジャン・コクトーは、詩人であるとともに、映画人、小説家、舞台演出家、評論活動家等々、芸術全般に渡って活躍した才人でした。彼は19世紀終わりからのフランスで、文化・芸術の最も繁栄していた「ベル・エポック」の時代以降を疾走し、センセーショナルなコクトー芸術を確立していきました。 世紀末とベル・エポックの文化 福井 憲彦 / 山川出版社 ...続きを見る
時代の情景
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「マン・レイ展〜知られざる創作の秘密」
大阪の国立国際美術館で開催されている「マン・レイ展〜知られざる創作の秘密」。 会期は11月14日まで。今回の展示会は、マン・レイの遺族が設立、全作品の著作権を所有するマン・レイ財団所蔵の写真、絵画、彫刻、デッサンおよびマン・レイ自身の所持品を一堂に集めて、2007年から欧州を巡回している展覧会が、日本にも紹介され、東京と大阪で開催されることになったもの。 ニューヨーク(1890-1921) パリ(1921-1940) ロサンゼルス(1940-1951) 再びパリ(1951-1976) ... ...続きを見る
寄り道カフェ
2010/11/08 13:37

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
用心棒さん、こんばんは。
10月になって、札幌に異動になったのですが、地元に家があり土日には帰ってくる生活です。
>マン・レイ展
いやあ、芸術の秋ですね(北海道では雪が降って冬に近いですが)。
わたしは、この前衛の体系は「ヌーヴェル・ヴァーグ」出現前のフランス映画へ引き継がれていたように思います。マン・レイはフランスでも活躍していた時期があったと思っていました?(かんちがいかな?)
ルネ・クレールからオータン・ララの作品には明らかにこのような抽象的でシュールな映像の土台があると思います(もちろんブニュエルにも)。
当時は、映画の視覚効果は光学的なところにあるわけですから、芸術的な感性の表現手段に映像の特殊撮影を活用するための可能性も、まだまだ無限に模索できていた時代だったのだと思います。ヒッチコックも「白い恐怖」でサルバドール・ダリの協力を得ていますし、ウルトラマンのフォルムの発案もそれに近いものだったのでは?(わたしは地元の美術館のウルトラマンアート展を見てきました。)
3Dも、もう少し良識的な芸術家たちの手によって、用途の目的を定めていってほしいものです。
では、また。
トム(Tom5k)
2010/10/31 00:50
こんばんは!

>フランス
彼はアメリカ時代は不遇でしたが、フランスに渡ると才能が認められていますし、有名な作品はこの時代のモノが多いですね。

>ヒッチコック
あの映画のいくつかのカットはヒッチ作品の中でも異色の映像でしたね。映画として成功したかどうかはなんとも言いかねますが、『ロープ』など実験的な作品も精力的に製作していたヒッチはただの職人ではないですね。

>ウルトラマン
そのままズバリのダダABCという奴等がいましたね。ブルトンもいましたが、明らかにダダイズムなどの芸術運動を意識しているように思えます。

>3D
いまはまだ見せ物的な使い方で、昨日から始まった『SAW ファイナル』などはその典型なのでしょうね。

ではまた!
用心棒
2010/10/31 01:26
ようやく、こちらにお伺いする時間が出来て、「市民ケーン」拝読と思ったら、このマン・レイ展の記事が。
かなりマニアック的ですね。周囲の評判聞いたら、さほどっていう声が。なるほど一般向きではないようですね。映画もあるということで、明日の祭日、行ってみますね。
ところでこの国際美術館って動線とか良くないと思いません。それ以上に美術館っていう品位とか魅力が薄いと思いません?。以前開催されたゴッホ展に行ったときにつくづく思いました。それからも何度か訪れているんですけど、どうもしっくり来ない建造物で足を向けたくなる気が起きない建物。中の島の東洋陶磁美術館の風情が欲しいところです。と愚痴をこぼしてしまって。
用心棒さんも行かれたイタリアン・レストランで私もランチをしましょう。
ではでは♪
シュエット
2010/11/02 16:06
 こんばんは!
>動線
 最悪でしたよ。どっちから見れば良いのやら、さっぱり分かりませんでした。

 下手に見ていくとそのまま次の部屋に行ってしまいそうになる感じで、作者の意図を反映しているとは言いがたかったですね。

 美術館って、ずっとその場所にたたずんでいたいと思わせる作りをしていて欲しいんですよ。大量に作品を集めて「全部で400点の展示!」とか言われても、記憶に残るのはわずかですので、

 品数よりも一点ものの最高レベルの作品を選りすぐって、持ってきてもらうほうがありがたく思います。

 ではまた!
用心棒
2010/11/02 19:35
土曜日の午後、マン・レイ展行って着ました。
いやぁ行ってよかった。マン・レイって意外と知っているようで、知っているつもりでも知らなかったなって思いました。それだけでも行った価値はある。
彼の地道な創作活動に触れることができ、貴重な時間でした。3時ごろについて閉館が5時にちょっと怒り。でも調べたらたいていの美術館って5時閉館が多いんですね。せめて7時までとかにできないの!ってまたまた愚痴が(笑)
アトリエでのジュリエットさんのインタビュー映像も興味深かった。今回はなぜかあえて図録集はかわずにかえりました。彼の創作の過程をみせてもらった。出てきた作品は決して完成形ではなくって彼にとって創作途上。そんな彼の創作活動の一端に立ち合わせてもらった。なんだかそんな思いがして敢えて買わなかった。
良かったです。
シュエット
2010/11/08 13:44
こんばんは!

建物には問題ありですが、展示物は結構気合が入っていたでしょ(笑)

デッサンとかも数多く展示されていましたし、見所は多かったのではないでしょうか。

ノベルティ・グッズみたいにいろんなものを商品化していて、商魂逞しいなと感心しておりました。

 『地獄の黙示録』を書いていきましたが、あまりにも膨大になりすぎたために、分割して掲載することにしました。

 第一弾をまずはアップしましたが、上映時間で言うとやっと一時間のところですので、まだ1時間半分残っています。しかも後半がより難解になるわけなので、何枚かかるのか見当がつきません。

のんびり書いていきますね(笑)

ではまた!

ではまた!
用心棒
2010/11/08 19:26

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『マン・レイ展がやってきた。』前衛芸術家兼映画監督マン・レイ展に行ってきました。 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
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