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zoom RSS 『黒蜥蜴』(1968)深作欣二監督、丸山明宏主演、三島由紀夫出演の幻の作品。

<<   作成日時 : 2010/06/12 23:34   >>

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 いつものように、これもまた、現在わが国ではDVD化されていない作品の一つで、断片を動画サイト等で見ることはあっても、全編となると、なかなか視聴の難しい作品ではあります。

 『黒蜥蜴』はもともとは原作が江戸川乱歩の小説を三島由紀夫が戯曲化した舞台演劇で、舞台で上演されたときには『ヨイトマケの唄』『メケメケ』で有名だった丸山明宏(現・美輪明宏)を主役に起用していました。三島というと今では文学のみしか語られませんが、この作品だったり、『わが友ヒットラー』だったりと舞台演劇にも類まれなる手腕を発揮しています。この作品の舞台演出も彼でした。

 主演は丸山明宏、つまり現在の美輪明宏です。今では歌はもちろん、舞台やスピリチャルな分野での人気も加わり、神秘的なイメージの美輪明宏ですが、ここまで来るまでには相当な苦難が多かったようで、ぼくの母親も昭和40年代の大阪で、紫色に髪を染め上げた彼を間近で見たときには大いに衝撃を受けたそうです。石を投げる人もいたそうです。染めている人自体が少ない中で、しかも紫色というのはかなり珍しかったので、そういう行動をとったりする人もいたのでしょう。

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 ぼくは個人的には彼の声に魅力を感じています。こういう言い方が正しいのかどうかは分かりませんが、多重音声とでもいうのか、彼が話しているときの声にはいくつかの音程があり、高め、低め、中低音とでもいうのか、同時にリエゾンのように聞こえてくるのです。

 それが空耳なのか、彼の声の特徴なのかは知りませんが、ドスの効いた低音の声にはドキッとさせられますし、中低音の声(?)を聞くと、ほっとするようななんとも不思議な声なのです。詳しい方がいれば、教えて欲しいなあと思いながら、いつも彼の声を聞いています。

 今回の映画版(1962年にも『黒蜥蜴』は京マチコを主役に迎え、映画化されている。)では深作欣二が監督を務めましたが、深作監督といえば、『仁義なき戦い』を筆頭とするヤクザ映画や『バトル・ロワイアル』などのバイオレンス・アクション映画などで、東映を支え続けた職人気質の映画人でした。

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 一般的には上記のようなアクション映画のイメージが強い人ですが、『柳生一族の陰謀』のような時代劇も撮るし、『火宅のひと』のような文芸作品も撮る多才な監督でした。この『黒蜥蜴』も舞台版の主役であった丸山明宏(現・美輪明宏)を映画でも主役に起用するなど、思い切ったキャスティングをしています。

 彼以外にも、ヒロインに松岡きっこ、助演には木村功、川津祐介、西村晃(二代目水戸黄門さまですね!)を起用、丹波哲郎や原作者の三島由紀夫を端役(日本青年の生人形役!)に使っていたりして、口うるさい映画ファンや文学ファンたちをあっと言わせました。

 なかでも若かりし頃の松岡きっこのグラマラスな肢体は見事で、全裸のボディを腕や角度で隠している撮り方からはなんでもかんでも見せるのが能ではないことを教えてくれる。彼女の身体を舐め回すように撮っているカメラマンの腕はお見事と言うしかない。フェチシズムではないエロチシズムのほうです。男の欲望の視線です。


 これが黒蜥蜴の視線なのだったら、彼女(役柄上)はレズビアンなのでしょうが、彼女(黒蜥蜴)は彼(美輪さんは男性なのです。)な訳ですから、なんだかこの視線ひとつとっても、ややこしい倒錯した世界観のある映画なのです。

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 撮影も個性的で、基本的に薄暗く、悪人たちが蠢くような色彩はまるで暗闇のなかの黒蜥蜴そのもののような薄気味悪さでした。爬虫類には独特の気味悪さがありますが、この映画ではそれを映像で表現しています。

 映画初主演だった丸山明宏は『黒薔薇の館』でも引き続き、深作映画で主役を演じています。今では『黒蜥蜴』『黒薔薇の館』ともに、国内ではDVD化されてはおらず、大昔のVHSを見るしかない。もしくは美輪明宏主演の舞台劇を生で見るという方法もあります。

 より完成された芝居を見るのであれば劇場で良いのでしょうが、荒削りな演技や緊迫感のある芝居を見るのであれば、この映画版を避けて通ることは出来ません。

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 ただしこのビデオテープが厄介な代物で、かなり前に製作されたこともあり、大変貴重なアイテムとなっている。熱心なマニアがいるために、どんどん値段が跳ね上がり、通常は一万円から三万円の間でオークションが揺れ動いているようです。売れるのは確実なので、権利関係をクリアして、早く気軽に見たいものです。

 映画のレベルはかなり高く、丸山の個性的で存在感抜群の演技も相まって、一度見たら、忘れられない魅力を備えています。舞台芸術を導入した室内装飾も色彩感覚、調度類ともにゴージャスかつ妖しい雰囲気を醸し出している。サイケデリックなだけではない腐敗が描かれているように見えました。

 ショッキングなシーンとしてはさきほどの全裸の松岡きっこ以外にもうひとつあり、それは丸山明宏と三島由紀夫のキス・シーンです。昭和40年代に男同士のキス・シーンが許されるはずもなく、スキャンダラスな話題を提供しましたが、ホモセクシャルな描写でもあるので、これが映画への正当な評価を妨げ、今日までの封印に繋がっているのではないか。三島の遺族もホモセクシャル描写の強い『黒蜥蜴』と『MISHIMA』の二作品に関しては今現在でも国内での販売を認めていないようです。

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 内容自体は暗黒ミュージカルと荒唐無稽なフィルム・ノワールをブレンドしたような作風で、大いに楽しませてくれます。小道具が洒落ていて、移動用の車両に黒塗りのロールスロイスを使ったり、サロメの絵画を大胆に取り入れたりと、三島由紀夫の美的感覚を多く反映した映画となっている。

 台詞回しも舞台のようなそれで、不思議な台詞がかなり多いが、舞台のような独特な雰囲気と丸山明宏の浮世離れした存在感によって、すべてが自然な感じで受けとめることが出来る。これこそが俳優の力量なのでしょう。芝居がかったなどというレベルではなく、完全に芝居調なのです。

 それでも俳優の凄みがあるので、映画としてきちんと成立しています。いわば暗黒のミュージカルとでも言えそうな独特の映像は他ではあまり見ることはない。丸山と三島の演出あっての映画なのでしょうが、これを成立させているのは才人たちのおかげなのでしょう。

 ハマるとクセになる作品で、今回は記事を書くに当たり、三回ほど見ましたが、全く飽きの来ない作品で、見る毎にあちこちのディティールが見えてくる素晴らしい映画でした。

総合評価 85点


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良い映画を褒める会。
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映画評「黒蜥蜴」
☆☆☆(6点/10点満点中) 1968年日本映画 監督・深作欣二 ネタバレあり ...続きを見る
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
2014/01/25 20:28

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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
用心棒さん、こんばんは。
ワールド・カップ中にお邪魔します。
江戸川乱歩は、わりと好きな作家で、この「黒蜥蜴」は特に好きです。
明智VS怪人たちの対決は、何ともノワール的であり、更に漫画的でアクロバティック、魅力一杯です。日本のパッドマン?
戦前の日本の都会の猟奇を耽美的魅力にまで高めている。
しかし、変に芸術ムードを醸成したり、安易な推理ものとしたり、明智ものをうまく映画やドラマにしていることは少ないように思います。この深作&丸山版もわたしとしては、本当に惜しい作品と思っています。丸山の個性は「黒蜥蜴」として完璧でありますが、それに助けられているのみのような・・・?きびしいでしょうか?
オカピーさんがよく批判してされている原作と比較しての映画評になってしまうんですよね。明智ものは、どうも別物と考えられないんだなあ。
最もうまく江戸川乱歩を映像化したものとして、15・6年ほど前のTVドラマ、佐野史郎主演の「乱歩−妖しき女たち」・・・用心棒さんは、ご存知でしたか?
これは少年探偵団のワン・ショットも素晴らしかった(ポケット小僧まで出てきます)ですし、「魔術師」のワンシークエンスが最高でした。魔術師の娘、若き日の明智夫人、文代を演じた小川範子も「はぐれ刑事」の娘役よりずっと素晴らしかったです。
参考までに。

http://tod.tbs.co.jp/item/1338/

それから、舞台劇の挿入曲集を持っているんですけれど、この表紙の絵が気に入っています。

http://img2.douban.com/lpic/s3994351.jpg

では、また。
トム(Tom5k)
2010/06/14 23:41
 こんばんは!
>ワールド・カップ
いやああ!勝ちましたねえ!悲観的に見ていましたが、一回くらいは勝ってくれないと盛り上がりませんしね。今日はずっと眠かったですよ。
>丸山の個性
彼の存在感というのはずば抜けていますね。他の役者が控えめな人が多い分、よけいにそう感じてしまいますね。スクリーンを支配しているようでした。

>佐野史郎
乱歩モノって、周期的に作られますね。ここ10年位でも何本も映画化されたり、ドラマ化されたりしていますね。佐野史郎のは見てませんね。

舞台劇をまたやってくれたら、観に行きたい作品です!

ではまた!

用心棒
2010/06/15 21:13
こんばんは。
ずーっと昔にコメントしたきりで、でもずっと楽しみに読んでます。特に最近の記事は興味深い〜

自分にとって懐かしいけど、所見のとき既に「貴重なスクリーン公開!コレが最後!」な触れ込みで私は19歳でした。
あれから一度もお目にかかることは無く、しかもあの映像は脳裏に突き刺さったままなわけで、この記事読んでその棘を抜いてもらったような気持ちです。(もちろん忘れるって意味じゃなく)

三島のキョーレツなイメージに、どってりと重たい魅力の丸山。
見世物としての自分たちを誇らしく、楽しんでる!って当時の私は歓喜しました。
迷うことなく「芝居がかって」やり切る演出及び役者たち、やり切らせる監督、どちらも迷いが無く清清しい。

なんだか、今こそこういうこってりとした重たくも荒唐無稽な映画が見たいなぁって思います。
日々の反動かな?(笑)

これからも楽しみにしてます♪
まりえ
2010/06/26 01:18
 まりえさん、おひさしぶりです!

お気軽にコメントを入れてくださいね(笑)

>最近の記事は
最近はマニアック一直線になっております。書きたい記事というのが、大昔に見た映画、それもなかなか放送されないようなものばかりに偏ってきています。

この前もヤフオクでサモ・ハン・キン・ポーの『燃えよデブゴン』と深作監督の『軍旗はためく下に』を落としました。

>芝居がかって
あれだけ普段使わない言葉を多用しているのに、丸山の圧倒的な存在のおかげで、きちんと映画として成立しているのは凄みを感じました。

お言葉を励みに更新していきます!ではまた!
用心棒
2010/06/28 00:30
前記事へのコメント失礼します。
どうやったら68年の黒蜥蜴が見られるか検索してたら迷い込んだ者です。
この映画、DVD化されていないんですね…!
見たくても見られないので、詳しいレビューに沢山画像がついていて、とても楽しく拝見させていただきました。ますますどんな映画なのか気になりました。

マブゼ
2010/09/23 14:55
 こんばんは!
>見たくても見られないので
 そうなんですよ。権利やら表現やらで販売元になるであろう各映画会社が二の足を踏んでいるのであろう作品がかなり多いですね。

 深作作品ではこれもそうですし、『黒薔薇の館』『軍旗はためく下に』などもニーズが高い作品なのに販売されていません。

 両方とも所有しておりますので、時間が取れれば記事にしてみます。東映は長い間、お蔵入りさせていた『暴走の季節』などの暴走シリーズをDVD化させましたので期待したいですね。

 ではまた!
用心棒
2010/09/24 23:15
はじめまして。

http://video.fc2.com/content/%E3%80%90%E9%AB%98%E7%94%BB%E8%B3%AA%E7%84%A1%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E3%80%91%E4%B8%89%E5%B3%B6%E7%94%B1%E7%B4%80%E5%A4%AB.1968/20110404maSuSYTE/&tk=T0RRM01UY3dOalU9/

【高画質無修正】三島由紀夫.1968
『黒蜥蜴』幻の三島由紀夫あぁーっ
 
現在日本では監督深作欣二の名作、映画『黒蜥蜴』はDVD化されていない。
断片を動画サイト等で見ることができるが、全編の視聴はできない。
フランスver.超レア全編無修正の『黒蜥蜴』を高画質うp。

日本でDVD化されない理由は、
三島由紀夫の遺族が許可しなかったから。
なぜかって、あぁーっっっ! だもん。
三島由紀夫死後から40年以上。
もう、解禁したっていいじゃない。
kaori
2011/04/07 02:28
こんばんは。

おねえキャラがふつうに支持され、テレビのゴールデン枠でもかれらが出演している現在ならば、この映画は正当に評価されるのではないでしょうか。

去年はCSでも放送されていましたので、DVD化される日も近いと思っています。

ではまた!
用心棒
2011/04/07 21:45
そうそう!箱の中の全裸の松岡きっこさん! 胸の前のその腕をもうチョイどかして・・・と、私は女性なのですが、女性の私でも思いました。深作監督の役得満開シーンでした。松坂慶子さんにしろ荻野目慶子さんにしろ・・・
三島先生は熱演すればするほど、この人、ギャグでやってんのかな?と思う。黒人との格闘シーンなんて上手い!たいしたエンターテイナです。
美輪明宏さんの多重音声の件、用心棒様さすがです。美輪さんは地声は男ですから、意識して声作ってます。昔、毛皮のマリー観た時、演技中、美輪さんが(とっさの時は男に戻ってしまい)「オイ!」と男声だしたりして笑いをとってました。
無意識にしろ、声を使い分けているんですね。喋り方を変えるのは簡単だけど、声のトーン不自然でなく変えるのは難しい。
馬込の烈士
2012/03/08 21:07
それに美輪さんは音大出身の歌手というのもあるかもしれませんね 台詞を歌うように語るのかもしれません また、黒蜥蜴には、それが似合います
馬込の烈士
2012/03/08 21:45
 こんばんは。
>松坂慶子さんにしろ
『火宅の人』と『いつかギラギラする日』でしたっけ。
原田美枝子さんも脱がされてしまいましたね。

三島さん、美輪さん、深作さんと三人も個性派が勢ぞろいした凄い映画でしたね。

>毛皮のマリー
おおっ!うらやましい!美和さんの声はとても魅力的で二年前くらいにNHKで歌っていたのを聴いたときに鳥肌が立ったのを覚えています。

>作って

そうなんですね。響きが独特で、ぼくは好きです。

黒蜥蜴はニーズが高いので、ぜひともDVD化して欲しいですね。

ではまた!
用心棒
2012/03/09 00:25
こんばんわ。
今夜21時のTOKYO MXで紹介されてました。

といっても一件はコレ。
『マジカル・ガール』
2014年のスペイン映画。脚本・監督はカルロス・ベルムト。日本のテレビアニメ「魔法少女ユキコ」にあこがれる少女をめぐる物語である。 2014年のトロント国際映画祭とサン・セバスティアン国際映画祭で上映された。サン・セバスティアン国際映画祭では作品賞と監督賞を受賞した。 ウィキペディア
どうも黒蜥蜴オマージュ作品だと紹介されてました。
御覧になったことは、ありますでしょうか?

もう一件は、深●監督と荻野●女史。
病床の監督は女史と営むためにホルモン治療を拒否(たたなくなるため)。

偲びつつ合掌。
きやらはん
2016/10/05 21:50
こんばんは!

>ユキコ
残念ながら、見たことはございません。

>深●
おおっ!ゴシップには詳しくないのですが、●作監督と荻●目ができていたとは知りませんでしたよww

好きな女を抱きながらの腹上死とかの方が彼らしく破天荒だったかもしれませんねww

ではまた!
用心棒
2016/10/06 00:28
町山智浩 映画『マジカル・ガール』を語る - miyearnZZ Labo
http://miyearnzzlabo.com/archives/36236 
2016/02/23 - 町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で、魔法少女アニメが大好きな難病の少女とその父親の姿を描いたスペイン映画『マジカル・ガール』を紹介していました。
きやらはん
2016/10/06 22:46
こんばんは!

魔女っ子アニメから黒蜥蜴って、どういう流れなのか気になりますねww

ソフトが出ているようなら、TSUTAYAさんに探しに行ってみます!

ではまた!
用心棒
2016/10/08 00:11

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『黒蜥蜴』(1968)深作欣二監督、丸山明宏主演、三島由紀夫出演の幻の作品。 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
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