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zoom RSS 『大統領の陰謀』(1976)スリリングな一本。結末は誰でも知っているが、語り方でこれほど変わる!

<<   作成日時 : 2010/05/03 21:20   >>

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 ゴールデン・ウィークのこの3日間で、ウォーター・ゲート事件及びニクソン大統領絡みの映画を三本立て続けに見ました。一本は数年前に公開された『フロスト×ニクソン』、もう一本はオリバー・ストーン監督の『ニクソン』、そして最後が『大統領の陰謀』でした。

 『大統領の陰謀』は製作年が1976年と、だいぶんと昔の映画ではありますが、今でも十分にスリリングかつ重厚な作品であり、140分以上の上映時間があっという間に過ぎていく。オリバー・ストーンの映画は大統領側の視点で映画を進めましたが、『大統領の陰謀』は新聞記者の視点で物語を進めていく。

 こういう時事問題を扱った映画は公開当時はセンセーショナルに取り上げられるものの、当事国だけ盛り上がっていたり、せいぜい数年くらいの寿命しかないものが多い中、この映画は例外的に高いクオリティを保ち続けている作品であり、今見ても、輝きを放ち、少しも色褪せてはいない。

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 その要因となっているのは小刻みに場面を転換していくテンポの良い編集、多くの登場人物たちの人間関係を巧みにさばいた脚本、ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンの素晴らしい演技とアイデア、そして『ゴッド・ファーザー』も手掛けた、ゴードン・ウィリスの撮影の賜物であろう。

 良い映画には良い脚本と良い演技と良い演出が必要ですが、この映画にはそれらがすべて備わっています。ドキュメンタリー的な映画でもありますので、普通の劇映画とは違い、主人公二人はなかなか巨悪に辿り着けません。

 真相に近付こうとして、秘密を知る者に辿り着いても、すぐにその微かな糸は切れてしまう。それを延々と繰り返し、ようやく世間の目の届くところに出してきても、今度は立件できるかどうかという問題も発生し、司法の厚い壁が立ちふさがる。

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 ひたすらに証拠を探り、否定されても、また新たな証拠を見つけ出す。根気のいる作業であり、執念の取材で巨悪、つまり現職の大統領を何年もかけて、じわじわと追い込んでいく。

 シーンで興味深いのは再選委員会名簿を虱潰しに当たって、真相を究明していく下りでした。最初の何人かはホフマンとレッドフォードが二人で取材に赴くというシーンが描かれるのですが、そこから先は真っ暗なハイウェイが映し出され、車が目的地に向かっている映像に、アルファベット順に名前を言い続けていく二人の声がナレーションとしてボイス・オーバーしていく。

 わざわざニューヨークから取材に来ているのに、ほとんどが門前払いで追い返す、非協力的な共和党員の待つ全米の取材現場に通い続けている彼らの執念が上手く伝わってきます。これ以外にも取材に当たっての様々な困難が描かれています。

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 骨太の作品であり、権力の妄執の凄まじさが伝わってきます。何が凄いといって、劇中にニクソン大統領自身が妨害を指示するシーンはまったく出てきませんし、事件に大いに関係してくる主要な登場人物としてあれこれとシーンを作って、ニクソンのキャラクターを描いた方が簡単に観客に伝わるにもかかわらず、あくまでもニクソンを追い詰める記者たちサイドの視点からのみ物語を進めてくる。

 しかもこの方がより権力の暴走と恐ろしさが見えてくる。日本でこういう映画は作れるのだろうか。あれだけ世間を騒がせた、ロッキード事件もリクルート事件もまだきっちりと映画化されていない。これでいいのか?

 ちなみに原題は『All the Presdent's Men』であり、直訳すれば全ての大統領の部下とでもなるのでしょうが、これはマザー・グースのハンプティ・ダンプティの歌に出てくる“All the king's men”から取っているのでしょうから、「覆水盆に返らず。」とか「後の祭り」というニュアンスも含まれるのではないかと思います。

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 難点としてはこの事件の背景はもちろん、そもそもニクソンがどんな大統領であったかとか、その頃の外交問題とか、アメリカ自体が共和党政治に嫌気がさしていた1976年の大統領選の年に公開されたのも興味深いのだが、そういった背景をまったく知らないと見ていても、よく分からない可能性が高い。

 政治不信が高まっていたときの作品であったからこそ、あそこまで踏み込んだ内容の映画として製作できたのではないかなどを吟味する必要があるのではないだろうか。上手く行っている時の共和党政権下では内省的というか、反省する類の映画はまず製作されないので、その辺も考えながら見ると楽しいのかもしれない。

総合評価 78点


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フロスト×ニクソン
  おおかたのシネコンは映画の"鮮度"が落ちるごとに   おそらくそれが規定マニュアルなんでしょうね、   毎週「ハコ」(スクリーン)が小さくなります。^^ ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2010/05/07 22:08

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
私は「フロスト&ニクソン」から
本作に辿っていく記事をTBさせていただきました。
ほんとに骨太で語りの巧みな映画でしたね。
vivajiji
2010/05/07 22:20
 こんばんは!

>骨太で
 最近、あまり見なくなったタイプの映画ですが、奇しくも、同じニクソンを題材に採った『フロストXニクソン』に骨太映画的な表現が多かったのが嬉しかったのを覚えています。

 ではまた!
用心棒
2010/05/07 22:31
ロバート・レッドフォードが好きで、父親と観に行った記憶があります。当時、小学6年生でしたので、難しい映画だと感じました。
一国の大統領が、それも先進国において、このようなことが・・・とショッキングな時代でしたし、ロッキードやミグ戦闘機、丁度、新聞を読み始めた時期でもあります。
映画は、ここから、いよいよクライマックスというところで、ラストを迎えますが、その後は、もうご存知の通り、というリアリズム表現の一種だったのでしょうね。
それにしても、ワシントン・ポスト、この事件記事以来大新聞となっていったようですが、最近、ニューズ・ウィークの廃刊や各支店の統廃合など経営縮小を余儀なくされているとの海外ニュースを観て、淋しい気持ちになってきます。当時の反骨で立て直していって欲しいものです。
では、また。
トム(Tom5k)
2010/05/09 00:00
 こんばんは!

>ニューズ・ウィーク
廃刊はさびしいですね。学生時代、ニューズ・ウィークを買って読んでいたので、寂しさもひとしおです。

日本の雑誌にはない切り口の鋭さは新鮮でした。反骨精神とか、ハングリー精神というのはアメリカ的な若い考え方で、荒々しい部分もありましたが、魅力のひとつでした。仮想敵国ソ連が崩壊したときに、徐々にあの国も気づかないうちに、活力を失っていたのでしょうね。

わが国もどんどん悪い方へ向かい、中国はもちろん、韓国にもだいぶ離されてしまっている現状には暗澹たる思いでいっぱいです。

なんとか日米ともにふたたび大復活を遂げて行きたいものですね。ではまた!
用心棒
2010/05/09 20:05
謎の人物ディープ・スロートに会う。
汗をダラダラ流しながら会話するロバート・レッドフォード。
凄い場面でした。

僕は昔からダスティン・ホフマンと言う役者が大好きです。
当初はレッドフォードが主役を演じる予定だった「卒業」。
その二人がこの映画で共演。不思議な因縁を感じます。
蟷螂の斧
2016/06/21 02:10
こんばんは!

この映画に出てくるホフマンもレッドフォードもともに緊張感がある良い顔をしていますね。最近の映画にはない体臭と体温を感じる演技でした。

最近のレッドフォードって、だいぶんと老けちゃいましたが、なんだかトランプに似ているような気がしますww

明日はイギリス国民投票日ですね。残留ならホッと一息ですが、離脱ならば、今度はイギリスからスコットランドが離脱するかもしれませんし、目が離せませんね。

ではまた!

ではまた!
用心棒
2016/06/23 01:23
この映画には二人の上司役でジェイソン・ロバーズが出ています。アカデミー助演男優賞を受賞
「砂漠の流れ者」とは全く違った役柄。素晴らしいです

>なんだかトランプに似ているような気が

似てます
この映画のホフマンはキムタクに似てると言う意見もあります。

>イギリス国民投票日

EU離脱。日本にどんな影響があるやら・・・
蟷螂の斧
2016/06/26 08:35
 こんばんは!

昔のアメリカ映画にはアーネスト・ボーグナインとか今年の冬に亡くなったジョージ・ケネディみたいな渋くて存在感がある脇役俳優さんが大勢いて、主役よりも脇役で見る映画も多くありましたが、最近はこういった俳優さんを見かけなくなったことは寂しいですね。

>EU離脱
英語が使えることがメリットなので、日系企業のヨーロッパ戦略の本拠地になっていましたが、関税も復活するでしょうし、各国と条約を結び直さなければいけないので、かなりの期間不安定になるでしょうね。

でもイギリスにしろ、フランスにしろやり手ババアみたいなしたたかさがあるので、厳しくしようとしてもあの手この手で抜け道を見つけそうです。AmazonやGoogleがやる租税回避手段を国ぐるみで考えだして、モラルには問題があるが、これは違法ではないとか言いながら、グレーな道を突き進むかもしれません。アイルランドあたりにペーパーカンパニーを作り、そこの会社がイギリスにある本拠地を買収する形を作り、そこから輸出したりして法の目をくぐりそうww

プーチンや習近平以外は(トランプと北朝鮮の独裁者を忘れていました。)だれも暴落は望まないでしょうから、大騒ぎをした割には落ち着くところに落ち着くんじゃないでしょうかww

ではまた!
用心棒
2016/06/27 00:24

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『大統領の陰謀』(1976)スリリングな一本。結末は誰でも知っているが、語り方でこれほど変わる! 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
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