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zoom RSS 『しあわせのかおり』(2008)話題作にはなりませんでしたが、秀作でした。

<<   作成日時 : 2010/04/27 21:20   >>

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 中華料理の命は火力と速さだと聞きます。素材に素早く熱を入れ、新鮮な一皿をお客に出す。生きている海老を瞬時に老酒の入った鍋に蒸し焼きにして、すぐに食す。返還前の香港の料理屋さんで食べた海老は大変美味しかったのを今も覚えている。高温で弾けるような音とともに料理を食べる。

 海老に限らず、中華料理の厨房は活き活きとした油の弾ける音、シャキシャキと野菜を刻む音、包丁のリズミカルな音、そういった美味しい音がこの映画にはあります。お話はゆったりとして進んでいくが、料理は素早く提供される。乞食鶏を見るのは久しぶりでしたが、美味しそうでした。

 中谷美紀という女優が出演した作品で、ぼくが実際に見たのは『リング』『らせん』『ケイゾク』『7月24日通りのクリスマス』、そして『嫌われまつ子の一生』くらいであり、これらの作品から受けた印象としては線の細い感じで、生活感のない人だなあ、という程度でした。

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 それが『しあわせのかおり』を見て、初めて年相応の彼女を見たように感じました。マンガ的なキャラクターではなく、一人の人間としての魅力というか体温と呼吸を感じました。『ゼロの焦点』のような、話題作や派手な役柄を演じる彼女も良いのでしょうが、一般映画ファンからすると、こういった作品での飾らない演技の方がしっくりときます。

 地味な作品であるため、正直あまり話題にもなりませんでしたが、個人的には久しぶりに良いものを見せてもらった気がしております。藤竜也の抑えた演技はむしろガツガツ出てくるよりも効果的で、しかも主役である中谷の存在をさらに輝かせている。二人とも生き生きとしているように見えてきました。

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 特筆すべきはリズムの良さで、編集も良く、年月を重ねて、少しずつ、ゆったりとお互いを理解していく様子がシーンの繋がりで表現されているようでした。最近の映画にはない上品なリズムを感じさせてくれる。本来の人間の生理に合っているのでしょう。

 季節の移り変わりを表すのもさり気なく、牡蠣などの料理の素材、着る物、食べている野菜、虫の声などで伝えられる。観客に与えられる情報量は必要最小限であり、感情を押し殺す描写が多く、台詞もすべてを語らず、観客の感情が動くままに任せていく。

 彼女たちの人生の行く末についても、単純なテレビのホーム・ドラマのように無理やり、みんなが万々歳のハッピーエンドにはせず、希望の光をほのめかす程度です。決めつけて欲しい人には捉えどころが少ないというかもしれませんが、そもそも映画はすべてを語る必要性がない。

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 それでも十分にこの映画に登場してくる人物たちは温かく優しい。30代後半以上でないと良さが分からないのかもしれませんが、こういった映画はこれから必要になってくるのではないだろうか。しなやかで、折れそうではあります。奇を衒ったところもなく、ドラマチックな山も無い。こういう作品はじつは観る人を選ぶのかもしれない。

 料理を作るシーンはどれも瑞々しく、躍動感に溢れ、素材も気持ちよさそうに料理されているように見えました。格式張った料理ではなく、普段に食せられるお晩菜の魅力を伝えてくれる。実力のある京都の小料理屋が出すお弁当のようななんともいえない旨そうな料理の数々でした。

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 料亭のように美味しい料理ではなく、食堂の旨い料理を目で堪能したい。最後に出てくる玉子とトマトの炒めものを食べてみたい。隠し味の老酒はどういう旨味を出しているのだろうか。また二十三年物の老酒の芳醇な香りはいかばかりであろうか。よだれが何度も出そうになりました。

 最後に『ホーム・スイート・ホーム』を唐突に歌いだすのは違和感がありますが、手作りの宴会というのはこういったものなのかもしれません。すべての映画がリズム良く、チャキチャキ進む必要はなく、のんびりと歩んでいく映画があっても良いのです。

総合評価 82点


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