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zoom RSS 『爆裂都市』(1982)土曜の夜だぜえ〜!!!騒ごうぜ〜!!!ああ…なつかしい!!

<<   作成日時 : 2009/10/06 00:43   >>

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 三十代も後半になると、積年の不摂生とストレスへの対応のために、人間は精神とカラダが随分と丸くなってくるが、ふとしたきっかけで、昔の尖った感覚が蘇ってくることがある。そのきっかけは昔よく使っていた道具だったり、聴いていた音楽だったりする。

 ひょんなことから、来年に大学を卒業する知り合いの女の子と音楽談義をしていたときに、日本の昔のパンクやニュー・ウェイヴ音楽(80年代)を聴いてみたいのでCD−Rに焼いて欲しいと頼まれました。その日の夜になって、自宅の押し入れの中から、昔のCDやレコードを引っ張り出してきました。

 ザ・スターリン、フリクション、突然段ボール、プラスチックス、シオン、INU、ばちかぶり、人生(電気グルーヴの前身)、スタークラブ、亜無亜危異、ラフィン・ノーズ、ウイラード、有頂天、じゃがたらやリザードなど、二十年ぶりのものも含めて、久しぶりに聴いた七十年代から八十年代にかけての日本のパンクやニュー・ウェイヴは中高生の頃の思い出や感情を呼び起こさせてくれた。

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 ザ・スターリンの『ロマンチスト』『天プラ』『365』『電動コケシ』『GO!GO!スターリン』『ソーセージの目玉』などを聴いたときに感じた他のバンドとの格の違いや世界観の格差に驚かされました。過激さと知性が交互に顔を出す不思議な魅力を持っていました。

 そして亜無亜危異。例えばこのバンドには肉体的な不良の怖さがぷんぷんと匂っていてカッコよく、家で聴くときはステレオの低音を大きくして聴いていたものでした。普段はあまり話さない怖いグループのクラスメートに頼んで、ファースト・アルバム『アナーキー』を録音してもらったカセットテープを聴いたときは歌詞の過激さに驚いたものでした。しかし共感できる歌詞は見事で、自分たちが言いたいことをメジャーなのに言っている心意気はカッコ良かったのを覚えています。またあの国鉄の作業服(特攻服ではない)というスタイルも独特で印象的でした。

 ファーストに収録されている『東京・イズ・バーニング』も『ホワイト・ライオット』もクラッシュのコピーだったのは少々ガッカリでしたが、歌詞は日本語でしたし、むしろしっくりと来ました。のちにファースト・アルバムの14曲のうち、実に6曲がカバーだったことを知ってからは多少テンションが下がりましたが、彼らが魅力的だったことには変わりはありません。

 ぼくはLPレコードをのちに購入していて、そろそろCDに買い換えようと思い、レコード屋(CD屋?)さんに行って、カタログで調べていたら、なんと『東京・イズ・バーニング』が封印されていたのでびっくりしました。皇室批判をしている内容のためか、レコード会社が二の足を踏んだ模様です。

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 ファースト・アルバムにこのナンバーが入っているのといないのとでは受けるインパクトがまるで違うので、かなり残念な選択でした。さまざまな意見を好き勝手に言って良いのが本来の民主主義の基本であるはずなのですが、この国にはあまりにも規制が多すぎて、どんどん自由な芸術の爆発が見られなくなってきている。一見すると自由に見える人でも実際には雁字搦めにコントロールされているようです。

 それはともかく、遠藤ミチロウ(ザ・スターリン)はずっと彼らに批判的だったと後に聞きました。この映画『爆裂都市』でもバンド起用をめぐり、ザ・スターリンと亜無亜危異でいざこざがあったようですが(泉谷しげるの仲介で和解。のちに彼らのヒストリーDVDである『アナーキー』にミチロウがインタビューを受けているのが興味深い。)、デビューの仕方も含めて、ザ・スターリンを支持するファンが多かった印象があります。

 そのザ・スターリンが出演した映画がこの『爆裂都市』でした。石井聰亙が監督を務めた作品で、上映当時のキャッチコピーは「これは暴動の映画ではない。映画の暴動だ。」でした。80年代中盤、黎明期のTSUTAYAでこのタイトルを見つけたときは喜びと共に即借りしました。

 内容的には多くのバンドが出演していたこともあり個人的には思う存分楽しめました。だって当時はインターネットもなく、ビデオも黎明期だったので、写真だけでしか見たことのないバンドがほとんどだったのです。そんな彼らが動いているだけでも十分だったのです。

 混沌とした未来の都市での労働者と暴力団(土建屋)、そして武装警察が入り乱れるカオスを描こうとしているのは理解できるのですが、無駄に思えるシーンも多く、バンドの演奏シーン以外は早送りしたくなる衝動もあります。

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 主な出演者はザ・スターリン(劇中ではマッド・スターリン)、陣内孝則がいたロッカーズと大江慎也のいたルースターズを合体させたバトル・ロッカーズ、INUの町田町蔵(作家の町田康)、泉谷しげる、そして昭和のプロレスラー上田馬之助などです。みんなが意外なくらいソツなく素直に演じている中での馬之助のセリフ棒読みには笑うしかありませんでした。

 役名も凄まじく、町田のはなんとキチガイ弟!今じゃとても無理でしょう。製作は1982年です。当時はぼくは中学生でしたので、金がないので、というか、みんなお金を持っていなかったので、一枚のアルバムの価値は今より何倍もありました。ネットで気軽に落として、気に入らなかったらCDに焼かなかったら良いだけなどという贅沢は許されてはいませんでした。結果としては同じアルバムを何度も聴き込むという習慣を身につけました。

 ぼくは中学生当時はビートルズ、ローリング・ストーンズ、YMO、ポリス、RCサクセションなどをよく聴き込んでいました。そして中学後期から高校生のときにはそこへセックス・ピストルズ、キング・クリムゾン、亜無亜危異、そして日本のインディーズのパンク・バンドやニュー・ウェイヴ系のラインナップが加わってきました。

 田口トモロヲがヴォーカルを務めていた"ばちかぶり”、遠藤ミチロウの過激パフォーマンスが有名だった“ザ・スターリン”、インディーズ御三家と呼ばれた有頂天、ラフィン・ノーズ、ウィラード。爆音系のTHE LOODSやあぶらだこを初めて聴いた時の衝撃は半端ではありませんでした。

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 その他にもファンク系の“じゃがたら”、もっとも素晴らしいバンドであった“フリクション”、町田町蔵(町田康)がシャウトしていた“INU”、ホンワカする“チャクラ”の『福の種』などのLPやカセットテープを何度も聴いたものでした。忘れてはならないバンドは他にもあり、紅蜥蜴から進化したLIZARDのパンクとテクノが混在する音作りは独特の魅力がありました。

 元気な楽曲が多かったのですが、なかにはPHEWや突然段ボールらPASSレコード所属(フリクションも!)のアーチストたちのずらした感じの音が心地よく、ずいぶん聴きました。PHEWの『終曲』の孤高の世界感や突然段ボールの『変なパーマネント』や『ホワイトマン』なども好きなナンバーでしたが、残念ながらクラスメートの誰も分かりませんでした。よく知ってくれているひとでもザ・スターリンが限界でした。

 ぼくが特に好みだったのは“ばちかぶり”“じゃがたら”“フリクション”“ザ・スターリン”とラフィン・ノーズでした。田口トモロヲが絶叫する『オンリー・ユー』『未青年』は今でも再発されたCDを聴いたり、ラフィン・ノーズの『ゲット・ザ・グローリー』『ブロークン・ジェネレーション』での疾風怒濤のサウンドは今でも力強く身体に響いてきます。

 また30代後半で急逝した江戸アケミが率いていた“じゃがたら”のセンスの良さと毒々しさを継承する者は死後20年近く経った今となっても出現していないようです。ファンクのテクニカルな部分と歌詞に出てくる反骨は素晴らしいのですが、『タンゴ』『もうがまんできない』などの名曲とともにじゃがたらは歴史に埋もれていくのでしょうか。

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 インディーズはとにかく音が悪く、聞き取るのにも一苦労するくせに、レコードがバカみたいに高く、とても中高生が買えるような値段にはなっていませんでした。そのためお金持ちの友達に貸してもらったり、不良のクラスメートに頼んで貸してもらったりと音源確保には苦労しました。

 もっともせっかくの貴重な音源もほとんどがカセットからカセットへのダビング、音質最悪の自主制作盤からのコピーとなっていたので、本当にもう情けない限りの音でひたすら聴いていました。ただそこで思ったのは確かに正規契約できるメジャー・アーチストたちのレコードはとても音が綺麗で、ジャケットなどもデザインがしっかりとしているのですが、聴きたい音楽ではなかったということでした。

 音が悪くてバカ高い代表だったのが、ザ・スターリンの幻のファースト・アルバム『TRASH』をカセット・テープにダビングしたものでした。もともと2000枚しか製作されなかったせいもあり、中古レコード屋では数万円単位で売っていました。おそらくそういったお店の人たちがこそっとテープに録音して、それをもとにコピーを繰り返し、劣化しまくりながらもニーズがあるのでさらにコピーを重ねていった結果、最後は何を歌っているのかすら解らない代物が何千円とかで取引されていました。

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 その後、この作品は権利関係問題もあり、オフィシャル化されてはいませんが、ブートのLPやブートCDが出回るようになっています。オリジナルのLPレコードはヤフオクとかで15万円弱になっています。またブートCDもプレス盤が15000円くらいで取引されているようです。ぼくは知り合いからこのアルバム(LP)を直にCDーRに録音してもらったのを所有しておりますので、針音パチパチではありますが、比較的良好な音で聴いています。

 80年代は基本的に彼らの音はカセット・テープか、バカ高いLPだったのが、90年代に入ってから、次々と徳間ジャパンなどから安価でCD化されたときは本当に狂喜し、“じゃがたら”やら“ばちかぶり”を一気に大人買いして、自宅のCD棚がパンパンに膨れ上がり、追加でCDラックを買い足したりしたのも良い思い出となっております。

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 ザ・スターリンの『フィッシュ・イン』などは高校生だった80年代後半に、音が悪い中古のLPを地元の中古レコード屋さんで7000円程度で購入しました。90年代にCDが発売されたときに3000円弱で手に入れたときに嬉しい反面、なにかめちゃくちゃ損したような気分になりました。ラフィン・ノーズのインディーズ時代のLPやシオンの『新宿の片隅で』が同じようにCD収録されたときにも同じ思いをしましたが、多くの人々にぼくらが大好きだった音楽を聴いてもらうには仕方ないと諦めました。

 まあ、ぼくらが聴いていたときは最悪の音質でしたが、生きている音であることのほうが良い音であるよりは優先するのではないだろうか。魂がこもっているというか、ガッツのある音のほうが綺麗な音よりも印象に残っているのです。これはロックに限ったことではなく、クラシックでもそうで、90年代に録音されたワーグナーの『ワルキューレ』よりも、フルトヴェングラーが第二次大戦前後に録音した『ワルキューレ』のほうが音に迫力があるのです。これも良い例かもしれません。

 石井聰亙監督の作品というとこの当時であれば『狂い咲きサンダーロード』があります。ロッカーズをフューチャーしたこの映画は評判の高い作品でした。そのためかロック系バンドが多数出演するこの映画でも手腕が買われて起用されたのかもしれません。この映画の冒頭で自動車を運転しているドライヴァーがふとルートを示す交通標識に目をやったときに右に曲がると“サンダーロード”へと向かうと表示されたときにはクスクスと笑ってしまいました。

 ぼくはこのドラマシーンには正直言って不満があります。無駄に長い部分が多々あり、もっと短くして90分くらいの作品に編集した方が疾走感のようなものが出せたかもしれないからです。この映画は何か大きなエネルギーを持っている。それが音楽が映像に与える共振作用のようなものです。ザ・スターリン、ロッカーズ、ルースターズ、町田町蔵らのパンク・シーンの第一人者たちが一堂に会し、各々の個性を曝け出す。

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 バトル・ロッカーズ(ロッカーズとルースターズの混成バンド)とマッド・スターリン(普通にザ・スターリンなのですが、なにか権利問題でもあったのでしょうか?ギターを弾いているのがTAMなのが嬉しい!)のバンド・バトルの様子が最大の見せ場で、このシーンに関してはこの当時のバンドのエネルギーをつかまえた素晴らしいシーンです。

 ザ・スターリンはメンバーの出入りが激しいバンドで、このときのギタリストはタムでしたが、彼はバンド脱退後に自主レーベルを作ったり、ソロ活動をしていました。しかしながら1985年のライヴをさかいに行方不明となり、以降まったく名前を聞くことが無い。たしか『ゴジラ』を意識した『オキシジェン・デストロイヤー』を演奏したりしていて、そのギターのインストゥルメンタル・ナンバーなどはとても出来の良いものだっただけに惜しい気がします。

 またべーシストの杉山晋太郎も脱退後に山小屋経営などをしていましたが、1986年に自宅で足を滑らせて落下し、帰らぬ人となっています。ザ・スターリンというバンドはこの頃のバンドたちのアイコンでありますが、寂しい後日談も多く、昔彼らを聴いていた者からすると、寂しさが感情を支配します。

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 戸井十月と町田町蔵(役柄はキチガイ兄&弟!今じゃ絶対無理!)やコント赤信号が出ていたレース・シーン、上田馬之助や泉谷しげるのくだりなど印象に強く残っているシーンはいくつかあるのですが、どうしても好きにはなれない何かがこの作品のドラマ・シーンにはある。

 前回の『ROCKERS』と同じく、映画としての価値だけではない当時のバンドの熱気の片鱗を伝える貴重な資料でもある作品で、彼らの音楽が好きだった自分にとってはメジャーな作品として見ることが出来る数少ない映像でもあります。主題歌となったバトル・ロッカーズの名曲『第八病棟』はオープニング、挿入曲、そしてエンディングにも流れています。それに呼応するマッド・スターリンも『ワルシャワの幻想(町田の『メシ喰うな』のカヴァー)』など多くの曲を演奏しています。

 マッド・スターリンは実際の彼らのステージと同じように豚の内臓や頭部を観客に投げつけ、小便を引っかける。ミチロウは神戸では演奏できない条例を作られるという伝説を持ち、全裸になったり、観客にフェラチオをさせたりとやりたい放題をしていましたが、歌詞などをよく見ると政治的だったり、哲学的だったりして、パブリック・イメージとはだいぶ違います。

 なんだかんだと言いながら、この『爆裂都市』は今でもたまに見たくなることがあります。もっとも映画よりもサントラ盤CDのほうが好きなんですけどね。

総合評価 68点


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは、にじばぶです。
『爆裂都市』、ほとんど観た石井聰亙監督作品の中でも、数少ない未見作品です。
どうも音楽映画が苦手なので、敬遠してきましたが、用心棒さんが紹介されたのを機会に鑑賞してみようかなという気になってきました。
どうせなら石井聰亙作品は全て観たいですしね。

ところで、微妙に差はありますが、用心棒さんと私、結構世代近いようですね(笑)。
にじばぶ
2009/10/09 01:15
 にじばぶさん、こんばんは!
 これや『ROCKERS』に出ているバンドの人たちって、TVでの露出はほとんどありませんでしたし、ビデオとかのソフトもあまり発達していない時期でしたので、動くだけでも嬉しかったですよ。

 スターリンとバトル・ロッカーズの絡みなんかワクワクしながら見ていました。今もスターリンの幻のファースト・アルバム『TRASH』を聴きながら書いています!写真誌にも出た、法政大学での過激ライヴも収録されているアルバムで、過激さとエネルギーは最大に詰まっています。

>石井聰亙監督作品
『指圧王者』はご存知ですか?あの指圧で有名な浪越さんが主演している短編です。これが見たくてツタヤに行った時に爆裂と一緒に借りたんですよ。

いざ見ていたら、インディーズのロックに久しぶりに包み込まれて目覚めまして、スターリンやフリクションを聴きまくっています(笑)

>世代近い
この映画や石井監督に敏感に反応されることがほぼ同世代であることを証明してくれています(笑い)
この映画を見たあとにぼくは『アナーキー』『狂い咲きサンダーロード』を見ました。

ではまた!
用心棒
2009/10/09 23:45

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