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zoom RSS 『ROCKERS』(1979)監督の死後、ようやく見つけ出された、インディーズを知る、幻の一本。

<<   作成日時 : 2009/10/02 00:53   >>

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 音楽ファン、ここではロックを中心に話します。急にロックと言われても、もうロックは音楽のメインストリームではありません。そして自らをロック・ファンと思っていても、各々の愛する対象はさまざまで、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、ニルヴァーナ、オアシスのように英米の超メジャー、大御所的なバンドへの愛情を示す者もいれば、RCサクセション、YMO、サザン・オール・スターズ、ハウンド・ドッグ、ミスター・チルドレン、B’zのような日本のバンドを愛する者もいる。

 彼らの作り出す音だけが音楽ではないのは当たり前ですが、どちらかというとマイナーなバンド、とりわけ日本のパンク系やニュー・ウェイヴ系のユニットなどの名前を出しても、誰も分からないという状況は1980年代半ばまでは当たり前でした。というよりはインディーズ系のパンク・バンドを聴いているのは不良で、ニューウェイヴ系を聴いているのは変わり者という感じでした。ぼくはその変わり者系も不良系も両方大好きなのでした。

 この映画に登場するバンドはLIZARD(紅蜥蜴から改名。)、自殺、PAIN、8 1/2、MR.KITE(女性ボーカルの異色パンクバンド!)、MIRRORS、SS(超高速の演奏で圧倒されますが、この映画ではほんの少ししか出てこない。そのかわりエンディング・テーマに『コカコーラ』を使用。)、SPEED(間違っても沖縄出身のアイドルユニットではない!)、S−KEN、フリクション、そして特別ゲストとして最後に出てくるイギリスのパンク・バンドの最高峰のひとつ、ストラングラースです。

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 キーボードのフレーズが強く印象に残る『ノー・モア・ヒーローズ』が最も有名なこのイギリスのパンク・バンドがなぜこの映画に登場するに至ったのかは不明ではありますが(多分ストラングラーズのプロデューサーが呼んだから?)、パンクの資料としても価値のある作品となりました。

 個々のバンドを見ていきますと、まずは自殺(バンド名です!)。彼らが残した公式音源は数曲しかなく、『ゼロ』などは凄くよく出来たナンバーです。また8 1/2の残した曲は戸川純などに引き継がれていますが、本人たちは歴史の底に沈んでいきました。ファースト・アルバム『軋轢』が日本ロックの名盤として今でも語り継がれている、先鋭的なフリクションは今でも活動しているようなので、機会があれば観たいですね。

 以下はこの映画に出演しているバンドたちの名前と曲目です。

1.デストロイER /LIZARD 2.CITY BOY /8 1/2 3.MR.TWIST /SS 4.CRAZY OR LAZY /MR.KITE 5.リズムの時代 /THE PAIN 6.ぶた /自殺 7.CRAZY DREAM /FRICTION 8.BOYS I LOVE YOU /SPEED 9.PASSENGER /MIRRORS 10.環七 /MIRRORS 11.ぶちやぶれ /S-KEN 12.HANGING AROUND /THE STRANGLERS 13.DEATH AND NIGHT AND BLOOD (YUKIO) /THE STRANGLERS 14.マシンガン・キッド /LIZARD 15.コカ・コーラ /SS 以上となります。

 LPレコード『東京ロッカーズ』では全10曲となり、SSやストラングラーズは割愛されてしまいましたが、アルバム自体も優れたロックのライヴ盤ですので、機会があれば、聴いてみましょう。CDは現在廃盤なので、ヤフオクか中古CD屋さんで探してみてください。

 ただこの映画に収録されている楽曲のすべてがロッカーズたちの代表曲ではないことも書いておきます。1曲目と14曲目を演奏しているLIZARDやFRICTIONには素晴らしいナンバーがたくさんあり、当時でも最も人気が高かったのはこの2バンドでした。LIZARDには他に『ROBOT LOVE』『サカナ』『王国』があります。

  8 1/2は解散後に出したデモ音源がLPとなったものとその他に活動していたときのライブ音源があり、ここに収録されている『CITY BOY』だけではなく、『メモアール』『戒厳令』『キネマの夜』『少年たち』『踊れない』『ベッド・ルーム・クイーン』など佳曲が多い。当時のような勢いはないが、完成度が高く、戸川純もカバーしていました。とりわけこのバンドでの聴き所はキーボード奏者として参加していた上野耕路の奔放でカッコいいプレイです。現在、彼らのアルバムは異常なプレミアが付き、2万円弱になっていますので、ぜひとも再発して異常な売り手市場を改善して欲しい。

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 SSは京都のバンドで、「1、2、3、4!」のかけ声とともに異常な速さで歌いだし、だいたい一曲が一分少々で終わる。『電撃バップ』『恋のスナイパー』『恋のテレフォンダイヤル6700』『コカコーラ』『MR.TWIST』などを全力で繰り出すライブの迫力は凄まじく、彼らの唯一のアルバム『ORIGINAL SS』を聴かないで人生を終えるのはもったいない。まあ、テクニック的にはどうかなあとも思うし、音質は悪いのですが、聴く価値はあります。

 SSはすぐに解散してしまいますが、メンバーだった篠田はコンチネンタル・キッズを結成し、京都で足場を固めていきます。このバンドにはベースでラン子が入りますが、彼女は自身のバンド「スペルマ」を率いていきます。スペルマでのステージは過激で、彼女は上半身裸というカッコで演奏していたために、写真週刊誌にも写真が掲載されたこともありました。

 女性ボーカル、ジーンを前面に押し出したミスター・カイトもいかにもアングラ的な容貌と曲で魅力的なバンドでしたが派手さが全くなく、徐々に埋没していき、解散しました。『共犯者』とそのカップリング曲の『EXIT B9』しかスタジオ録音が残っていないのは残念です。

 インディーズ系のバンドに多いことなのですが、メジャーと違い、契約に縛られているわけではないので、音楽の方向性が違えば、無理に一緒にやろうとはせずに、自分の音楽性が合うバンドに気の向くままに流れていくのが一般的だったようです。ここに収録されているバンドでもリザード、フリクション、S−KEN、SPEED以外はこの映画でのライブのあと、一年も持たずに解散しています。儚いから美しいのがインディーズの宿命でもあります。

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 ぼくはロッカーズの中ではフリクションが好きなのですが、一瞬で燃え尽きたミラーズやミスター・カイトにも愛着があります。なかでもミラーズの『衝撃X』はもっともパワフルなナンバーで、この一曲だけを聴くためにロッカーズのアルバムを買ったようなものです。ヒゴヒロシはもともとフリクションの前身である「3/3」(さんぶんのさん)に所属していたメンバーで、ミラーズ解散後もずっとシーンに留まり、チャンス・オペレーションなどにも参加している。

 わずか数十枚しかプレスされなかったと言われる3/3のアルバムもCD時代に見事にCD化されていますので、フリクションに興味のある方はぜひとも買い揃えたい一枚でしょう。恒松正敏がフリクションに入る前に演奏していた『いいかげん』がフリクションの『オートマチック・フラ』に酷似しているのは興味深い。

 12〜13に収録されているイギリスのパンク・バンド、ザ・ストラングラーズの音源は昔、VHSビデオで販売されていたときにはカットされてしまっていたそうなので、数十年の時を経て、ようやく一本の作品として繋がることになりました。権利関係とかがようやくクリアされたのでしょう。もっともこの作品のフィルムはずっと行方不明になっていたものが、監督である津島秀明の死後になって、ようやく発見されて、今回の発売に至ったという経緯もありますので、余計に再び見ることが出来て、感慨深い。

 個人的には『ノー・モア・ヒーローズ』が一番好きでしたので、出来ればこのナンバーもやって欲しかったのですが、入っていたら、さらに版権許可が出なかったのかもしれないと思うと痛し痒しではあります。

 こうしてセット・リストを見ていても、おそらくほとんどの方は初めて聞くような名前のバンドばかりだと思います。ぼくはLIZARD(前身は紅蜥蜴)、FRICTION、ストラングラーズは聴きましたし、自殺や8 1/2はLP『東京ニューウェイヴ』で聴いたことはありましたが、ヴィジュアルとして見るのは初めての体験でした。

 映像演出も凝っていて、モノクロ、染色、激しいカット割り、寸劇のインサート、各バンド・メンバーへのインタビューなど盛りだくさんで、ファンにはとても興味深い映像が続いていく。LIZARDのモモヨなどの当時の生の声を聞くことができるのは貴重でした。

 世間の偏見も多分にあり、インディーズ・ブームやバンド・ブームが来る90年代初頭まで、こういったジャンルのバンドを愛する者は肩身の狭い思いをしてきました。80年代中盤でも「スターリンって知ってる?」といっても、即座に「誰やそれ?」と返され、「FRICTIONって、凄くシャープな音を出すよ!」といっても、「知らないなあ…」と返される。

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 FRICTIONは特に優れたバンドで、音楽性も高く、音のシャープさが気持ち良いので、是非機会があれば、大音量で聴いてみてほしい。ここに収録されている『CRAZY DREAM』だけではなく、『T CAN TELL』『PISTOL』なども聴き応えのあるナンバーです。インディーズといって、偏見を持つのではなく、まずは聴いてみてください。

 癖があると感じられるのでしょうが、何故かまた聴きたくなること請け合いです。最近は音楽をipodで聴くのが一般的になっているのは解りますが、ロックやパンクは大音量で聴いてこそ初めて解る部分もありますので、CDを買って、または借りて聴いてみましょう。同時にラウド・ロックの元祖とも言えるTHE LOODSやNO WAVE系の突然段ボールなどの新しさに触れて欲しい。まったく古くなっていないのを理解できるでしょう。

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 フリクション、THE LOODS、突然段ボールの3バンドは十分に今でも若いファンを魅了するだけの斬新さとパッションを兼ね備えています。産業ロックや歌謡曲に馴らされた人々には上記のバンドや80年代初頭のスターリン、突然段ボール、じゃがたら、プラスティックスは無縁の存在でした。

 この映画には出演してはいませんが、もし聴く機会があれば必ず満足してもらえるだろうというボーカリストがいます。彼女の名前はPHEW、デビューは70年代後半の1978年でパンク・バンドのアーント・サリーを結成し、関西で活躍していました。

 アーント・サリーはスタジオ録音盤のLPを一枚残し解散しましたが、その後PHEWは坂本龍一とともにPASSレコードからシングルを出したり、ドイツでソロ・アルバムを出したりと独自の活動を続け、今も現役で音楽を続けています。数年前に突如、大昔のアーント・サリーのライブ音源がCD化され、彼女の生の魅力に浸りました。

 スタジオ盤とはまるで違う生のPHEWのパフォーマンスはより攻撃的で、まさにパンク・ロッカーに相応しい。カセットからの録音で、しかもモノラルですが、パンクらしさはスタジオ盤の数倍出ています。ミュージシャンの音楽活動というよりも自分の衝動を体現する手段がパンクだったはずなので、その意味では彼女はパンクの女王、しかも孤高の女王と呼ぶに相応しい。

 透明で澄んだ声で歌っていたLPでの彼女も魅力的でしたが、このライブ盤での迫力ある攻撃的な声は今でも十分に聴く者をゾクゾクさせる何かを持っている。

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 音が悪いといって、アマゾンの批評などでほざいている輩もいるようですが、本当に音が悪いという状態を知らない者の戯言です。カセットのダビングを限界まで重ねた音源しかなかった世代からすると、レコード特有のパチパチするイグニション・ノイズやカセット独特のこもった音や「シーーー」というカセットのノイズを聞き続けた者には十分に鑑賞に耐えるCDでした。アルバムがまた出るように聞いていますので、また買いに行きます。

 東京ロッカーズが活動していた関東とは違い、関西はバンドへの理解が乏しく、かなり難しい状況での活動だったでしょうが、INU(町田町蔵のバンドで大阪中心。)、ウルトラ・ビデやSS(京都)、そしてアーント・サリー(神戸)が神戸で地道に活動していました。実際に僕らが中学や高校生になる頃にはすべてのバンドは解散していましたので観ることが出来なかったのは惜しい限りです。

 最後にもうひとつ書いておかなければならないインディーズの動きにハードコア・パンクがあります。代表的なバンドにはGISM、GAUZE、THE EXCUTE、G−ZET、あぶらだこなどがいました。メジャーに出る前のラフィン・ノーズもこの中に入るのかもしれません。なかでもGISMは硬派のバンドで、その爆音はデス・メタルの元祖でもあり、わが国だけではなく、欧米にもファンが多く、英語サイトでGISMを紹介しているものもちらほら存在します。

 彼らの残したスタジオ・アルバム音源は三枚しかなく、残りは『グレート・パンク・ヒッツ』『アウトサイダー』などのコンピレーション盤に収録されています。これらの編集盤から彼らの演奏部分をまとめたり、ライブの模様を収めたブートが高値で出回っている現状は異常とも思えますが、彼らの三枚のオリジナル盤の迫力を聴けば、一枚が1万円を越えても、決して高いとは感じない。

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 『エンドレス・ブロックエイド』『スティル・アライブ』『G.I.S.M.』『デス・エクスプラネーション』などのド迫力ナンバーに触れて欲しい。2002年にギタリストのランディ内田が亡くなってしまった関係で、永久凍結という形で事実上の解散となりました。彼らのサウンドが二度と聴けなくなるのは非常に残念ではありますが、ランディなしではGISMのサウンドにはならないので仕方がないのでしょう。

GAUZEもまたハードコア・パンクの象徴のようなバンドで、しかも凄いのがまだ現役で活躍しているという事実です。彼らもGISMと同じく寡作でファンをやきもきさせるバンドです。『消毒液』『パワー』『酔狂』『チルドレン・ファック・オフ』『中性子爆弾』などは何度聴いても圧倒されます。

TAMがザ・スターリン脱退後に組んだバンドがG−ZETでした。ギターで“歌う”田村氏の姿はとてもカッコ良かったのですが、主宰していたADKレコードの資金繰りの躓きからか、1985年のライブを境に行方不明になり、いまだに誰も彼の消息を知らない。経営的にはかなり厳しかったようなADKでしたが、彼が選りすぐったバンドたちには伝説化した奇形児や今でも現役で活躍しているGAUZEやあぶらだこがいるように、彼のバンドを見る眼は鋭かったようです。僕は彼のバンドであるG−ZETが大好きで、『オキシジェン・デストロイヤー』『ゴジラ破壊のテーマ』などは今でもレコードで聴いています。

 彼らの後に登場する80年代中盤の有頂天、ラフィン・ノーズ、ウィラード、THE LOODS、ばちかぶり、筋肉少女帯などのインディーズ・シーンの元気なバンドや遠藤賢司、頭脳警察ら70年代生き残りの反骨あるひとたち、そして新たに加わったSIONらのユニークなシンガーたちが好き勝手に演奏していた音楽も産業ロック・ファンの心に響かなかったようでした。

 音楽や映像への感受性の鈍化が老いだとすると、脳の活性化のためにも新しい音楽、新しい映画に接するようにしていきたい。刺激を受け入れる感性をずっと磨きたいものです。

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 しかし上記のアーチストたちの音の悪い自主制作盤やそこから録音したカセットテープを聴いていた、バンドに憧れていた中学生らの年齢層は確実に自分本位のやりたい音楽、つまり産業ロック音楽ではない音楽に接していたためか、80年代後期にはブルー・ハーツやBOOWYの個性的な音や歌詞が大きな支持を得るようになりました。

 そして90年代初頭にはイカ天バンド・ブームが起こり、インディーズ・シーンが本来とは違った形で利用されるようになり、産業に絡め取られていきました。メジャーに利用されるようになっていったときに、純粋な音楽は死に絶えたのかもしれません。インディーズを売りにするという輩が登場するに至っては本末転倒もいいところです。

 今回は日本パンク&ニューウェイヴ前史でしたが、次回は80年代初頭から80年代後半までを『爆裂都市』で書いていこうと思っています。

総合評価 70点



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