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zoom RSS 『20世紀少年<最終章> ぼくらの旗』(2009)ついに終わった三部作。酷評が多いのですが。

<<   作成日時 : 2009/09/11 22:44   >>

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 去年から順次公開されていた、浦沢直樹原作で、堤幸彦監督の『20世紀少年』がとうとうファイナルを迎えました。原作のラストはちょっとモヤモヤさせる閉じ方でしたので、映画の終わり方が原作と違うと聞いたときには期待と不安が綯い交ぜになっていました。

 三本とも劇場で観ましたが、こういう作品はすべてを見終わってから、ああだこうだ言った方が良いかと思い、今までは記事にしませんでした。ちまたでは、というか原作ファンからすれば、納得できないのでしょうか、映画と原作は別物であって、あくまでも映画を撮るための出汁に過ぎないというのをいい加減に分かるべきでしょう。

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 両者で少しずつ出てくる差異を楽しむことが出来るのは原作を読んだ人の特権であるのに、それが全く分かっておらず、ただただ非難するだけの者が多すぎる。なぜそのように小さいことにこだわるのであろうか。完全にコピーするのであれば、アニメで事足りるではないか。

 それを何故実写で撮るのか、そこに楽しみを見出すべきであろう。たしかに特撮はチャチな部分も多いが、けっして不真面目には作っていないのが解らないのだろうか。『謎の円盤 地球を襲撃す』に出てくるハリーハウゼンの作った模型のような円盤が東京上空を飛びまわるだけでも十分に楽しめる。

 また原作を読んでいない人にとってはともだちの正体が誰であるのかを映画で知るのかが、かなり重要な劇場観覧へのモチベーションになったことでしょう。これは間違いありません。まあ、原作を読んだ人にとってはたいした問題ではなく、むしろこの世界観をどう表現するのかがもっと重要だったのでしょう。

 映画三部作でこの壮大な世界観がしっかりと描き切れたかというと疑問が残りますが、原作ファンにはあえてこう言いたい。原作が映画化されるのだけでも十分ではないですか、と。マイナーな漫画を読んでいる人からすれば、こんなにお金を掛けてくれて、映像化してくれるのであれば、出来上がりに多少難があったとしても贅沢言うんじゃないと怒りをあらわにするでしょう。

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 映画のみを観てきた映画ファンにとってはともだちの正体についてはフクベエではなく、カツマタくんだったのは肩透かしであっただろうか。フクベエ、つまり佐々木蔵之介は第一部の同窓会でこう呼ばれていましたが、実は彼はカツマタ君でした。なぜならフクベエは小学生のときにすでに亡くなっていたのですから。

 原作及び製作者側を擁護するようでなんですが、なぜカツマタ君を誰も思い出さなかったのかといえば、いくつかの要因があります。

 まず第一はお面を被っていたから。20世紀少年にはお面を被っているキャラが二人いました。1人はユースケ・サンタマリアが演じたサダキヨ。そしてもう1人がずっと謎のままだった少年です。有名になったフレーズ「ケ〜ンヂく〜ん!あそびましょ〜!」を連呼した、あの仮面の少年です。

 仮面を被っているので、どっちが被っているのか解らない、ストロング・マシーン(新日ファンなら分かると思います!しかもなんとスーパー・ストロングマシーンである平田選手はこの映画にも出演しています。)状態だったのも要因といえます。あるときの仮面の少年はサダキヨでしたが、ある場面ではカツマタ君だったわけです。

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 次の要因としてはカツマタ君はジジババ(研ナオコ)の駄菓子屋で地球防衛軍バッジを万引きした容疑を掛けられてしまい(実際に万引きしたのはケンヂ!)、その現場を目撃した山根(小日向文世)と池上によって、犯罪者とののしられ、「死刑」になり、以後はクラスのメンバーみんなに「いない者」として無視され続ける。彼は今でいう不登校となり、いつか転校していったため、完全にクラスのみんなの記憶から消えていってしまう。

 そしてフクベエと呼び間違えられていたカツマタ君(佐々木蔵之介)は自分が誰であるかを告白することもなく、ケンヂらに協力するフリをしながら、彼らを追い込んでいく。彼は怨念のように、そして自分の存在を訴えるように「よげんの書」と「しんよげんの書」を実行に移していく。彼は第一部の理科室で死んだはずであったが、それもトリックで、ビルから落ちるときもトリックを使い、生きていた。彼のトリックを支え続けたのが万丈目(石橋蓮司)でした。

 出演者は基本的にずっと同じでした。ケンヂ(遠藤健児)役の唐沢寿明はこの映画の主役であるはずだが、第一部以外はひたすら逃げているか、事件から遠い現場でもがいているだけで、アクション的な主役は豊川悦司(オッチョ)が1人で引き受けていた印象が残る。ちなみに第三作目にはケンヂ、つまり遠藤健児のモデルである、フォーク歌手の遠藤賢司(猟師役)が出演しているのが嬉しい。

 その他のメンバーもどんどん老けていっているのがなんともおかしい。香川照之(ヨシツネ)と常盤貴子(ユキジ)の老け方がもっとも強烈で、そこまでしなくてもいいのにと思ったほどでした。石塚英彦、宮迫博之は原作漫画のイメージどおりで、笑えます。

 そしてこの三部作でもっとも有名になったのは平愛梨(遠藤カンナ)でしょう。彼女の清潔感はこの映画の中では際立っでいる。「ともだち」の娘という運命の女を力むこともなく、演じていたのではないでしょうか。

 他のメンバーも小池栄子、黒木瞳、中村嘉葎雄(神様)、山寺宏一(コンチ。北海道でDJをしていたレゲエ野郎。)、高橋幸宏、古田新太、佐野史郎(ヤン坊・マー坊の二役)、ロンブー淳(地球防衛軍)、高嶋政伸(地球防衛軍!ゴジラ・ファンなら大笑い!)、片瀬那奈(ジョージアに出てくるスタイルの良いおねえちゃんです!)、そして研ナオコ(ジジババ)が脇を固めています。

 沢山出すぎていて、裁ききれていない印象が否めませんが、お祭りみたいな映画なので、これでいいのかもしれません。特撮シーンにつきましてはいろいろとチャチで、納得していないファンも多いでしょうが、この映画は特撮のみの映画ではありませんので、あまり騒ぎ立てる必要もないでしょう。

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 堤監督の演出は今回、というかこの『20世紀少年』ではずいぶんとオーソドックスな手法に徹していましたが、制約があったのでしょうか。まあ、凝った演出に走らずに、見易い画を心がけたのかもしれません。

 小泉響子、遠藤健児、磯乃カツオ、矢吹丈、春波夫(古田新太が唄う歌がまた最高で、三波春夫の『世界の国からこんにちは』と村田英雄の『皆の衆』を掛け合わせているようなコミックソング。)などの人名は原作を読んでいない人がこれを観ると、堤監督がまた悪ふざけをしたのかと思うかもしれませんが、これは浦沢の原作どおりなのです。

 ロケーションとしてはかつて、そこにあった東京の下町を再現していましたが、これはCGが主だったようです。駄菓子屋の様子やそこに貼られている成人映画のポスターがなんとなくマッチしているのも楽しい。特撮というと、どうしてもロボットによる破壊シーンなどばかりに目が行きがちですが、昭和の街並みのシーンなどは十分に大画面での鑑賞に堪えるものだったのではないでしょうか。

 そして最後にどうしても語らなければいけないのが音楽です。Tレックスのマーク・ボランが唄う『20th CENTURY BOY』をこの一年、何回テレビやラジオで聴いただろうか。このナンバーよりも『ゲット・イット・オン』や『テレグラム・サム』のほうが有名でしたが、映画のおかげでこのナンバーだけではなく、Tレックスというグラム・ロックの雄に興味を持ってくれたらいいですね。

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 このほかにもCCRの『雨を見たかい』なども懐かしいナンバーでした。CCRならば、『プラウド・メアリー』なども聴いてほしいナンバーです。そしてもう一曲重要なナンバーがあり、それこそがケンヂと「ともだち」カツマタ君を結ぶきっかけとなった『BOB LENNON』というナンバーです。

 これはケンヂとカツマタ君が再会したときに永遠に封印されることになりました。反政府的な旗頭のように崇められたこの歌が実はともだちとの共作というのはなんとも皮肉ではあります。

 映画でも原作でもクライマックスには万博会場でのライヴ・シーンが使われました。まるでウッドストックやモンタレーのように大観衆を集めたこのシーンこそがこの映画の肝であり、ともだちの正体などは二の次であることはこのライヴシーンが証明します。

 万博会場に着いたときのバイクの爆音、何十万の群集がケンヂのために、まるでモーゼの十誡のときに二つに割れた海のように道を開く。ケンヂはその瞬間、まるで預言者のようになる。もちろんケンヂは預言者ではないので、ステージに着いたところでバイクから転げ落ちてしまい、なんとも気まずい雰囲気になる。

 自由な表現が許されること、自由に集まれること、自由に生きること、これがロックの主張であり、それを体現したのがケンヂだったのか、それともケンヂが放送室を占拠して掛けた『20th CENTURY BOY』を聴いて自殺を思い留まった「ともだち」カツマタだったのかは判断が難しい。

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 ケンヂにとっても、ともだちにとっても、そして窮乏生活に耐えていた国民にとっても反政府運動の象徴になっていたこの歌を万博ライヴで聴くことは重要な意味を持つことでした。この歌を唄うかどうか。原作ファンにとっても、映画ファンにとってもこのシーンがあるかないかは大切でした。結果として、原作ではカンナのモノローグにあるように演奏されません。

 しかし映画にはそのシーン、つまり『BOB LENNON』は絶対に必要なものでした。もしこれがなかったら、なんとも収まりの悪い映画になってしまいます。三部作のトリを飾るには「グ〜〜〜タララ〜♪ス〜〜ダララ〜♪」の能天気なフレーズはなくてはならないものに思います。

 ケンヂがジジババの店で地球防衛軍バッジを盗んだために、無実のカツマタ君はヤマネや池上にいじめられました。彼が「死刑」を宣告された原因を作った存在です。彼は少年時代にカツマタ君を一度「死刑」にするいじめっ子に消極的に加担しました。

 そして中学時代にカツマタ君が自殺しようとしていたのを救ったのもケンジでした。小学校時代に存在を抹殺されたカツマタ君は顔を失いました。「顔」を失ったカツマタ君は「仮面」を付け続け、屋上で死を迎えようとする。そこでTレックスのギターリフに接した彼は仮面を外し、ケンヂとともだちになる。

 派手な演出が多かったこの映画が最後の最後で一気にスパッと閉じられる様子は良い意味でも悪い意味でも呆気ない。個人的にはこの終わり方は嫌いではありません。映画館を出るときにちょっと良い気分で出られたから。

総合評価 65点




 
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