良い映画を褒める会。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『ハッピー・フライト』(2008)期待していなかっただけに、レベルの高さにびっくり!

<<   作成日時 : 2009/06/08 18:44   >>

ナイス ブログ気持玉 4 / トラックバック 2 / コメント 2

 先日、近所のツタヤで新作映画を借りていて、河瀬直美監督の『七夜待』と『ワールド・オブ・ライズ』はすぐに決まって、残り一本を借りると3本になり、3本借りると一泊分サービスになるので、ついで借りしたのがこの『ハッピー・フライト』のDVDでした。

 矢口史靖監督作品で、これまでにぼくが見たのは『ウォーターボーイズ』『スウィング・ガールズ』のみで、よく出来た作品を撮る監督だなあという程度の認識しかありませんでしたので、今回もとくに期待していたという類ではありませんでした。

画像


 また、内容自体がホノルル行きのジャンボ機にバード・ストライクによる故障が起こり、台風の目を突いて、離着した羽田空港まで戻っていくというお話なので、とても地味で映画になりにくいストーリーでした。それを上質なサスペンスフルなコメディ映画に仕上げられているのを見て、かなりびっくりしました。

 収まりすぎにも見えますが、いい意味で期待を大きく裏切ってくれました。見て爽快というほどまではいきませんでしたが、ANAのタイアップを得るために必要なギリギリ最大限の描写制限のなかで、上手く纏め上げています。飛行機を離陸させるために、これだけ多くの空港スタッフが笑える文句やブラックな愚痴を言いながら、なんとか定時に間に合わそうとしている、その強迫観念が一番印象に残りました。

 なかでも離陸しようとしている飛行機に向かって、「かえってくるなよ〜!」とか笑いながら言ってるシーン、自分の機内アナウンスに酔ってしまったパイロットに無線で「電波を独り占めしないように!」と釘を刺すシーン、整備士に「定時で飛べないようなら、細かいところは放っておけ!」と言い放つシーンなどはブラックで笑えました。

画像


 これだけをみると、「なんだ?安全よりスケジュールか?」などと嫌味を言うひともいるでしょうが、いざ飛行機に乗ったら、そういうことを言うひとに限って「早くしろ!」とかわがままをいいまくったり、「どうしてくれるんだよお!」とか平気で恫喝するやつなのはないでしょうか。穿った見方をすれば、少々のことでは墜ちないからゴチャゴチャ言うなということでしょうか。

 日本などはまあ、しっかりとやっているほうではないでしょうか。外国に行けば、「これ、ほんまにちゃんと飛ぶんやろか?」と不安になる飛行機がたくさん飛んでいます。全日空も日航も座席は綺麗ですし、サービスは良いほうです。アメリカやその他外国に行ったら、どうみてもわれわれ黄色人種を下に見ている応対をされることなどしょっちゅうでしたし、なんかいおうにもケンカできるほどの英語力はないので、どうしても我慢の子になってしまう。

画像


 それから思うと、日本語が通じる喜びがあるのだから、ちょっとぐらいのことで騒ぐんじゃねえと言いたい馬鹿客があまりにも多い。接客業は「言いなりになります」業ではありません。建前ではいまだに「お客様は神様です」のような昭和の価値を押し付けようとしますが、サービスを受ける側の自分たちの態度は退化し続けているのが現実でしょう。どこへ行っても平気でゴミを散らかす。

 公共の場所である交通機関に無造作に捨てられる吸殻やマクドナルドの紙バック(あれは臭くて大嫌い!)、憩いの場であるはずの公園や海岸に平気で捨てられるゴミ、マナーの悪い釣り好きのアホどもの残した釣り針や仕掛けのせいで傷つく鳥たち…。本当にきりがない。

画像


 映画に戻ります。ストーリーの軸としては操縦士のエピソード、CAのエピソード、地上勤務のエピソード、管制室やコントロール室、そして整備士のエピソードを上手く挟み込みながら、それぞれの人生模様を軽快に描いていて、好感が持てる作品でした。うまく多くの人々をさばいています。きれいに人々を描き分ける手腕はさすが、矢口監督だなあと再認識させてくれます。職業的になっているきらいもありますが、彼の手腕は確かです。新鮮さを期待する向きにはどうかと思いますが、安定感はそれよりも重要でしょう。

 キャストでは田辺誠一、寺島しのぶ、田畑智子、岸部一徳、吹石一恵、そして最近の邦画によく出てくる綾瀬はるかが持ち味を出しています。とりわけ田辺誠一が演じた副操縦士はとぼけていて、良い味を出しています。また、この映画での綾瀬はるかはそんなに目立つほうではなかったような気もしますが、『マジック・アワー』『僕の彼女はサイボーグ』での彼女よりも、より「素」の魅力が出ていたように思えました。

画像


 映画自体にはちょっと硬いかなと思う場面もありましたが、何でも茶化せばよいというわけではないので、これくらいのノリで描いているほうが、リアリティがあるように思えました。CA業務もここで描かれるのはクレーマーへの対応だったり、爺さんが吐いたゲロを処理したり、修学旅行の馬鹿ガキへの対応だったりと、ツライ眼に合うシーンばかりで華やかさとはあまり縁がありません。

 空港見学に来ているガキどもがまた最悪で、「工具一つでも無くなると、探し出すまで帰れない」と空港職員が説明しているにもかかわらず、工具を盗み出し、しかも帰りの観光バスのシートを工具で破壊して喜んでいる馬鹿ガキの描写もあります。体罰は駄目とか言う人もいますが、言って分からない馬鹿には必要なのではないでしょうか。

 脱線しまくっていますが、映画としては航空機が墜ちるかもしれないという緊張状態とは対照的な綾瀬はるかや田畑智子を中心にした、のほほんとしたのんびり感が絶妙で、彼女らのコメディエンヌとしての適正を感じさせてくれました。緊張溢れるコックピットでも田辺誠一と時任三郎の何気ない会話にクスッとくる要素が多々あり、とかくジメジメしがちな邦画の中では珍しい楽しみがありました。

画像


 これこそが矢口監督の力量なのでしょう。軽快な作品を描く監督って、人気は出ても、なかなかうるさ型のファンや関係者から評価を得にくいのでしょうが、彼はもっと評価されるべきでしょう。シリアスな作品を作るのも才能ですが、劇場に観に行った観客を幸せにして帰らせてくれる才能は貴重です。

総合評価 80点


ハッピーフライト スタンダードクラス・エディション [DVD]
東宝
2009-05-22

ユーザレビュー:
仕事とは? サービス ...
さぁ、肩の力を抜いて ...
リアルさはありました ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ



ハッピーフライト ビジネスクラス・エディション(2枚組) [DVD]
東宝
2009-05-22

ユーザレビュー:
明るく軽快な航空業界 ...
仕事とは? サービス ...
今までで一番笑った始 ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ






ハッピーフライト ファーストクラス・エディション [Blu-ray]
東宝

ユーザレビュー:
仕事とは? サービス ...
Blu-rayで買う ...
「Come Fly  ...

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 4
ナイス ナイス ナイス
なるほど(納得、参考になった、ヘー)

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
映画評「ハッピーフライト」
☆☆☆☆(8点/10点満点中) 2008年日本映画 監督・矢口史靖 ネタバレあり ...続きを見る
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
2009/11/08 20:50
ハッピーフライト (田辺誠一さん)
◆田辺誠一さん(のつもり) 田辺誠一さんは、現在公開中の映画『ハッピーフライト』に鈴木和博 役で出演しています。一昨日、ようやく劇場に観に行くことができました。●導入部のあらすじと感想 ...続きを見る
yanajunのイラスト・まんが道
2010/02/02 01:24

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
弊記事までTB&コメント有難うございました。

近年邦画は問題作ぶった作品に良いものができたためしなく(ちと大げさ)、寧ろこうした純娯楽作にバランスのとれた優秀な作品が多いような気がします。

「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」で僕はすっかり矢口監督は気に入ってしまいました。
場面の繋ぎの呼吸が良いんですよ。
で、同じくらいに出来ていれば良いかなと臨んだところ、中身の充実度から言えば大分上で、非常に楽しませてくれましたね。
空港の運営というものがよく解ったのも収穫!

終盤のパニック場面もかなり本格的で楽しめました。

>馬鹿客
サーヴィス業は提供する方は通常低姿勢になりますが、受ける方も謙虚にありたいですね。
サーヴィス業ではないですが、医師・看護婦も患者も謙虚たれ、と思います。

>体罰は駄目とか言う人もいますが
怪我をさせない範囲で必要だと思います。
僕らの頃は軽い体罰は残っていましたなあ。
オカピー
2009/11/09 01:46
 こんばんは!
 矢口監督作品はもっともっと評価されて良いですよね。映画としての完成度が高く、ストーリー展開も軽妙で、俳優たちの魅力も引き出しています。

 今度は作風を変えて、シリアス物かホラー物を撮った彼の作品も観たいですよ。

 空港業務の裏方の様子などについてはおっしゃるとおりで、『スチュワーデス物語』などとは比べものにはならないリアルさとカラッとした笑いが絶妙でした。次回作にも大いに期待したいところです。

ではまた!
用心棒
2009/11/09 17:58

コメントする help

ニックネーム
本 文
『ハッピー・フライト』(2008)期待していなかっただけに、レベルの高さにびっくり! 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる