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zoom RSS 『レッド・クリフ PART U』(2009)さあ、いよいよクライマックスへ!!!でも…。

<<   作成日時 : 2009/03/26 17:17   >>

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 とうとう完結編を迎えたジョン・ウー監督による赤壁の戦いを描いた『レッド・クリフ』。前作品の呼称がなぜか途中で、『レッド・クリフ』から『レッド・クリフ PART T』に変わり、「ああ、たしかにこれを2時間で語るのは無理だろうねえ…。」と思っていた僕は前作での「TO BE CONTINUED」のエンディングを観たときも、別に腹も立ちませんでした。

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 むしろ、前作では舌足らずになってしまっていた、人間の想念の暗部や謀略を今度こそはしっかりと後半で描いてくれるのであろうという期待と、そして一抹の不安を胸に劇場を後にしました。帰り道、徒然なるままに想像していたのは「苦肉の計」「連環の計」「離間計」「借刀殺人」「火計」などの謀略機略、そして、クライマックス・シーンのひとつとも言える七星壇での祈祷をどうやって映像化するのかということでした。

 結論から言うと、兵法的なシーンのうちでは苦肉計は完全にカットされたために、黄蓋の見せ場は無くなってしまい、連環の計には鳳雛先生は登場せず、周喩の旧友であった蒋韓も二度目の見せ場もなく毒殺されるなど、慣れ親しんだ三国志とはかなり違った脚本になっており、がっかりとしました。

 そのぶん、赤壁最大の一大クライマックス・シーンである火計に関してはさすがの迫力で、毎秒毎秒、かなりの大金が乱れ飛んでいるのを確認できます。中村獅童もこのシーンではかなりオイシイ役を演じていました。が、その他である上記のシーンでは見事に期待を裏切りました。

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 また講談的ではありますが、東南の風を吹かすための呪術的なシーンともいえる七星壇での孔明の祈祷は全く描かれることなく、戦闘に突入していきました。金城武の名場面になるところだったのに残念でした。周喩が孔明に対する恐怖と嫉妬に駆られる様子や暗殺計画などもほとんど描かれず、作品における人間の業の奥深さや狡賢さという点においても不満が残りました。

 美談を描くわけではないのですから、汚い部分は汚い、それを民衆に代わって引き受けるのが政治であり、軍隊であるというところまで踏み込んで描いて欲しかった思いがあります。

 エンターテインメント的な見方で言えば、ワイアー・ワークやスロー・モーションを用いた、派手な戦闘シーンも多く、主役級の人々のクロース・アップもかなり挿入され、一般映画ファンは観やすいのでしょうが、叙事詩として見ていくと、このような過剰な演出は不必要に思えました。なにか目線が合っていないツー・ショットもあり、違和感が多かったのも気になりました。

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 脚本では、無意味とも思える周喩と小喬夫婦のシーン(かなり多い!剣舞やら琴演奏やら、お茶会やらなんやかや。)や曹操軍兵士と貞姫の交友シーンなどにより、焦点がボケてしまったのは残念でした。闘いのみを描いても集客に結びつかないであろうという判断からだったのでしょうが、要らないものは要らない。唯一唸らせてくれたのはこの兵士が曹操軍に加わった目的が「食わせてくれるから」とはっきりと言い切ったことでした。

 さらにがっかりさせたのが後半の火計後の殲滅戦の描き方でした。曹操がこの大敗でも何故か逃げていないのです。実際には大負けし、敗走に次ぐ敗走を重ね、劉備軍に追い立てられ、100万の軍隊が帝都・許昌に帰る頃には1000人にも満たなかったという大敗戦もまた、曹操らしいスケールの大きな見せ場になりますし、敵将である関羽との戦場での友情と義理人情のくだりなどはぜひとも描いて欲しい名シーンだったのです。

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 三国志演義などを読み慣れた読者や三国志ファンからみると、前作以上に、この作品にたいする残念な思いが強いのではないでしょうか。そのまま描く必要はないのかもしれませんが、あまりの無茶ぶりに驚かされました。小喬が曹操の陣へ単独で行くことなどありえませんし、敵味方の主役級の人々が一同に集まって、曹操を囲み、挙句の果てに「二度と来るな!」と言って、追い返すなどはあまりにも馬鹿らしい。

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 最後の最後に後味の悪いものを見せつけられたために、帰り道を力なく歩いていました。ただ、そこだけで判断するつもりはなく、さすがに大金掛けて製作しておりますので、大作には仕上がっていますし、派手なシーンも多いので、観ていて飽きて眠ってしまうことはないでしょう。

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 出演は前作品同様にトニー・レオン(周瑜)、金城武(諸葛亮孔明)、チャン・フォンイー(曹操)、チャン・チェン(孫権)、フー・ジュン(趙雲)、中村獅童(甘興)が起用されています。その他、特別出演にもリン・チーリン(小喬)、ユウ・ヨン(劉備)、ホウ・ヨン(魯粛)、バーサンジャプ(関羽)、ザン・ジンシェン(張飛。三国志でもっとも人気のあるキャラクター。) なども顔を揃えています。劉備軍はほとんど見せ場がありません。


総合評価 65点



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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
用心棒さんはがっかりされたようですが、「三国志」の素人には結構楽しめましたよ。

女性陣の有りうべからざる行動も全体の流れの中では気にせず観てしまいましたなあ。
周瑜の妹のなんたらの男装がばれんわけがないという意見が目立ちますが、経験から言って女性は少なくとも12〜14歳くらいまでの男性としては十分通用します。
6年前に観光地で、アテネ・オリンピックで活躍した日立ソフトボール部の連中とすれ違ったんですが、正体を知る前「最近の小学生男子はおっぱいがでかいなあ」と思ったのです。TVでは細身に見える彼女らも現物(笑)を見ますと、体格の良い小学生のように見えるんですよ。
・・・まあ、その年齢の男子が兵士になれたかどうか僕は関知しませんが。^^;

苦手なスローとワイヤーが減ったように感じられたのも嬉しくてアクションでは前作より好印象でした。
アガメムノンを戦闘の最中に殺してしまった「トロイ」よりはマシかな、と。

騎馬を観て黒澤明を思い出していたら、最後の台詞は何だか「七人の侍」の勘兵衛から拝借したような気がしてきました。

では、では。
オカピー
2010/01/13 01:44
 ほおっ!意外でした。
ご立腹かと思いきや、楽しまれたのですね。

三国志に関しては中学生以来、何度も読み返している書物なので、こだわりはそれなりにあります。よって厳しくなったしまう部分があるのかもしれません。

もっとよく出来るはずなのに!という期待が大きいので、そのギャップがマイナスに働きました。

まあ、良かれ悪かれ、歴史物を映画化してくれるだけでも楽しいですね。

ではまた!
用心棒
2010/01/13 22:43

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