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zoom RSS 『鬼畜大宴会』(1997) 映像学科の卒業制作で作ったのがこれとは…。絶句でした。

<<   作成日時 : 2008/02/27 01:04   >>

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 長い間、何年何十年と映画を観ていると、これまでにも様々な問題作品と呼ばれる映像作品に行き当たりました。メジャーなものでは『ノストラダムスの大予言』『獣人雪男』『狂鬼人間』など特撮系の発禁作品。『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』『九十九本目の生娘』『犬神の悪霊』など差別助長と取られかねないホラーやサスペンス系の発禁作品。

 そして、さらにはオタク系殺人鬼第一号ともいえる宮崎勤で話題になり、その後ツタヤなどレンタル・ビデオ屋からも撤去されてしまった一連の『ギニー・ピッグ』シリーズのようなスプラッター系作品群。

 ただスプラッター系映画の落とし所というか、安全地帯は「この映画には何の考えもありません。とことん悪趣味で、ただ血がドバドバ出るだけですよ!」という不文律であり、現実には起こりえない「究極の最低バカ映画であるので目くじら立てないように。」「まあ、こんなのまねするバカなんていないよ!」という暗黙のルールがなんとなくありました。

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 それが現実にも起こりえるのだ、それを実行するためのアイデアを提供してしまったのだ、という反省からか、それとも単に臭いものに蓋をしただけだったのかよくは分かりませんが、以後、メジャーもこうしたものには大規模な出資をしなくなったように思います。

 大ヒットした『リング』『らせん』、そして『着信』や『呪怨』にしろ血がドバドバ出ることもありますが基本的には「霊がらみ」のホラーであり、一般人が狂った犯行を実行するのは『ユリイカ』など社会性のある映画の仕事になるか、異常者がはじめから存在するサイコ映画として描かれていることが多い。

 そのような今でもあるうやむやなルールを簡単に乗り越えてしまい、行きつく所まで行ってしまった感があるのが今回記事にした『鬼畜大宴会』です。カルト映画特集などが企画されるとこの映画は前述した発禁映画とともに名画座で上映されるようです。

 冒頭に挿入されている学生運動のモンタージュ・シークエンスは実際のものなのか、演出としてロケーション撮りされたものなのかは定かではないのですが、もしこれがロケーション撮りならば、カット自体は短いものの組み合わせながらも、光の使い方や迫力とスピードに溢れるモブ・シーンの撮影と編集には大きな才能を感じる。

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 全編通して見ていくと、フィルムはザラザラしたタッチが貫かれている。刹那的で殺伐とした映像はリアルにその世界から逃れたいという衝動を観る者に与える。文化住宅内の小道具やファッションなど、時代考証にこだわっているのも、作品世界のリアリズムをより強化している。

 この鼻につんとくるような、生理的に避けたい、すえた黴臭さを纏う貧乏くさいリアリズム描写は後半の流血の大惨劇鬼畜スプラッター宴会をより深刻な映像にする。ただ違和感がある台詞もありました。それは相澤に面会に行った時の「彼女ですか?」という何気ない一言でした。四十年代ならば、「恋人ですか?」ではないかなあ、と思いながら見ていました。

 演出では最初はぎこちないが、素朴な感情を出していた田舎出身と思える登場人物たちが追い立てられて、居場所を失い、心理的にも動物的にも安定と冷静さをも失いながら、誰も寄り付かない山奥や廃屋という閉息された環境へ逃れていくと、本来同志であったはずの人間関係のなかでさえも、建て前の社会性が崩れると、人間性を失って、剥き出しの野獣のようになっていく過程を荒削りではありますが、作品の中に詰め込んでいます。

 また中盤までの少々もたつく時間経過こそが、最後の狂乱・恐慌状態へ持って行くための重要な布石になるのではないだろうか。最初から最後まで、あの後半のような怒涛の暴力描写が続いたら、観客がついて行けなくなってしまう。

 雅楽を織り交ぜた和楽器による音楽の使い方のセンスも素晴らしい。不気味な作品世界に調和しているのが薄気味悪い。この作品映像は観客に激しい嫌悪の情を沸き上がらせるのは事実である。また認めたくはないであろうが、デビュー作品から全開になっている熊切監督の破壊的な才能から逃れられないのも事実である。

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 しかし、よくもまあ、これだけ薄汚くて、さらに体臭が強そうな奴らばかりを集めてきたものである。魅力的な登場人物が皆無で撮られたため、見ている人にまで不快な臭さが漂ってくる。映像そのものに不潔感があり、観客の目が拒否権を発動しても不思議ではない。

 ただ嫌悪感、それもこれほど強烈なマイナスの感情を掻き立てるのもまた尋常ではない。才能として許容されるのは一回限りという限定付きではあるが、確信犯的な悪意もここまで来れば、ある一種の才能と言えるかもしれない。

 映像美は皆無ではあるが、憎悪に満ちた地獄の底を覗いたような圧倒的なパワーは確実に存在している。ただ一般的な観客が生理的に受け入れられなくとも仕方がない程、このフィルムは悪質でグロテスクである。

 先ほども言ったように、スプラッターはあくまでも非現実的な「おバカ映画」でなければならないと考える立場なので、たとえ左翼気取りの特殊で浅薄な思想であったとしても、人間性が作品の表面に出てくる設定は避けるべきなのではないか。

 革命家という仮面を被っていても、しょせんは本能のままに蠢く野獣に過ぎないと言い切った、この若い監督の大胆さは買います。しかし、そうは言っても、それ以上でも、それ以下でもない。この悪質で汚い世界観を誰に伝えたかったのだろうか。

 多分これもまた永久に放送されることはないであろうし、カルト映画ファンが細々と語り継いでいくのみであろう。他人との会話で語るにはこの映画はあまりにも悪趣味なのだ。

 この『鬼畜大宴会』が前述した発禁映画よりもより深刻な問題を提起してくるのはこのような犯罪を犯したのが普通の学生たちであったということです。本来真面目だった学生たちでも環境と成り行き次第では簡単に人間性を失っていくという過程そのものが衝撃的でした。

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 グロとエロを突き詰めていった結果があの中盤以降の暴力、虐待、内ゲバによる私刑へと繋がっていく。実際赤軍では山岳ベース・リンチ事件などが起こり、それまでは支持していた一般の人々も彼らを見捨てるようになったと聞きます。

 このフィルムで描かれたこととそんなに変わらない事態が起こっていたようですが、これを映像化する者が出てきたのは驚きでした。みんなどちらかというと避けて通りたい話題であり、素材であるにもかかわらず、それを単なるスプラッター映画に仕立て上げた度量の大きさというか配慮のなさにはさらに唖然としました。

 革新派(赤軍?)はこれではただの「基地外」集団ではないでしょうか。驚くほど簡単に思考停止に陥り、頭の中は子供以下になってしまう。やることも子供以下で、セックスに狂い、仲間はずれを作り出し、究極の虐めをやり遂げる。異常な行いを平気でやりきる彼らは既に人間ではない。ゾンビでも仲間とともに活動するのに、彼らは仲間内で平気で殺し合う。

 共食いするネズミ、蛇、ザリガニと同レベルになっているのだ。そこには高邁な思想など皆無で、ただ本能だけしかない。なによりも凄いのはそれを喝破したのが当時弱冠23歳だった熊切監督たちの卒業制作作品だったということだ。

 刹那的で、空虚で、愛情の欠片もない。カメラは常に冷淡で、というか人間に関心も興味もない。バカな革命派のひとびとを「バカ」として撮り続けるのみである。出演者のルックスがすべて普通かダサいのが恐怖に拍車をかける。俳優達がルックスの良いメジャー俳優たちならば、この作品は成り立たないのである。

 どこにでもいそうなブサイクでイモな感じの彼らだからこそ、与えるインパクトはより大きく、現実味を帯びてくるのである。近所にこんな感じの兄ちゃん、姐ちゃんは普通に暮らしていそうなので、より衝撃的なのです。

 「第二之宴」と銘打たれた山奥での粛清シークエンスと「最後之宴会」と名付けられたラストの20分間の流れはとりわけ悪夢です。猟銃で吹き飛ばされ半分崩れ去った顔、日の丸に飛び散る鮮血、猟銃を女性器に差し込んで発射する異常性、男性器切り落としと噛み切り、打ち首、日本刀を首に押し当てて己の命を絶つ凄まじさとこれでもかと言わんばかりの残虐シーンのオンパレードとなります。

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 そして狂気の「宴」のあとに出演者のテロップが流れるのですが、これがまた凄まじく、死亡した順番に「現在」の、つまりあちこちに放置されたままの死体となった姿に出演者の名前がクレジットされていきます。どこまでも悪趣味の限りを尽くします。

 音楽も「赤犬」というバンドが担当しているのですが、和楽器を大胆に取り入れた音楽は破滅的なフィルムに何故かマッチしていて、日本的な雰囲気を与えています。熊切和嘉監督は評価の難しい人ですが、これにつけた音楽は優れています。日本らしい雰囲気と音楽と住空間なのにこれ程異常な世界観を出しているのは不思議です。

 観ると吐き気のする映画です。登場人物に感情移入などしようがないし、共感する部分は皆無です。観終わった後にもっとも嫌な気分を味わう映画になるかもしれません。ぼくもこの映画は好きではありません。

 しかし圧倒的なこのパワーは凡庸な監督に出せるものではありません。保守的な現在の日本映画界で商業的に大きな成功を認める才能ではないかもしれません。しかし嫌悪を覚えつつも、才能を認めざるを得ない。なんとも複雑な思いが交差した一本でした。誰にも薦められない禁断の作品です。まさかこれがDVD化されるなんて思いませんでした。

総合評価 68点




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