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総合評価 78点 沈滞していた70年代後半のイギリスが生んだ伝説的なパンク・バンドにして、当時のミュージック・シーン最大のアイコン、セックス・ピストルズが1978年の1月にアトランタからサンフランシスコにかけて、最初で最後のアメリカ・ツアーを行った模様を中心に、彼らが残したものは何だったのかを見る者に問いかけるドキュメンタリー映画がこの『D.O.A.』(Dead Or Alive でしょうな!)である。 ジョニー・ロットン(ジョン・ライドンのことです。)とシド・ヴィシャス(ボーイズ ビー シド・ヴィシャス!)の確執、ナンシー・スパンゲンに代表されるコアなファンのいかがわしさや刹那的な行動と言動が多数収録されている。 とりわけナンシーとシドの絡みはインタビュー形式で収録されているが、すでにこの頃のシドは覚醒剤のために廃人同様になっていて、虚ろな瞳を何処かへ向けている。覚醒剤を吸って、意識を取り戻そうとしている様子は異様な光景です。 ナンシーもブヨブヨした身体をボンテージ・ファッションで包んでいるが、ボンレス・ハムみたいで見苦しいこと限りない。なんであんなのとシドが引っ付いたのか不思議だが、今となっては語る意味もない。 行き場を失い、社会のどん底でのたうちまわる彼らの観客の様子はまさに地獄絵図であった。サッチャー政権下で見捨てられた階層の若者は怒りを向ける場すらなく、虚ろな目を冷徹にカメラに映し出されている。 貧富の差が当然のものとして定着してきた我が国が現在抱える問題の一つであるニートやネットカフェ難民などいわゆる「負け組」と呼ばれる人々とイメージがだぶる映像がかなり多いのが不気味である。 全米ツアーとイギリスでのライブでのオーディエンスとマス・メディアの温度差は確実に、そして残酷なまでに存在している。母国でのスキャンダラスなパンクの牽引者であり、ファッションの最先端という時代のアイコンとしての役割はアメリカでは求められてはいないのだということをピストルズのメンバー自身が薄々感じながら演奏している姿はどこか痛々しい。 選曲自体はベストと呼んでも良いほど代表曲がすべて収録されている。もっとも彼らが出したアルバムはデビュー・アルバム『勝ってにしやがれ!』のみなので、全曲演奏しても一時間に満たないので、かなり短く終わってしまったのだろうか。 『ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン』『アナーキー・イン・ザ・UK』『プリティー・ヴェイカント』『EMI』『ボディース』『ライアー』『アイ・ウォナ・ビー・ミー』『ニューヨーク』『ホリデイズ・イン・ザ・サン』など勢いのあるナンバーのほとんどが収録されているのはファンとしては嬉しい。 よくライヴで演奏していた『マイ・ウェイ(マ〜〜〜〜イ!ワア〜〜〜〜イ!というオーストラリア人みたいなアクセントで歌っていたのが妙に耳にこびり付いています。)』は権利問題のためか、今回は収録されていませんでした。ただほぼすべてのナンバーがブツ切れになっているのをどう捉えるかで感想が変わってくる作品でもあります。 つまり、この作品の趣旨がいわゆるバンドのミュージック・ライヴを撮ろうとしているのではなく、パンクという現象や彼らに群がるファンやマスコミの心理を如何に捉えるかに主題が置かれているのは明らかなのです。 そのため「音楽ファン」がこの作品を見たならば、かなり不満があるのかもしれません。しかし、パンクというムーヴメントをもっともありのままに捉えたのがこの作品であるのは疑いようがない。あのブームの勢いや儚さを、そのまま虚飾のないありのままの姿を見れば、関わった人々の切なさや悲しみも感じ取れるのではないだろうか。 他のパンク・バンドの楽曲も収められていて、なかでも懐かしいのはビリー・アイドルが所属していたジェネレーション]のライヴの模様や、シャム69が演奏する『リップ・オフ』『ボースタル・ブレイクアウト』のシーンでの観客のノリの良さが素晴らしい。 個人的に好きだったパンクやニューウェーヴの楽曲を幾つか紹介しておきます。 ザ・ダムド『ニュー・ローズ』、クラッシュ『ロンドン・コーリング』『ロンドンは燃えている』、ザ・ストラングラーズ『ノーモア・ヒーローズ』、ラモーンズ『リメンバー・ロックン・ロール・レイディオ?』(福山雅治がオールナイト・ニッポンの二部をやっていた頃に彼はこのナンバーをオープニングに使ってましたなあ〜)、ジャム『イン・ザ・シティ』(ご存知ポール・ウェラーがカッコよくやっていたグループで、のちにミック・タルボットと組んで出したスタイル・カウンシルもセンスが良くて大好きなバンドでした)などです。 「下手くそだ!」とか「歌詞が下らない!」だとか散々悪評ばかりだったパンク・ロックですが、エルビス・プレスリーや初期のビートルズが発散させていたエネルギーを持っていた数少ないバンドだったのがセックス・ピストルズであったのは誰が否定しようが、僕は信じて疑わない。デビュー・アルバム『勝手にしやがれ!』を聴いた時の衝撃はそれ以降一度もない。LPは二枚買い、今はCDを持っている。 勝手に見やがれ!って感じでしょうかね。 D.O.A.
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