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zoom RSS 『鉄輪』(1972)カルト・ムーヴィーともいえる、もっと評価されるべき作品である。

<<   作成日時 : 2007/10/30 20:05   >>

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 日本映画界の重鎮、新藤兼人監督が手掛けた、初めてのカラー作品であり、個人的にはとても好きな一本です。しかしDVD化はされておらず、一般にはあまり存在も知られていない不幸な作品でもあります。今回たまたまスカパーの深夜枠で放映されましたので、深夜三時過ぎに部屋で観ておりました。

 「鉄輪」と書いて「かなわ」と読みます。製作された70年代初頭の映画としては、なんとも大胆な性描写がふんだんに盛り込まれているために、大っぴらに「あれは良いよねえ!」とは言い難いのも事実であります。芸術と猥褻の境界線を引きにくい作品ではありますが、なんとも言えない魅力が溢れています。

 物語は中年夫婦(乙羽信子と観世栄夫)と愛人(フラワー・メグ)の間で起こる怨念、妄執、欲望、葛藤があるお決まりのシチュエーションを中世、現代、そして能舞台『鉄輪』を交互に配置して、人間の変わらない業の深さを見せていく。このような構成は『イントレランス』的な映画作りともいえるかもしれない。

 なによりも、これがカルト的なのはポルノ、ホラー、オカルト、コメディといった既成ジャンルのみならずに「能」という日本の伝統文化を見事に映像に融合させている点だけではなく、映倫や社会に対する映画芸術としての観点からの表現方法の反抗であるということです。

 新藤監督からの挑戦状とも言える、この作品が訴える既存の価値観への反骨を感じ取れるか、ただのちょっと抹香臭いポルノ映画であると取るかで、全く評価が変わってきそうです。日活ロマンポルノは1971年から始まり、1973年には裁判沙汰になっていきますが、それは後のお話ですのでここでは書きません。

 しかし性描写に対しては強烈なバッシングが吹き荒れていた微妙な時期に、わざわざこのような問題作というか実験的色彩の強い作品を発表した新藤監督の反骨的な姿勢は大いに評価されて良い。

 性描写はかなり大胆で、ほとんど全裸状態のフラワー・メグがかなり動き回るのですが、無粋なボカシやモザイクは皆無で、すべてをカメラ・ワークの妙やアングルの良さや絡みの上手さや動作の妙などの計算された動きと演出で性的なエモーションを盛り上げていきます。

 もっともこれをすべての人が評価するとはいえません。しかしこれが深夜興行の映画館で掛っていれば、かなり多くのコアなファンを掴むカルト・ムーヴィーになれたのではないかという確信はあります。題材も不倫と「丑の刻参り」を扱っていて、とてもお昼向きではありません。

 『エルトポ』『ホーリー・マウンテン』『ピンク・フラミンゴ』『ナイト・オブ・ザ・リヴィング・デッド』などの真夜中に観るミッドナイト・ムーヴィー群につながる個性的な作風と実験的色彩は個人的には好みです。

 基本的に暗い作品ではありますが、それをさらにおどろおどろしい雰囲気にしているのが林光がつけた印象的な音楽です。林光の音楽は大島渚監督『絞殺』や増村保造監督『でんきくらげ』など多くの作品で使われていて、新藤監督も『触覚』『竹山一人旅』『三文役者』『墨東綺譚』などで彼を起用します。

 この作品で彼がつけた音楽の凄みを是非聴いていただきたい。ヒステリックな高音部と怨念が迫ってくるような低音部が同時に攻めてくるような不気味なメイン・モチーフは強烈に耳に残り、容易に離れません。この音楽を聴くだけでも価値があるのではないでしょうか。

 それと映画には全く関係ないのですが、観ていて奇妙なことが起こりました。雨が降っていたわけではないのに何度も画面が歪んだりしましたので、その日は録画を諦め、後日またHDDに録画しました。

 そして深夜にHDDからDVDに落とそうと思い、録画を始めたのですが、三分くらい経ったところでDVDーRが使用不能になりました。それまで3年以上使い続けていて、一度もエラーを起したことのないDVDレコーダーがはじめてエラーを起した瞬間でした。

 しかし別に気にも留めずに再度、別のディスクを挿入して、再びダビングを始めました。ところが再び同じ場所でエラーを起したのです。「変だなあ?」と思いつつ、別のデータがHDDに残っていたので、そちらのダビングをしていきました。すると何事もなかったかのように5枚ほど普通にDVD−Rに焼いていけましたので、「別に故障じゃなかったんだ!」と思い、ふたたびこの『鉄輪』のダビングに取り掛かりました。

 すると再び、三分くらい経ったところでエラーが出たのです。さすがに気味が悪くなり、その日はダビングを諦めて、そのまま寝付きました。次の日は休みだったので、お昼過ぎに再びダビングに挑みました。もちろん最初は別の作品をダビングしていきました。

 そしてついに来た『鉄輪』。少々緊張しながらも、まさかこの作品に何か気持ち悪いいわれがある訳ではないだろうと思い、DVDをセットして、ダビングを開始しました。するとまた例の場所に来た時に、ディスクにエラーが表示されるではありませんか。

 一日に4枚のディスクが使用不能になるというのは偶然にしては出来すぎていますし、気味の悪さは尋常ではありませんでした。結局DVD−Rへの録画は諦めて、DVD−RWに録画して、この気味の悪い出来事は解決しましたが、後味の悪さは残ります。

 まあ、このようなオカルト的な話題はともかく、この実験作は十分に観る価値があります。余談ではありますが、黒澤明監督も60年代にヨーロッパの監督達とオムニバス映画の企画があったときに『鉄輪』を翻案した作品を撮ろうとしていたそうです。能に造詣の深い黒澤監督がこの題材で撮っていたならば、観てみたかったというのが実感です。

総合評価 75点

※新藤監督の『鉄輪』は現在ビデオもDVDも発売されておりませんので、観世流の能舞台『鉄輪』を表示しておきます。
 <ASIN:B0007WZY98>観世流能 鉄輪(かなわ)</ASIN>
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