良い映画を褒める会。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『電送人間』(1960)走査線を走らせることで生まれる不思議な現実感。

<<   作成日時 : 2007/02/01 09:13   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 5 / トラックバック 4 / コメント 4

 沢村いき雄がいきなり良い味を出して演じるのがまずは嬉しい東宝怪奇人間シリーズの第二作目となるのが『電送人間』です。彼が演じていたのは遊園地に必ずあるお化け屋敷の親方でしたが、この劇団にもし堺左千夫、佐田豊、大村千吉らが入っていればさらに大笑いしたかもしれません。

 主なスタッフは田中友幸(製作)、円谷英二(特撮)、俳優陣に平田昭彦、土屋嘉男、田島義文などいつものメンバーが顔を揃えて、ヒロインも前作『美女と液体人間』同様白川由美が務めているが、今回はいくつか違う点がある。

 なんといっても今回の主役を務めるのが名優・鶴田浩二であり、監督に福田純を起用し、音楽にも池野成を使っているのだ。鶴田がはまるか浮くかで作品の出来が決定してしまう危険性もあったと思うのだが、抑制の効いたさすがの演技を見せている。

 反面ヒロイン役を務めた白川の女性的魅力が薄れているのが気にかかる。やつれたような疲れたような表情が垣間見えるのは何故だろうか。

 そして今回も刑事役で登場する平田昭彦はさすが東宝特撮ファミリーらしい顔の広さを見せている。前作『美女と液体人間』では科学者佐原健二と友だち、そして今回の新聞記者鶴田浩二とも友だちという設定は直接的にはドラマと関係ありませんが、ニコニコして見ていました。残念なのは佐原健二が端役でも出ていないことです。彼がいるだけで作品が締まるので出ていて欲しかった。

 むしろこの作品で目立っていたのは犯人である銃剣魔と電送人間を演じた中丸忠雄の怪演であろう。彼がこの作品で示した異様な存在感は強く印象に残る。池野の音楽は伊福部昭のものとは当然違うのだが、彼がこの作品につけたメイン音楽もなかなか良かった。ただこれを何度も必要以上に使いすぎるのがどうかなとも思います。

 光学処理、スクリーン・プロセス、ミニチュア・セット、マット合成と特撮映画のツボを全て押さえ、本編もしっかりとしているので見応えがある。あくまでも本編を盛り上げるために存在するのが特撮であるという基本スタンスを感じます。

 電送人間が通常の人間と違うことを表現する青白い光のフィルターの掛け方、そしてTVの走査線が入ったようななんともいえない「電気な」感じが堪らない。こういった表現がいまでも同じように用いられていることからすると、革命的な表現だったのだろう。

 超能力のひとつであるテレポーテーションを科学的に取り入れるという発想が斬新です。当然無理があるのは分かりますが、空想科学としては素晴らしいアイデアだったと言える。

 そして福田純監督。彼は後に昭和版ゴジラ・シリーズを壊滅に追いやる製作者の一人であり、シリアス路線ファンである僕らからするとスタッフ・ロールで見たくない名前の一番手なのですが、この作品では結構まともな作品を送り出しているのが意外でした。

 もちろんこの作品中でもコンテがバラバラで「いい加減にしろ!」と言いたくなるシーンもあります。それは電送人間を鉄道の駅に追い詰めていくスピード感溢れるシーンと牧場で秘密を探る鶴田浩二と白川を交互に描くクロス・カッティングを使った一連のシークエンスです。

 同時間で進行している筈の二つの出来事なのに、しかも設定は真夜中の12時なのに、片方は真夜中、もう片方はどう見ても早朝にしか見えないのです。特撮を伴うような難しいカットでもないのだ。

 鶴田浩二を拘束しなければいけないシーン(鶴田側のシーンはきちんと真夜中になっている)でもないのに何故きちんと最低限の仕事をしなかったのか理解に苦しみました。こういったことが重なっていくうちに徐々に丁寧さという感覚が麻痺していったのではないでしょうか。

 せっかくの電送人間の見せ場のひとつである瞬間移動シーンを何故細心の注意を払って構成できなかったのか。監督としてなんとも思わなかったのだろうか。スクリプターは何をしていたのか。試写の時に誰もなんとも言わなかったのか。子供向けだから別にいいだろうとでも思っていたのか。

 キャバレーでのダンス・シーンはまたまた盛り込まれています。しかも今回は全身を金色の塗料で塗りたくったマンボ・ダンサーでした。しかし彼女の掛け声「う〜〜〜!」がまるでなっていないのでずっこけます。

 しかもこのキャバレーがなぜか「軍服」キャバレーなのです。従業員全員が軍服に身を包み、ビールやおつまみを運んでいる様は情けない限りですが、これは軍隊への風刺なのだろうか。出入り口で銃剣を持って構える従業員の姿は笑えます。

 銃剣魔がこの店のオーナーを殺害した後に逃亡を図るシーンで、警官が追いかけていく時に従業員に「どっちへ逃げた?」というところがある。このときに銃剣を背負った従業員が「あっちへ!」と剣を持って方向をさすのがかなり間抜けで笑えました。ソニー製オープン・リール・テープ・レコーダーが小道具として出てくるのも楽しい。

総合評価 68点
電送人間
電送人間 [DVD]

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 5
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)

トラックバック(4件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
映画評「電送人間」
☆☆(4点/10点満点中) 1960年日本映画 監督・福田純 ネタバレあり ...続きを見る
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
2007/02/05 00:17
電送人間 07104
電送人間 1960年   福田純 監督  円谷英二 特技監督  田中友幸 制作東宝スコープ&nbsp; &パースペクタ・ステレオフォニック・サウンド鶴田浩二&nbsp; 白川由美&nbsp; 平田昭彦&nbsp; 中丸忠雄&nbsp; 土屋嘉男 河津清三郎 今作でも、白川由美さんのシミーズ... ...続きを見る
猫姫じゃ
2007/05/06 02:35
電送人間 (昭和35年・1960)
電送人間関沢新一 福田純 鶴田浩二 東宝 2005-05-27 科学が生む悪魔、怪電波に乗って計画犯罪遂行!  水、電気、ガスと続く"怪奇・変身人間シリーズ"第2弾であり、ゴジラ映画でもお馴染みの福... ...続きを見る
Godzilla and Other A...
2007/09/25 20:26
電送人間 - Secret of the Telegian
電送人間関沢新一 福田純 鶴田浩二 東宝 2005-05-27 遊園地のお化け屋敷で銃剣による殺傷事件が発生。犯人が現場から逃げた形跡はなく、状況は密室での殺人だった。事件現場には被害者への呼び出しの手紙が落ちており、被害者の手& ...続きを見る
OOH LA LA - my favor...
2007/09/25 22:01

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
TB致しました。席を外しているうちに反映されたようですね。有難うございます。

これは快調でした。お話の見通しが良くて純度が高い。メッセージ性がある作品が必ずしも純度が低いということはないのでしょうが、どうも違和感があります。どうしても娯楽色の強い作品は単純に楽しませて欲しいという気持ちが強いのです。
その点これは良かった。4点ですが、買いですね。
オカピー
2007/02/05 02:40
 オカピーさん、こんにちは。
 銃剣魔という殺人鬼の名称が凄いですね。あの走査線と池辺成のテーマ曲が決まっていました。鶴田浩二よりも悪役の中丸の怪演が光っていましたね。
 文中でも書きましたように同時刻の出来事なのに時間が揃っていないのはがっかりしました。それ以外はまともに作られています。
 ではまた。
用心棒
2007/02/05 15:52
こちらの記事も、UPしました!
こういう映画手、当時の社会がかいま見れて、おもしろいですよねぇ、、、
この映画では白川さん、当時珍しかったんじゃないかな?営業担当のキャリアウーマンでしたね。
そのあたりで、妖艶な美女ではないキャラだったんだと思いました。
猫姫少佐現品限り
2007/05/06 02:54
 猫姫様、こんばんは。
 早速のUP!さすがですね。すぐにTBとコメを届けに参ります。
>営業担当のキャリアウーマンでしたね。
 おおっ!そうでしたね。姫は冷静に見てはりますね。特撮への思い入れが強すぎるためか、どうも冷静さに欠ける僕としては見習わなければなりませんね!
 ではまた。
用心棒
2007/05/07 01:35

コメントする help

ニックネーム
本 文
『電送人間』(1960)走査線を走らせることで生まれる不思議な現実感。 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる