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zoom RSS 『風の谷のナウシカ』(1984)<パート2>音楽と映像の融合の素晴らしさを堪能しましょう。

<<   作成日時 : 2007/01/27 17:01   >>

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<続きです。>
 ディティールの細かさが重厚なテーマをさらに尋常ではないものに際立たせている、この作品『風の谷のナウシカ』のなかで、じつはとても漫画チックな先祖返りのような演出を見ることの出来るシーンがある。それはユパがトルメキアとの空中の白兵戦のために滅亡しかかっていたペジテ船に空から救出に向かう場面です。

 電光石火でトルメキア兵を圧倒するユパが斬りかかる時、まわりの世界はフラッシュで表現される。まるで『ルパン三世』で石川五右ヱ門が斬鉄剣を振り回す時のように。このシーンには賛否両論あるであろうが、個人的には大好きなシーンのひとつです。

 そして漫画チックというのではなく、もっとも印象に残るシーンがもうひとつあります。それは庵野秀明がアニメーターとして手掛けた、巨神兵が王蟲の大群を瞬時に焼き尽くすクライマックスでの大迫力シーンとそれに繋がる、彼が自滅していく一連のシークエンスです。

 『機動戦士ガンダム』のソーラー・レイ・システムや『宇宙戦艦ヤマト』の波動砲のような強力なビームを放射する生物兵器である巨神兵の登場場面は思い出に残っています。昔のビデオ版では特典映像として「火の七日間」を描いた短編のようなものがついていました。今回はレンタルで借りたのでよく分かりませんが、DVDにもついているんでしょうか?

 それはさておき、この二つのシーンはいつまでも覚えています。風の谷も設定そのものもただの平和な国というものではなく、ユートピア的描かれ方をしていないところが良い。自衛のための武装、環境を保全するための設備建設など労を惜しまない艱難辛苦があってこそ、はじめて成立しているのである。このアニメは馬鹿に出来ないなあと見ていて感じた日からもう20年以上経っていることにも驚きます。

 演技面ではクラリス以来二度目の宮崎監督作品主役の座を射止めた島本須美はより奥行きのある主人公ナウシカを見事に演じている。彼女の声があってこそ、はじめてナウシカに生命が吹き込まれているのである。

 ベテラン納谷悟郎の演じたユパ、クロトワ役の家弓家正、永井一郎のミト、その他TARAKO、吉田理保子などが作品世界を支えています。結構『未来少年コナン』の声優陣がそのまま起用されていたようです。

 松田洋治が演じたアスベルも上滑りすることなく、きちんと作品に収まっています。彼は後に『もののけ姫』のアシタカ役で復活します。この作品の声優陣では他に坂本千夏(『ジャりん子チエ』のチエちゃん役で有名)、貴家堂子(『サザエさん』のタラちゃん)が務めているが、はっきりいってタラちゃんは拙かった。新鮮さが無く、しかも国民的アニメの声で出演している彼女を起用したのかは謎である。キャスティング・ミスであろう。

 技術的にどうやっているのかは解らないが、ナウシカの夢のシーンでのぼやけたというか画のずれたような不思議なイメージは秀逸で、ノスタルジー溢れる幻想的なシーンのひとつである。何本も伸びてくる大人の手のイメージは結構恐ろしい。

 久石譲がはじめて宮崎作品に参加した記念すべき作品でもあります。ナウシカのメイン・テーマ、夢のシーンでの少女の声の付いたヴァージョン(久石の娘さんの声)など強烈に印象に残る力強い音楽を映画に提供しています。音がキャラクターの個性をさらに強めていました。

 画と音が調和した素晴らしいハーモニーを生み出している点でもこの作品の素晴らしさが抜群であることを容易に理解できることでしょう。ナウシカの音楽は単なる「漫画映画」の付け足しの音響ではなく、まさに映像と共存し、相乗効果を上げる。

 そういった意味からしても、宣伝キャンペーンで歌われた安田成美の微妙なアイドル歌謡曲『風の谷のナウシカ』がいかに場違いなものであったか分かるのではないだろうか。「風の谷の〜な うーしかあ〜」という変な切り方も許せませんでした。

 まったく作品にフィットしていないこの曲は宮崎サイドからクレームが付き、劇場ではクレジットはされるものの実際には流れなかったようです。実際に流れたかどうかはさすがに20年以上の歳月が流れているのではっきりとは覚えていません。

 腐海のデザイン、昆虫のデザイン、メカニックのデザイン、キャラクターの個性など卓抜した才能を見せつけた宮崎監督でしたが、これを制作するまでには数年のブランクがありました。『ルパン三世 カリオストロの城』で興行的に苦杯を舐めてから仕事が無く、やっと仕上げた執念の作品がこの『風の谷のナウシカ』だったのです。

 彼の意気込みを随所で感じるのは容易である。何度見ても飽きない素晴らしい作品です。テーマ的に『もののけ姫』と被るところもありますが、個人的にはナウシカのときのようなインパクトを『もののけ姫』からは感じませんでした。

総合評価 97点
風の谷のナウシカ
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映画評「風の谷のナウシカ」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中) 1984年日本映画 監督・宮崎駿 ネタバレあり ...続きを見る
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]
2007/02/04 23:43

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
TB致しましたが、例によってブログ用に書き下ろしたものではなく、以前のメモの転載で、簡単な記事です。

宮崎駿の映画の多くにエコロジーが絡んでいます。しかし、世間の言うエコロジーと宮崎が描いているエコロジーはかなり違う。
世間はエコロジーを「環境を大事にする」という意味で使っていますが、彼は本来の意味である「生態学」の意味でエコロジーを扱っていると思いますね。すなわち、自然と上手く共生すること。
本作でも「もののけ姫」でも最後には自然が人間を抱擁するという形で終ります。非常にスケールの大きな作家だと思います。
オカピー
2007/02/04 23:49
 オカピーさん、こんばんは。
 「共生」は宮崎監督作品のキーワードでしょう。彼が作品で提示する重たいテーマはもっと考えられてしかるべきでしょうね。
 ナウシカにおいて、監督は同じ種族であるにもかかわらず、平和に暮らせない人類が果たして、もっと巨大な自然環境全体との共生ができるのかという重い現実をも突きつけました。
 簡単に環境問題を考えるとかの次元ではなく、もう手遅れかもしれないが、それでも「いま自分が何をするべきか」を率先して行動していくべき人物像として描いたのがナウシカであり、アシタカであったのでしょう。
 作品毎にいろいろと考えさせてくれる、日本で珍しくなってしまった映像作家です。あと数本は力を振り絞ってやりたいようにやって欲しい監督です。ではまた。
用心棒
2007/02/05 00:20
 二つの記事ともTBしてください。寂しい庵が賑やかになっていいですから。
オカピー
2007/02/05 18:29
 やっときます。なんだかヴィスタが出回りだしてから反映されるのが遅く感じます。
用心棒
2007/02/05 22:13

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