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zoom RSS 『モスラ対ゴジラ』(1964)♪マハラ〜 マハラ モスラ〜♪ゴジラが悪役だった最後の映画。

<<   作成日時 : 2006/09/02 00:31   >>

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 本多猪四郎監督、田中友幸製作、伊福部昭音楽、円谷英二特撮に加え、関沢新一脚本、主演に宝田明、助演にザ・ピーナッツというゴジラ映画としては平田昭彦を除くほぼベスト・メンバーが出揃った作品となったのが、この『モスラ対ゴジラ』です。

 基本的にゴジラ映画では、ゴジラの対戦相手が勝負に勝つか引き分ける場合に限り、「ゴジラ対OO」ではなく「00対ゴジラ」というタイトルが付きます。『キングコング対ゴジラ』、『モスラ対ゴジラ』でも明らかです。

 またゴジラのシングル・マッチではない場合には『三大怪獣 地球最大の決戦』、『怪獣大戦争』、『怪獣総進撃』などのように、タイトルに「怪獣〜」とつく傾向があります。例外的なものとして『ゴジラの息子』があります。

 前述から明らかな通り、今回ゴジラは彼の昭和シリーズのキャリアでは最後のヒール役を務めました。南方のインファント島から流れ着いたモスラ(卵)と小美人ザ・ピーナッツには悪役ではなく、ベビーフェイスがよく似合う。

 ストーリーとしては『キングコング』以来、用いられる人間の欲望の深さとその犠牲になる未開社会の人々という構図が依然生きています。人間の欲望は果てしない。二年前ネルソンらが東京に壊滅的被害をもたらしたばかりであるにもかかわらず、モスラの卵を食い物にしようとして蠢く浅はかな漁港の地元民と地方有力者の欲が新たな被害を生み出していく。

 自分たちに漁業権のある沿岸で獲れた物は自分達に権利があると主張する馬鹿者達にはつける薬はないようだ。自分たちが権利を主張するわけですから、当然破壊を引き起こしたときには他都市の被害を弁済するのは義務であろう。

 昭和らしい無責任で未熟な資本主義社会をデフォルメされて見せられるのは堪らない。怪獣映画の王道である文明社会と資本主義社会への皮肉をたっぷりと見せつけてくれる。まだまだ作り手が表現者としての矜持を失ってはいません。

 今回ゴジラは海でも氷山でもなく、工業地用の埋立地から出現する。その後、隣接する工業地帯を破壊していきます。お金を生み出すはずの工業地地域予定地から姿を現し、繁栄の象徴である工業地帯を蹂躙する様子は皮肉たっぷりと言えます。

 またゴジラの旅の嗜好は徐々に形成されつつあり、今回もお城を壊しに行きます。お城が好きなのか嫌いなのかよくは分かりません。必ず出かけていくのに、必ず壊して帰って行く。

 インファント島の原住民が日本語と英語をチャンポンで話すのは『キングコング対ゴジラ』、『モスラ』で既に経験済みなので、特に違和感はありません。

 成虫、卵、幼虫のスリー・ショットを見られる作品はこの作品のみなので、ある意味非常に貴重な映画でもあります。ただし繭を見ることは叶いません。この作品の中で、最も印象に残るモンタージュは漁民がモスラの卵を海岸に引っ張ってくるために多くの船で出迎えるショットと海岸に運んだモスラの卵を恐る恐る遠巻きに囲むショットの繋がりです。

 音楽は前作で担当した古関裕而から伊福部昭に引き継がれました。そして彼が創作したのが『マハラ・モスラ』、『小美人の祈り』、『聖なる泉』の三曲でした。エキゾチックな雰囲気はこちらの方が良く出ていました。インパクトの強さでは『モスラの歌』には及びませんでしたが、伊福部音楽らしいテイストは十分に感じることができます。

 昭和シリーズとしてはゴジラがヒールだった最後の作品でもあります。つまりヒールのゴジラを観られた最後のチャンスだったのです。モスラの成虫、モスラの幼虫(2匹)と対戦したゴジラは戦い難さも手伝い、決着をつけるまでは至りませんでした。

 だってゴジラはスーツ・アクターが熱演したのに対し、モスラは幼虫も成虫も操演によるキャラクターだったので、なかなか取っ組み合うこともならず、噛み合わない異種格闘技戦の様相を見せました。

 噛み合わない理由はもうひとつあります。ゴジラは陸上では無敵ですが、空中で戦闘を繰り広げることは出来ません。ゴジラを止めようとすれば、彼の間合いに入らねばなりません。ゴジラから逃げ回って日本を破壊するならば空を飛ぶ怪獣達は無敵ですが、ゴジラを倒すというミッションを背負った怪獣は陸上に下りて来ざるを得ません。

 陸上に下りてゴジラと戦うキングギドラを無能だというのはあまりにも一方的なのです。空で勝負するならば、ギドラは無敵です。ルールが違う競技者、それもチャンピオン同士を戦わせても、好勝負が生まれるとは限らない。モスラも空で真価を発揮するキャラなのですが、ゴジラシリーズに出てくるモスラは以後はほとんどが陸上で活動する幼虫となるのも偶然ではない。

 対戦成績 モスラ対ゴジラ (幼虫モスラズのリングアウト勝ち) 通算成績 一勝二敗一分け(初代、二代目ゴジラ合算で)

総合評価 78点

モスラ対ゴジラ
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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
用心棒さん、コングのページからの連続コメントをお許し下さい。
このモスラも、正に「愛・再生・復活」をテーマとした感動巨編であると認識しています。
力尽きるまで、闘う成虫モスラの勇姿は美しく、感動的でした。
そして、たまごから生まれ出たときの幼虫モスラには、まさにシュヴァイツアー博士の「生命への畏敬」などの思想に通ずるものを感じます。しかもそれが双子であったことなどは、観る側に歓喜をもたらせるプロットです。
親の意志を引き継ぐ幼虫モスラの実直なひたむきさと、闘う戦術の賢明さ・・・。モスラの倫理観は現代においてもう一度見直すべきものだとも思います。
役割を果たしたモスラ親子に「ありがとう、お疲れ様」と心から賞賛の拍手を贈りたくなる一遍でございました。
ただ、異種格闘技としては、おっしゃるとおりかもしれませんね。これも猪木VSウィリー・ウィリアムス戦などを想起いたしました。
では、また。
トム(Tom5k)
2006/09/03 02:03
 トムさん、こんにちは。
モスラ出演作品を見終わったときは他の特撮作品とは違う感情が湧いてきます。爽やかというか、破壊衝動がどこかへ消えてしまう感覚です。キャラクター、音楽、ストーリーの三位一体攻撃を受けてしまう感じです。平和や調和というモスラの存在テーマも一度もぶれませんでしたね。
> 猪木VSウィリー・ウィリアムス
なつかしい!燃えましたよ。個人的には面白いなあと思った異種格闘技戦は『前田日明対ドン・ナカヤ・ニールセン』が最後です。

 ではまた。
用心棒
2006/09/03 11:10
こんばんは!いつもありがとうございます!
そか、、、悪役最後なんですね。
ということは、昭和ゴジラはほとんど良い怪獣だったということですね。
でも、この映画見ても、愛嬌あるから、悪役とは思えませんでした。
猫姫少佐現品限り
2007/05/26 02:10
 われらがGさまは『怪獣大戦争』で「シェー!」をやってしまってからは坂を転げ落ちるように「正義とお笑い」の怪獣になってしまいました。
 分かりやすくいえばモノクロ時代、そして映画タイトルで後に来る場合(『OO対ゴジラ』)ではゴジラは悪役(基本的にゴジラ映画では前に来る怪獣が勝者を表します)として存在します。『キングコング対ゴジラ』『モスラ対ゴジラ』が好例。
 反対に平成ゴジラシリーズで『ゴジラ対モスラ』のクレジットを見た瞬間に「東宝は分かってない!」と腹が立ちました。
 ではまた。
用心棒
2007/05/27 00:52
用心棒さんこんばんは。この悪役顔のゴジラ、後の平成シリーズの造形に繋がったのではないでしょうか?総攻撃ゴジラはこのモスゴジに匹敵する強面ですよね!モスラは一貫して平和の使者ですね。蝶ではなく蛾というのが意表をついてます。蝶も蛾も害虫なんですが(笑)
さすらいの映画人
2017/10/17 20:59
こんばんは!

モスラって、独特のキャラ付けがされていて、何とも言えない魅力がありますね。子供のころはキングギドラやガイガンに目が行ってしまうのですが、大人になるといぶし銀のアンギラス、ふんわりしたモスラの良さに安定感と安心を感じますww

ではまた!
用心棒
2017/10/17 21:51
モスラ対ゴジラはどうしてモスラが先に名前があるんでしょう?

キングコングの場合は敬意を表してゴジラが後に思いますがモスラとゴジラだとゴジラのほうがあの時点では
人気が上でなかったですか?
タロス
2018/01/30 16:18
こんばんは!

>先に
ゴジラ映画では先に来る名前の方が優勢という感じでしょうかね。まあ、優勢と言っても引き分けくらいで終わりますがww

ですから人気の問題ではないと思いますよ。名前がゴジラよりも先に来ている場合はニュースターか外人レスラーに忖度している感じでしょうかw

ではまた!
用心棒
2018/01/31 01:02

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