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help リーダーに追加 RSS 小津安二郎監督幻の作品『突貫小僧』(1929)。消失していたのが1988年に奇跡的に発見。

<<   作成日時 : 2006/09/20 00:13   >>

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 小津安二郎監督が1929年に製作したサイレント作品である『突貫小僧』はもともとは四巻物でした。おそらくは40分から50分くらいの作品だったのではないでしょうか。ただ現存するのは短縮版の15分バージョンのみということになります。この15分が短いか長いかはさておき、いまこうしてDVDや衛星放送で見られるだけでも十分に嬉しい。

 なぜなら戦前戦中の多くの映画は第二次大戦の戦火や映画会社のフィルム管理の悪さからほとんどが見るに堪えない状態もしくは消失の憂き目に遭っているからです。山中貞雄監督の作品に至っては『丹下左膳余話 百萬両の壷』、『河内山宗峻』、『人情紙風船』の三本しか現存していません。また『日本橋』、『唐人お吉』、『狂恋の女師匠』などサイレント期の溝口健二監督作品の多くも消失しました。

 そのような邦画の状況を知る者にとっては今回のようにたとえ短縮版であったにせよ、そのエッセンスを味わえる作品が残っていただけでも喜ばしいことです。地方の収集家の蔵には彼らの作品がまだ眠っているのかもしれません。

 新しい発見に心から期待したい。持っている方はぜひとも表に出していただきたい。彼らの映画を語り継ぐ人もどんどん減ってきている状況であり、当時の文化や時代の空気を少しでも理解できる人たちが残っているうちに出して欲しい。

 さて、肝心の出来栄えについてなのですが、ストーリーは至って単純で、人攫いの斎藤達雄がどこかの悪い商家へでも売り飛ばすために子供を物色しに下町へやってくる。遊んでいた友達とはぐれ、ひとりになっていた青木富夫をオモチャや駄菓子で誘い出して、自分達の隠れ家に連れて行く。

 攫っては来たものの彼のあまりのやんちゃぶりが手に負えなくなった人攫い一味は彼を下町に送り返す。送り返してから、こそっと逃げようとすると青木の友達が大挙して斎藤を追い掛け回し、おもちゃをねだるという楽しいお話です。人攫いの隠れ家でのやり取りは『ホーム・アローン』を思い出すような可笑しさがあります。

 青木富夫のやんちゃぶりに対する人攫いの斎藤達雄と親分役の坂本武の困惑振りが笑えます。 子供である青木にさんざん利用されてバカにされる斎藤のばつの悪い冴えない表情、良い人丸出しの親分坂本と青木との絡みはユーモアに溢れていました。

 悪人達にも人情味があるのもこの時代の良さを表しています。本物の人でなしには成りきらない人としての一線が存在している。それが犯罪社会でいうところの仁義というものではないでしょうか。自分達の都合の良いように歪曲した仁義ではなく、人間としての良心です。

 なにより素晴らしいのは15分という短い尺にこのストーリーがきちんと収まっていることです。2時間かけても訳が分からない作品が数多くある中で、この限られた時間制約の中でもきちんと己を巧みに表現していました。またこの作品は音が一切ないサイレント映画であるにもかかわらず、たしかに音を感じるのです。子供と大人のやり取り、町の雑踏の音、はしゃぎ声が聞こえてくるようです。

 監督と民族的に同一で、言語、所作動作及び感情表現について共通理解のあるわれわれ日本の映画ファンが立っている特別の土壌は小津作品、溝口作品、黒澤作品を読み解く上で、欧米人の映画ファンに比べた時に圧倒的なアドバンテージであるはずなのです。

 しかるになぜ肝心の日本の映画ファンは彼らの作品を見ようとはしないのか。これについては昔から不思議でなりません。なにごとによらず芸術というものはレベルの高い本物の作品を数多く見てこそ、はじめて鑑賞眼を養えるのではないでしょうか。

 彼らの作品は映像表現の宝庫なのです。とりわけ小津安二郎監督がサイレント期に残した作品群には映画のエッセンスが一杯に詰まっています。表情、動作、映像の繋がりを見るだけで十分に理解できるのが小津監督の活動写真なのです。人間味に溢れ、暖かみのある彼の映画に接して欲しい。何が映画かを知りたい人にはもってこいのサンプルです。

総合評価 76点

小津安二郎 DVD-BOX 第四集
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 TB致しました。
 元来は4巻ものでしたか。残っているのは三分の一くらいなところでしょうねえ。
お怒り、お嘆き、ご懸念・・・一々ごもっともです。
 自称映画ファンという方の中にどれだけ本当の映画ファンがいらっしゃるか。ファンもマニアも本来は同義語。
 古い映画も観ずに映画ファンとは言えない。温故知新ですよ。結局彼らにとっては映画は娯楽の一つ、流行の一つに過ぎない。
 真の映画ファンが減れば、良い映画も減っていく。それは必定でしょうね。
 「アイランド」というSF映画で色々と論議したことがあるのですが、この作品が持っている映画としての問題点が見えていない方が多いのに愕然としました。映画の未来は真っ暗です。
オカピー
2006/09/22 14:28
 こんばんは。映画で時間を潰しているだけの人でも映画ファンと呼ぶべきであろうか。
 TVを最大限に利用した安易なタイアップや宣伝のおかげで、無理やり観客を呼んでる作品を映画と呼んでよいのか。番組で十分だ。
 TVの評判を真に受けて観に行った人たちが言う決まり文句「面白かった」「つまんなかった」にはウンザリさせられるが、罪の重さで言うならば、「製作サイド70%、観客30%」ではなかろうか。「この程度の観客に、この程度の映画」ということでしょう。
 センセーショナルで過激な演出に奔るか、または無意味に甘いホームドラマを感動巨編と言い張る、かつてあった良心を失った製作会社や監督を活動写真屋と呼べるか。
 海外に通用する日本映画が無くなってから久しいが、これは日本人自体の品位と感受性の鈍化が招いた結果に過ぎない。
 事態はさらに悪くなるでしょうね。映画は文化の鏡です。映画は創造力の鏡です。この国からは両方とも無くなりつつあります。
用心棒
2006/09/22 22:54

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