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zoom RSS 『怪獣大戦争』(1965)ゴジラがイヤミになってしまった第六作目。水野久美の妖艶さに注目!

<<   作成日時 : 2006/09/16 01:46   >>

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 前作品『三大怪獣 地球最大の決戦』で、自らの存在理由を地球怪獣代表に見出したゴジラとラドンはこの作品でさらにその色彩を強めていきました。怪獣が人間に媚を売って人気を維持しようとする姿勢は「情けない」の一言に尽きる。作品の対象年齢が急激に低下していき、子供向けに成り下がりつつあった頃の作品です。

 ドラマ自体は]星人の統制官役の土屋嘉男と偵察のために送り込まれた波川女史役の水野久美の好演もあり、十分に視聴に耐える出来栄えに仕上がっています。彼らのユニフォームはいかにもB級的なデザインで強く印象に残っています。]星人の女性は全員が水野久美のクローンというのも仕掛けとして上手く機能しています。

 SF的な面白さはしっかりと作品に盛り込まれていて、ゴジラ映画初のSF怪獣映画の地平も開きました。未開の地からの挑戦者たち(アンギラス、モスラ、キングコング、ラドン)がそれまでの挑戦者でしたが、前作から登場したキングギドラをきっかけに宇宙という話を膨らませていく要素が新たに製作者に与えられました。

 キングギドラの初登場時はまるでガラタマのごとく、ほんのチョイ役で出演したに過ぎませんでした。はじめてギドラを操る宇宙人が出てきたのです。結果として宇宙人と地球人とのエピソードを盛り込み、SFドラマとしては合格点を与えられる水準には達していました。しかし反面、怪獣たちは中心軸よりやや離れた位置に置かれ、添え物であった感がある。

 その状況を打破するためにゴジラが選んだ方向性は子供向けへのシフトであり、その象徴となってしまったのが「シェーーーー!」でした。「ゴジラがTVを観るんかい!」と突っ込みを入れるか、萎えるか、それとも全てを受け入れるかの三択をファンは突きつけられました。

 それは『太陽の季節』、『狂った果実』、『錆びたナイフ』などで圧倒的な存在を示した石原裕次郎が晩年になって『太陽に吠えろ!』のボス役でのんびりとお茶を濁していたのと似ているかもしれません。「こんなの裕ちゃんじゃない!」と思うか「裕ちゃんが出ているだけでも良い」の境目です。

 難しい選択を迫られました。ある者は見捨ててしまったでしょうし、またある者はそれでもついていったのでしょう。あんなのはゴジラじゃないというのは簡単ではありますが、スランプの時に見捨ててしまうのはファンではない。惨めになりつつあったゴジラでしたが、まだ見捨てるには早すぎるほどドラマは充実していました。

 容姿自体は丸みを帯びてきて、精悍さや獰猛さが失われ、子供のアイドルらしく漫画チックになっていったのは残念です。

 ドラマは良い。特に前述の通り土屋嘉男と水野久美は素晴らしい。反面、ゴジラの顔のデザインは特にまずい。使い回しのような映像があるもののキングギドラは相変わらずカッコ良い。

 そしてこの作品で最も素晴らしかったのは伊福部昭による音楽です。怪獣大戦争のマーチは第一作目オープニング・テーマに次ぎ、幕開けを飾る曲の中では大好きなオープニング・テーマのひとつになっています。第一作目ではテンポを下げて使用されています。ちなみにK−1の佐竹選手が入場してきた時のテーマはこの曲のアレンジ違いのひとつです。

いろいろ良い点はあるこの映画ですが、「シェーーーー!」の残した強烈なイメージは凄まじく、猪木信者のような熱烈なファンは悪夢の始まりのような思いで観ていたのではないでしょうか。もしこの作品でゴジラが列車をつかみ取りしていたならば、まさに算盤に見えたはずなのでトニー谷が着ぐるみを被っているのと変わりがなかったでしょう。

 「強さを競う」親日格闘路線だったゴジラはついに前作の三対一変則タッグマッチを経て、この作品でも二対一変則タッグマッチという「観て面白い」全日路線に転換して行った結果、かつての熱狂は去り、親子連れが気楽に楽しめる娯楽に退化していきました。

 前作で存在理由をキングギドラに奪われ、今作品ではピエロに成り下がってしまう。かつての強さを知る観客には耐え難い転落ぶりでした。あきらかに東宝の製作者たちはゴジラの真価を分かっていませんでした。

 無言でどんな役でもこなしていくゴジラの真の気持ちをまったく理解していない。ゴジラは単なる着ぐるみではなく、三船と並んで世界に通用する東宝最大のスターなのです。安易な使い方をして欲しくはない。

 ゴジラのスランプを救っていたのは水野久美に尽きます。この作品のMVPは彼女で決定です。妖艶でミステリアスな]星人を演じた水野久美は東宝の企画した多くの特撮映画のなかで強い輝きを放ちました。実際に彼女が出演しているといないでは作品の深みが違うのは東宝映画ファンならば誰もが納得してくださるでしょう。

 キングギドラの存在はさらに悪役となるべく肉付けが行われ、宇宙人の手先という設定も加わりました。悪趣味極まりない黄金色のフォルム、三つの首、悪魔のような翼は出てくるだけで大迫力を存在感を持っています。後年のメカゴジラやガイガンのデザインも秀逸ですがキングギドラほどの迫力はありませんでした。

総合評価 73点

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
用心棒さん
いやあ、懐かしい。これも母親とリアル・タイムで観に行ってます。しばらく再見しておらず内容もうろ覚えですが、“ゴジラ=人類の味方”はもう定着してたように思います。当時(S40年代半ばころ)は、その前のゴジラ悪役もののリバイバルも東宝チャアンピオン祭りで上映され、わたしとしてのゴジラは時に悪く、ときに人類の味方という一貫性のないキャラクターだったように思います。父から「むかしのゴジラは悪い怪獣だったんだ」と聞かされ「今も悪いときがあるよ」などとかみ合わない会話をしていたことを思い出します。
ゴジラはスタン・ハンセンのように変貌し、さらにラッシャー木村のようにまるく変貌していったようにも思います。
国際プロレスの金網デスマッチが懐かしい。
では、また。
トム(Tom5k)
2006/09/18 01:22
 トムさん、こんばんは。
ゴジラのイメージは作品ごとに変わっていました。何故そうなったのかと言えば、見る順番が出鱈目だったからでしょうね。
 TV放送やリバイバル上映で見るときは製作順番で見せてくれるわけではありませんでしたので、カラーになったりモノクロになったりするゴジラのイメージを掴みにくかったのです。
 『キングコング対ゴジラ』を最初にリバイバルで観て、『怪獣大戦争』をテレビで見て、その次に『ゴジラ』(オリジナル版)、『ゴジラ対メカゴジラ』を観てというふうになっていたのでおぼろげにはモノクロのゴジラは悪いんだという印象でした。
 記事も『怪獣大戦争』を終え、これから長い長い冬の時代の作品群を記事にしていかねばならず、『オール〜』までは見終えたのですが、なかなか纏まりません。
 黒のカウボーイ・スタイルで決めたハンセンの初来日の時にはスコットランド風タータン・チェックのロディ・パイパーとタッグを組んでいたのを覚えています。1977年か?
 国際プロといえばジプシー・ジョー、アレックス・スミルノフ、鶴見五郎が懐かしいですね。ではまた。
 
用心棒
2006/09/18 19:57
こんばんは!いつもありがとうございます!
あたしにとっては、ゴジラは人間の味方、それはVSシリーズ以降も変わらない、つまり、味方ではないケド、人間とはわかり合えている怪獣、そんな感じなんで、この映画も大変おもしろく見ました。
猫姫少佐現品限り
2007/06/30 00:20
 猫姫様、こんばんは!
>人間とはわかり合えている怪獣
「ゴジラかくあるべし!」というスタンスを持ち続ける者にとっては新鮮な意見ですね!
 興味深く思います。違った価値観をコメントに盛り込んでくださる姫様は僕の視野を広げてくれますね。今後もよろしくお願いいたします。ではまた。
用心棒
2007/06/30 00:43
猫姫様のおっしゃるようなゴジラの子供向け化の魅力は私も賛成しております。というのも収入面、持続性、柔軟性からです。収入面はご存知の通りです。持続性は毎年見てられるということです。暗いより明るい話の方が有利でしょう。柔軟性はストーリーの構成のし易さです。原爆の恨みがどうして敵怪獣と毎回戦えるでしょうか。
ブレード戦艦
2017/03/05 22:25
ていうか、ストーリー褒められるもんじゃなくね?x星人にとって脅威である発明品は開発者に持たせたまま、防音なのに音が漏れる檻に入れるし、x星人の監視役は音で狂ってわざわざ鍵を持って檻に寄るし、レコーダー流したらx星人だけでなく宇宙船もユラユラ。前半のx星人の作戦と精密さに対してこのガバガバ感はなんとかならんのか。
ブレード戦艦
2017/03/05 22:33

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