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zoom RSS 『荒野の用心棒』(1964)内緒でパクッたが予想外の大ヒットのため、結局バレてしまい....。

<<   作成日時 : 2006/07/04 12:35   >>

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 1961年に黒澤明監督が『用心棒』を発表してから三年後の1964年に公開されたのが、この『荒野の用心棒』です。仮にヒットもせずに、二週間くらいで興行を終えて、ただ消えていけば全く問題にはならなかったのでしょうが、意に反して?マカロニ・ウェスタンを代表する作品になってしまったために盗作が表沙汰になってしまいました。

 結局黒澤サイドに訴えられてしまい、レオーネ側は敗訴しました。監督名義もボブ・ロバートソンという偽名を使い、自分の名前を明らかにしなかったのは盗作であることを認めているのと同じであり、セルジオ・レオーネ監督のキャリアの汚点でもある。

 のちに『ワンス・ア・ポン・ア・タイム・イン・アメリカ』などの素晴らしい作品を残したほど才能のある彼が何故わざわざこれ程の完コピをしたのかは大いに謎ですが、彼の作品中でも代表作のひとつになってしまったのは皮肉でもある。

 誰もが知っている物語の要素を換骨して新しい血肉に入れ替えるという、いわゆる翻案物は黒澤監督自身も『乱』、『悪い奴ほど良く眠る』、『蜘蛛巣城』のプロットに、シェイクスピア劇を取り入れるなどしてやってきた事なのでどうこうは言えませんが、構図を含めた演出までパクってしまったのはレオーネの一世一代の失態でしょう。

 見た目でいちいち何処がパクリだと指摘するのも面倒なくらいパクリだらけであり、三船敏郎からクリント・イーストウッドに主演俳優が変わったこと、日本刀が拳銃に変わったことくらいでした。

 見た目以外で最大の変更点といえば、原作には大いにあったブラック・ユーモアのセンスが全く生かされていなかったことです。血生臭く、ずる賢い物語の要素とキャラクターが多数描かれる『用心棒』ではブラックな笑いが剥き出しの欲望を包み込む役割を持っていて、殺伐な作品中で救いになっていたのですが、この『荒野の用心棒』ではバッサリと笑いの要素がカットされていました。

 どうせパクるならば、笑いの部分もパクッて欲しかったのですが、当時のクリント・イーストウッドに笑いを求めるのは難しかったのでしょうか。笑いをきちんと盛り込めていたならば、さらに演技の幅を広げられたのではないかと思います。

 またアメリカの西部劇とは明らかに違うのが血生臭さとドライな感覚が同居している点でした。ドライと言っても、もともと荒野を描く事の多い西部劇というジャンルではありますが、そういったカラッとした乾燥ではない。
 
 ここでいうドライとは人間が感情を失くし、情緒が全く見えてこないという意味においてです。人間性自体が荒涼かつ殺伐としているのは『ワイルド・バンチ』に代表される後期西部劇などの例外はあるにしても、正義を描く事の多いアメリカ製の西部劇ではあまり見られない。

 黒澤明監督作品で、西部劇に生まれ変わったものには『荒野の七人』と『荒野の用心棒』がありますが、作品の質という点では後者の方が優れている。オール・スター・キャストによる前者は制作費は掛かっているのでしょうが、漫然とした仕上がりになっており、原作の良さがあまり活かされてはいない。印象に残っているのもテーマ曲くらいでした。

 後者は完コピということもあるのですが、質としても前者よりは優れています。野望に燃えるギラギラしたクリント・イーストウッドと、すでに地位を築いた大物俳優達の満ち足りている意識との差かもしれません。

 映像的にはクロース・アップの多用が気に掛かります。ただテンポは悪くないので、初見であれば、気付かないかもしれません。二つの悪党勢力の登場の仕方に映画上の工夫がされていて、片方の勢力は常に画面右から左に動き、もう片方は画面左から右に動きます。

 彼らを衝突させる意図を持つクリント・イーストウッドが彼らの間を上手く立ち回っているのを表現するのに、どちら側からでも登場してきたり、画面の真ん中を使い、奥から出てきたり、手前から出てきたりします。どちらの味方でもないと言うことも映像で表現しています。

 エンニオ・モリコーネの哀愁漂うテーマ曲も良く、印象に残ります。どうしても『用心棒』と比較しながら見てしまうのですが、上手く纏まっているのでどちらも未見の方には、ぜひ両方を見て欲しい作品です。

 若き日のクリント・イーストウッドの、野望を持ちながら抑制を効かせている名演技を味わえます。監督名は公開時はボブ・ロバートソン名義だったのですが、DVDではセルジオ・レオーネでクレジットされていました。

総合評価 70点

荒野の用心棒
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良い映画を褒める会。
2015/10/20 13:22

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コメント(16件)

内 容 ニックネーム/日時
ご無沙汰しました。
誤解と思われる部分がありますので、一言申し上げます。
60年代イタリア・アクション映画は、全世界に売らんかなと商売根性が膨らんでおりまして、イタリアの新人映画人がこぞって英米風の名前の付けたのであって、セルジョ・レオーネがボブ・ロバートソンと名乗ったのもその流れに沿ったものと考えるべきでしょう。
若きジュリアーノ・ジェンマはモンゴメリー・ウッドとして売り出し、テレンス・ヒルは結局それが永遠の芸名となった、といった経緯があります。
シェークスピアやドストエフスキーを翻案しても著作権はないですし、既に世界の文化と言うべきで何と言うことはありませんが、61年発表の「用心棒」を僅か3年後にぱくるというのは、映画人として恥ずべき行為でありましょう。考えようによっては確信的にやった可能性もあります。ヒットしたからばれたという考え方もあるでしょうが、ばれたからさらにヒットしたのかもしれませんね。
レオーネの作品の中ではこれが最もコンパクトにできていますね。僕は一番好きです。
オカピー
2006/07/06 14:57
オカピーさん、お久しぶりです。

>イタリアの新人映画人がこぞって英米風の名前の付けた

 そうだったんですか。それならば意図的にやったというわけではないのですね。

 ただ見せ方が酷似していますし、最後の決闘場面での殺気を表す煙やおじいさんを吊るす演出は誰がどう見ても、そのまんま『用心棒』でした。

 オカピーさんと同じく、レオーネではこれが一番ですね。殺伐とした雰囲気が好きです。

 ではまた。
用心棒
2006/07/07 01:11
僕なんぞは「荒野の用心棒」を見てから「用心棒」を見ました。
本家を後になってから見る。そう言う事が多いです

>作品の質という点では後者の方が優れている

うーん・・・。もしかしてそうかも知れない

>残念ながらハンブルグ時代の迫力を超える演奏はありませんね。

「のっぽのサリー」が良い例です
そして、酔っ払った客の「アッハッハッハッ」と言う爆笑がこの曲以外でも聞こえる。これもまた大事な歴史の記録の一つです
蟷螂の斧
2016/12/19 20:00
こんばんは!

ぼくも長いこと映画を見ていますが、あとになって「あれ?このアイデアはあの映画がオリジナルだったんだ!」ということが未だにありますよ。

 たとえば『シャイニング』でジャック・ニコルソンが鉈でドアをぶち破る有名なシーンがありますが、グリフィス『散りゆく花』やシュストレム『霊魂の不滅』で同じ構図がすでに使われています。

 知らずに「こんなの見たことない!まさにオリジナル!」とか言わないように気をつけていますww

 たぶん『時をかける少女』『転校生』を見たことない人が『君の名は。』を見て、こんなスゴイのはじめてとか思っている人がたくさんいそうです。まあ、彼らが映画に興味を持ってくれて、過去作に進んでくれれば良いかなと思っています。

>歴史
ビートルズのバンドとして最も魅力的だったのがデビュー前というのは皮肉ですね。

ではまた!
用心棒
2016/12/20 00:26
>ビートルズのバンドとして最も魅力的だったのがデビュー前

「ビートルズ革命」(後の邦題は「回想するレノン」)を思い出します。
「あなたとポールが仲が悪くなったのは、いつからですか?」
「1962年(ビートルズがデビューした年)です。」
ジョン・レノン一流のジョークかあるいは本音か・・・

>『君の名は。』を見て、こんなスゴイのはじめてとか思っている人がたくさん

世代交代です
過去作を是非見て欲しいです。

>「あれ?このアイデアはあの映画がオリジナルだったんだ!」

小松左京先生が監督した「さよならジュピター」の万年筆が浮かぶ場面は「2001年宇宙の旅」からいただき
蟷螂の斧
2016/12/20 21:38
こんばんは!

基本的にすべての映画にはその前に公開されて見続けられている映画のDNA、つまり既視感があるのが当然で、完全なオリジナルという映画は存在しません。

また映画は絵画や写真が発展した芸術ですので、構図を含めてオリジナルというのはありえません。

絵画の構図を勉強した映画監督の方が綺麗な画を撮りやすいでしょうね。

>ジュピター
ほら!キューブリックがオマージュしたのが1920年くらいのグリフィスやシュストレムで、左京氏もしくは撮影監督がオマージュしたのがキューブリックならば、映画のDNAは繋がっていますよね。

タランティーノもB級映画のエッセンスを拝借しながらやりたいように映画を作っていますし、デ=パルマもヒッチコックが大好きですもの。

でもそれをパクリとも思わないし、ファンは今回はどの映画の部分を使うのかなと探すという楽しみがありますww

ではまた!
用心棒
2016/12/21 00:57
>キューブリックがオマージュしたのが1920年くらいのグリフィスやシュストレム

そうでしたか機会があったら見たいです

>それをパクリとも思わないし

そう言えば
「燃えよドラゴン」鏡の間での闘い。他の映画から頂いたアイデアだそうで。その結果、あんな素晴らしい映画が出来ました

>絵画の構図を勉強した映画監督の方が綺麗な画を撮りやすい

北野武監督は?
蟷螂の斧
2016/12/21 18:41
こんばんは!

>鏡の間
鏡を印象的に使っていたのはオーソン・ウェルズの『上海から来た女』ですかね?リタ・ヘイワーズをとても美しいファム・ファタールとして撮っていた名作です。

マンガでも80年代に『ブラック・エンジェルス』での酔鬼との戦いで、松田さんが鏡の間で死闘を繰り広げていました。

>北野
たけちゃんの映画はけっこう観てきましたよ。個人的には好きです。

ではまた!
用心棒
2016/12/21 22:18
>上海から来た女

そうらしいですね。しかし、僕は見た事がないんですよ。いつか見たいです・・・

>松田さんが鏡の間で死闘

ありましたね懐かしいです。
彼自身も松田優作を意識したキャラ

>個人的には好きです。

僕が一番好きだったのは「Dolls」かな?あの切なさがいいです
蟷螂の斧
2016/12/23 00:34
こんばんは!
>いつか
TSUTAYAさんでは置いているお店が多いですし、お取り寄せサービスを使えば、けっこう素早くお取り寄せしてくれますよ。

>優作
ですよねwww

>切なさ
バイオレンス映画の方が人気がありますが、静かな作品の方がぼくも相性が合っていますよ。

ではまた!
用心棒
2016/12/24 00:42
>静かな作品の方がぼくも相性が合っていますよ。

「あの夏、いちばん静かな海。」もいいですね。
ラストはドラマ「ビーチボーイズ」がパクっていましたが

>お取り寄せサービス

そう言うのもあるんですね。便利な時代になりました。

>>優作
>ですよねwww

身体が大きくて、空手の有段者で無敵なイメージの松田優作。
40歳の若さで死去。
意外に繊細でストレスに弱かったのかも知れません・・・
蟷螂の斧
2016/12/24 06:20
こんばんは!

>便利な時代
レジカウンターの近くに店内在庫を探したり、他店から取り寄せてくれるサービスを申し込むことが出来ますので、数年前からチョコチョコ利用しています。

>優作
最後に出演した『ブラック・レイン』は公開後にすぐに観に行きましたが、まさか遺作になってしまうとは思いませんでした。ちなみにSFタッチの『ア・ホーマンス』も観に行きましたよ。こちらは酷評されていましたが、優作が出ているだけで僕は満足でしたww

ではまた!
用心棒
2016/12/25 19:40
>『ブラック・レイン』

僕は松田優作の死語、数日たってから映画館で見ました。
優作さんがスクリーンに登場したら客席がシーン・・・と静まりました。「本当に亡くなったの」って感じ。

>『ア・ホーマンス』

一度見たいです。

さて、今年最後の仕事。今から自転車出勤です
蟷螂の斧
2016/12/28 08:06
こんばんは!

>本当に
そうですよね。ぼくもびっくりしたのを覚えています。

今日はレイア姫のキャリー・フィッシャーも亡くなりましたし、最期までがっかりする一年でしたよ。ハリソン・フォードがもう高齢なのでソロを死亡させたのにまさか彼女が先に逝くとは予想外でした。

>一度
たぶんTSUTAYAさんに置いていると思いますよww

>仕事
お疲れ様でしたww

ではまた!
用心棒
2016/12/29 00:16
>キャリー・フィッシャー

すごく太った時期がありました。その後、大減量無理がたたったのでは?
僕も16kg減量した時は抵抗力が落ちて、1ヶ月咳が止まりませんでした

>ワイルド・バンチ

あの映画は、どちら側が正義かわからない。
そう言う意味でも革新的な映画です
さすがペキンパー監督
蟷螂の斧
2016/12/29 17:46
こんばんは!

>大減量
まあ、かなり丸っこかったですよww

>正義
絶対的な正義というのはなく、勝った方が正義になりますwww
次に負けると歴史は引っくり返り、正義も変わりますw

ではまた!
用心棒
2016/12/30 00:20

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『荒野の用心棒』(1964)内緒でパクッたが予想外の大ヒットのため、結局バレてしまい....。 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
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