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zoom RSS 『化石の森』(1936)ギャング・スター、ハンフリー・ボガート登場!脇役ですが、圧倒的な存在感です!

<<   作成日時 : 2006/07/18 17:27   >>

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 アーチー・L・メイヨ監督、レスリー・ハワード主演によるギャング映画であり、ハンフリー・ボガートが作品で大きな存在感を示しました。その後の出世のきっかけとなった作品であり、ボギー・ファンには見逃せない一本です。ここでの彼は誰よりも大きな存在感があり、レスリー・ハワードを完全に喰ってしまった印象が強い。

 しかし、この作品はもともと彼を主役に起用したのではないという事はクレジットを見れば明らかです。主演のレスリー・ハワード、ヒロインのベティ・デイヴィスらに後れを取り、5番目になってようやく彼、ハンフリー・ボガートの名前が出てくる。

 脇役、しかも悪役としての登場なんて、ボギーも苦労したんだなあ、と思うか、ダンディな悪役も良いなあ、と見るかは人それぞれだとは思います。彼の顔はいわゆるベビーフェイスではありません。世界恐慌はありましたが、30年代のハリウッドはまだ平和そのものでしたので、無表情で、早口で、無愛想な彼が主役を張るのは難しかったのではないでしょうか。

 強くて、義理堅い悪役を演じる事の多かった彼が、40年代に入ってから主役を演じるようになるのは戦争の影響もあったのでしょうか。男の中の男、ダンディズムの塊のような男性像を求めた、戦時中のハリウッドとアメリカ国民の意識がこうした俳優の起用にも表れてくるのかもしれません。

 この当時のハリウッドでは悪役はいつまでたっても悪役のままで、主役を張るにはギャング映画しかない状況だったのは想像に難くない。その後、『ハイ・シェラ』、『マルタの鷹』、そして『カサブランカ』などの高評価により、苦労してハリウッドの頂上に登りつめていったボギーには他のスターにはない魅力を感じています。

 名前が出てくるのが5番目でも、フィルムを支配していたのは間違いなくボギーであるという印象を捨て去る事はできない。レスリー・ハワードにすれば、主演映画を完全にボギーに持って行かれてしまったのは心中穏やかではなかったのではないでしょうか。

 ボギーの魅力に負けなかったのはベティ・デイヴィスの瞳だけでした。彼女の印象といえば、一般に毒婦としてのイメージが強いのですが、ここでは全く違った演技を見ることが出来ます。

 田舎娘を演じる彼女も、『イヴの総て』でのマーゴもともに素晴らしい。ボギーの凄みがフィルムを覆いつくすこの作品の中でも、彼女の存在は群を抜いて大きく、唯一ボギーによっても、かき消される事のない存在を示していました。

 暗く、そして黒く映し出されるボギー、光を当てられ、白く輝きを放つデイヴィスの対比が素晴らしく、輪郭のはっきりしないレスリーに向けられた影が薄い光の当て方も効果的でした。

 犯罪映画であるにもかかわらず、逃げ込んだ先になる田舎のハイウェイ筋のレストランでのやりとりが延々と繰り返され、あまり外へ出て行かないのがとても興味深い。ロケに行くほどの余裕がないための予算問題だったとは思うのですが、工夫して予算の無さを補っていました。

 これはプラスに働き、ともすれば野外での銃撃戦を前面に展開したり、追跡劇を持ってきたりというアクションの王道に頼ることなく、演劇的な密室劇のようなスタイルを取る事がむしろ斬新でした。ところどころ銃撃シーンもあるのですが、本格的な撃ち合いというのはラスト・シーンのみです。

 疲れ切った人々、野心に燃える人々、犯罪者たち、保身のみを考えてきた人々など様々な人間模様が描かれていて、しかもまとまりがある。脚本及び演出に人々への愛情を感じるのです。けっして善人の集まりではないこのレストランでは、凶悪な犯人にも感情移入が出来るように演出がされている。

 ボギーも凶悪犯でありながら、規律を持ち、敬老精神に溢れ、女の裏切りによって破滅していくため、物哀しい印象を与えます。最初にこの作品を見た時は、てっきりベティ・デイヴィスがファム・ファタールを演じ、ボギーかレスリー・ハワードを破滅させるものと思っていました。

 しかし実は最後まで、この作品にはファム・ファタールが登場しません。登場人物の台詞によって、裏切り女がいることが知らされるのみなのです。マクガフィンがファム・ファタールというのは他に知りません。裏切られて破滅するボギーはまさにフィルム・ノワールらしい幕切れを迎えます。

 ただ唐突に幕が引かれるラストシーンは『脱出』などでも出てくるのですが、肩透かしを食わされるようでした。最後まで見せる必要性は全く無いのですが、尻切れトンボのような印象を残すのはどうかな、とも思います。

 レスリー・ハワードによって朗読されるヴィヨンの詩や化石というモチーフ(肉体も不変)を効果的に使い、作品の品格を高めていました。

総合評価 73点
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