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help リーダーに追加 RSS 『ロング・エンゲージメント』(2004)オドレイ・トトゥがどんどん良くなっているのを実感できる作品。

<<   作成日時 : 2006/05/30 01:25   >>

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 『ロング・エンゲージメント』はジャン=ピエール・ジュネ監督、オドレイ・トトゥ主演のラブ・ストーリーですが、謎とき物や戦争映画としての色彩が濃い作品でもあります。舞台は第一次大戦後のフランスの田舎町と多くの人々の回想で語られる大戦中の戦場です。

 戦場での色彩はグレーが強く、まさにお先真っ暗な状態を画面で表現していました。戦場といっても、舞台はほとんど地面よりもさらに低い場所である塹壕の中だけで展開されるため、そこで上官の理不尽さによって、自分達の運命を翻弄される歩兵の惨めさが余計に哀しい。

 正反対にオドレイの暮らす田舎町や大戦後のシーンでは、戦争のことなど既に忘れたような世界になっていて、穏やかな光と風、そして黄色がかった明るい色彩で落ち着きと生命力の強さを表現している。

 ジュネ監督は明確な意思を持って、シーンごとの色彩を変えることで戦争の無意味さや平和の良さを言葉ではなく映像で、穏やかに主張しているようでした。戦場シーンでの描写はかなり残酷なものもあり、「R−15」指定も頷けます。まあ、オドレイのセミヌードやお尻ヌード、ジョディ・フォスターの絡みシーンも結構あるので「R−15」なのかもしれません。

 オドレイは脱いじゃいましたが、それで彼女の魅力が失せるわけではなく、チューバを「ブウブウ」いわせながら一人きりで吹いていたり、「親は灰になった」とフランス語で独り言を言う彼女のエキセントリックなキャラクターは『アメリ』以来のファンも喜ばせます。

 銃弾に倒れる兵士の死に様、殺し方の残酷さ、敵前逃亡するための工夫など痛みを感じる映像が多い。戦争映画にありがちな豪快な戦闘ではなく、局地戦でのチマチマした小競り合いが妙にリアルで、現実の戦場での不条理や、死ねないが一生残る痛みと傷を上手く表現していました。つまりエグイ映像が非常に多いということです。

 戦場シーンがかなり多いのにですが、基本的にはヨーロッパ映画らしい落ち着いた雰囲気を持っているため、カメラを振り回すような下品な動きはありません。ヨーロッパ映画は明らかにアメリカ映画とは全く違い、落ち着きというか諦観が確かに存在しているように思えるのです。何があっても動じない強さを感じます。

 使われているテクニックにはクレーン撮影、ズームとドリーの組み合わせ、長回し、CGと思われる特殊撮影などいろいろとあるのですが、作品の力と演出の力量により、上手く作品世界に入り込んでいて、アメリカ映画のように技術を誇示しません。

 さりげなく使われてこそ、はじめて映画の重厚さと奥行きが増すのではないでしょうか。芝居の連続性を保つため、長回しは重要視されていたようで、マルチ・カメラを効果的に使いながら、ほどよい雰囲気を保っています。

 配役の中ではオドレイ・トトゥ(マチルド役)が作品ごとにどんどん成長しているのを実感します。作品ごとに良くなっています。若い俳優や女優が成長していく様子をリアル・タイムで観られるのも、映画の楽しみの一つです。

 ついつい古い映画ばかり見がちではありますが、新しい作品も積極的に見ていかなければならないと思っている、今日この頃です。監督にしてもしかりで、今度はどういう作品に仕上げたのだろうか、個性は磨かれているのだろうか、と考えながら観るのも楽しい。

 ストーリーとしては愛する人を同じ戦場で失ったという文書を軍から受け取った二人の女が登場します。ひとり(オドレイ・トトゥ)は死んだというのを信じずに彼を探し続け、もうひとり(マリオン・コティヤール)は不条理なかつての彼の上官たちに復讐していく。片方は恋人と遂に巡り会い、もう片方は復讐を成功させるが、捕えられてギロチン刑に処される。

 マリオンが復讐していく過程の映像がエロっぽく、スパイ映画っぽいのもB級映画のようで好感が持てました。彼女の見せ場は上官をモーテルの天井に張り巡らされたガラスで無残に殺すシーンと、彼女自身がギロチンで処刑されるシーンの二つです。ジョディ・フォスターがセックスするためだけに出てくるのが一番の謎でした。

 オドレイは小児麻痺に侵されて足が不自由になった女性を演じています。岩をも貫く意志の強さで彼を探しまくる彼女は、生き残った関係者達の話をパズルのように組み合わせ、戦場での出来事の真相に迫っていきます。このあたりは見ごたえがあります。

 M・M・M(マネクはマチルドを愛する。)という文字がいろいろなシーンに出てきます。戦場の木にこの文字を彫り付けたマネク(ギャスパー・ウリエル)の映像が印象的でした。灯台のシーンでM・M・Mが出てくる時にカモメがMの形をして飛んでいくのが興味深い。

 見終わった後に思い出したのは『西部戦線 異状なし』でした。無名兵士の共同墓地や手を挙げると銃で狙撃されるシーンなどでそのように感じました。

 クライマックスで、ついにオドレイは彼の居所を突き止める。彼の住所につき、庭へ抜ける扉を開けて、家の中に入っていくシーンがあるのですが、陰の加減のためか、中に入っていく時にオドレイの姿が「ふっ。」と消えるように見えるのが美しい。

 遂に再会するふたり。名作ならここで最も印象的なシーンを作り上げるのですが、この作品ではそうなりませんでした。探し続けた彼女が感無量になり、何も言えなくなるのは分からないでもないのです。

 ただ彼の方が全く無頓着で、何の感慨も示さないのは何故なのか。記憶喪失だったとか、病気だったとかの説明シークエンスでもあれば、これでも良いのですが、全く無いので訳が分からなくなってしまっています。

 彼女はもう必要ないということなのか。ラスト・シーンでのインパクトのなさが、この作品を凡庸なものに変えてしまいました。

総合評価 75点

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
 こんばんは。
 用心棒さんにしては珍しい作品ですね(笑)。
 銃後場面の黄色がかった色彩は、大昔からジュネの持ち味ですが、確かに戦線でのグレイの映像とうまいコントラストになっていますね。
 ラストは、多分、記憶喪失ですよ。確か直前の場面で「頭がどうのこうの」という説明があったような記憶があります。
 オドレー・トトゥに関しては仰る通りで、その名も同じオードリー(英語読み)のように大女優になって欲しいです。
オカピー
2006/05/31 18:53
 オカピーさん、こんばんは。
>珍しい作品ですね(笑)。

いやあ。いろいろなジャンルを見ないといけないと思って、苦手なものも挑戦しているんですよ。
>「頭がどうのこうの」

やっぱり記憶喪失なんですかね。自分のことが分からない恋人でも、生きているだけでも良いというのはなんだか複雑ですね。

 なんか最近、彼女は引退したがっているようなコメントをしていましたが、続けて欲しいですね。ではまた。
用心棒
2006/05/31 23:01

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