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zoom RSS 『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966)ガイラがとにかく恐い!気持ち悪い!

<<   作成日時 : 2006/05/13 10:48   >>

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 世界に誇る、東宝特撮映画の黄金の四人、田中友幸(製作)、円谷英二(特撮)、伊福部昭(音楽)、そして本田猪四郎(監督)が揃った『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』は『ゴジラ』をはじめとする東宝特撮映画史上でもかなり異色の作品です。ヒロインにも東宝特撮映画には欠かせない水野久美を迎えて、万全の体制をとっています。

 <以下ネタバレがありますので、未見の方はご注意ください。>

 ここでは前作『フランケンシュタイン対地底怪獣』でオオダコとの格闘の後、湖に転落して、その後生死が分からなかったフランケンが再登場します。あんなにでっかいのが、水面に水死体として上がらなければ、ふつう探しますが、誰もそうはしなかったようです。

 フランケンは、今回しかも一人ではなく、二人現れるのがミソです。山の中で秘かに生きている「サンダ」は前作で水野久美さま(何故か前作と今作で役柄の苗字(戸川)は同じですが、名前が違います。改名したんですかね?)に育てられたフランケンです。

 彼の性格は前作同様、温和でおとなしい。前作と違って貧弱な二の腕はブルー・ワーカーで鍛えたように筋肉モリモリになっていて、顔付きも賢者のような風格すら漂います。雪男伝説も加味されたようなシークエンスも用意されています。

 かたや、オオダコとの戦闘からフランケンの細胞が海に流れ着き、海で細胞分裂を繰り返し、巨大に育ったフランケンの分身が「ガイラ」です。この作品の悪役ガイラは子供向け怪獣映画ではあり得ないほど恐ろしいキャラクターで、生物的な本能そのままに生きています。このガイラこそが主役といっても過言ではない。

 サンダもガイラも同じ遺伝子を持ち、特にガイラは現在で言うところのクローン・フランケンです。60年代に既にクローンを連想させる話を展開させていった本多監督の着眼点が素晴らしい。ただの子供向けにしたくなかった意気込みを感じます。

 『ゴジラ対ビオランテ』(1988)では動物ゴジラと植物ゴジラ(ビオランテ)の壮絶な戦いを描き、平成シリーズの中では最高傑作といってよい出来栄えでしたが、この作品ではその20年先をいっていました。

 同じ人間の中にある二面性の恐ろしさを扱った映画には古くは『ジキル博士とハイド氏』がありますが、あれでは交互に一人の人格が肉体を支配する状態でした。この作品ではより分かりやすく、二つに分裂しています。

 完全に同じ遺伝子を持つ、サンダとガイラが何故全く違う行動と性格を持つのかは大きな謎ではありますが、育った環境により違いが出るというのは怪獣映画であることを抜きにして考えても、とても興味深い。

 悪役ガイラはまさにこの映画の主人公です。冒頭、海中からの登場シーンから不気味で、暗闇の嵐の中で、前作からの因縁の相手「オオダコ」をまずは簡単にKOしたあと、船の乗組員をムシャムシャ喰らいます。

 つぎに沢村いき雄が演じる漁師たちを鷲掴みにして、旨そうに喰らいます。彼らが喰われる前の海面下にガイラが潜っていて、漁師たちが海面の様子を探ると海中のガイラと目と目が合うシーンが一番恐ろしい。

 その後上陸してからも、空港や繁華街で次々に人間を鷲掴みにしては美味そうに喰い尽す描写が多く、かなり気持ち悪く思われる方も多いでしょう。ただ、造形がフランケンというよりは海坊主か海猿といってもよいようなルックスでした。

 彼がやることも蛸退治や、ビルの一室を覗き込んで美女を捕獲したりとほとんど一緒で、違いとしては高いところに登らなかった事と人間食いくらいでしょう。とにかく強烈な印象を我々に残してくれるのは水野久美でも、サンダでもなく、ガイラでした。

 音楽がまた優れていて、『ゴジラ』でもおなじみの伊福部ワールドがここでも前面に押し出され、作品を盛り上げています。『自衛隊のテーマ』が曲調を少し変えて演奏されていたりして、東宝特撮ファンにはたまらない嬉しさがあります。

 伊福部音楽はなぜこんなに怪獣映画と相性が良いのか、本当に不思議なくらいよくマッチしています。この作品ではありませんが、キング・ギドラがはじめて姿を現すときの風変わりで気持ち悪い音楽も大変強い印象を残しています。

 映画的に他に優れているのは、湖でカップルがデートしている様子がインサートされた時、前半部分で漁船の乗組員がガイラに喰われるのを見ている観客は「またガイラの出番だ」、とばかり身構えていると、結局何もおこらず次の場面に移っていくというのがサスペンス的場面を作り出しています。結構細かい芸も披露しています。

 ラストシーンも唐突で、前作と同じように、いきなり終わりを迎えるスタイルをとっていて、火の海の中で戦い、途中で意味もなく水野久美の映像が挿入されるところも同じで、前作の焼き直しを見ている気分でした。

 歴史に埋もれてしまっている感のあるこの作品ですが、見るべき個性的な部分も多く、レンタル屋で、もし運良く見かけられれば、「即借り」をおススメいたします。ビデオだとかなり古くなっているだろうとは思いますが、案外ほとんど借りられていないため、結構綺麗に映ります。

 いまちょうどDVD化の真っ最中なので、古くて人気のない作品からどんどん店頭から消えていっているので、これにかかわらず、気になるものはすぐ借りた方がいいですね。多分、DVD化されても置かれる事のない作品ばかりだと思います。

総合評価 78点

フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ
フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ [DVD]

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The perpetual beta
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フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ (1966 / 日本)
あの終わり方は何だ??? こんな中途半端な映画、見たことない。 “ 終 ”と言う文字が“ 続く ”に見えました(笑)。 前作の「フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)」を見てない人には、さらに ? だったろうと思います。 ...続きを見る
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コメント(12件)

内 容 ニックネーム/日時
>用心棒さん
レンタル屋で見付け思わず、借りてしまいました。
この作品はむかしラジオで、松山千春さんが子どものころのお想い出の映画だとおっしゃっていたのが印象的です。

>サンダとガイラが何故全く違う行動と性格を持つのかは大きな謎

わたしは、ガイラにとってサンダはドッペルゲンガーなのではないか、という珍仮説を立ててみました。ルイ・マル監督のアラン・ドロン主演『ウィリアム・ウィルソン』や各種ジキル・ハイドものが思い浮かび、感慨に耽っています。
当時の東宝スタッフの幅の広さは時代的なものなのでしょうか。現在の一面的な見方しかできない想像力のない時代は不幸な時代なのかもしれません。
さみしい限りではありますが、古いB級作品といわれるものに多くの価値を見出す楽しさは格別ですね。
では、また。
トム(Tom5k)
2006/05/28 14:47
 トムさん、こんにちは。おおっ!借りられたのですね。置いていないところがほとんどなので、苦労されたことと思います。
 この作品は時間が経てば経つほどその希少性において、評価されていく作品だと思います。怪獣映画の中のカルト映画として君臨して欲しい名作です。
 >各種ジキル・ハイドもの
 仰るとおりで、人間の二面性を怪獣映画で表現できたのは素晴らしいですね。ジキル・ハイド物といえば、最近ジョン・バリモア翁出演の『狂へる悪魔』をみました。サイレント物で雰囲気が良く、好みでした。
>東宝スタッフの幅の広さは
 どうでしょう?本作にしろ、ドゴラそしてバランにしろ、東宝作品は自由かつ真面目に作っているのは見ていても伝わってきますね。
 現在のように制約ばかり多い世の中では、娯楽の殿堂であるはずの怪獣映画すら、残酷性と破壊シーンを前面に出せないのは『小さき勇者たち ガメラ』、ピーター・ジャクソンの『キング・コング』でも明らかですが、かなり不健全だと思います。
 時間が許す限り、レンタル巡りをして古い特撮物を探していきたいものです。ではまた。
用心棒
2006/05/28 15:21
こんにちは、デンスケです。「サンダ対ガイラ」で谷川岳の陸自とガイラの攻防戦は胸がおどる思いで見た記憶があります。確かにガイラの顔は醜悪ですよね。狙いを定めてメーサー殺獣光線車から放射されるビームでガイラがもんどりうつシーンは東宝特撮史上における名場面ではないでしょうか。私の好きな作品のひとつです。

先日、知人が制作したガレージキットで「サンダ対ガイラ」の前作にあたる「フラバラ」のフランケンの写真が届いたので、自分のブログで紹介しています。
興味があったら覗いてみてください。
デンスケ
2006/06/07 23:32
 デンスケさん、はじめまして。そしてコメントをありがとうございます。

 『サンダ対ガイラ』はもっと有名になって良い作品ですよね。カルト人気に収まっていて良い作品ではないと思います。

 あとですね、ええっとデンスケさんのブログに行きたいのですが、アドを教えてください。よろしくお願いいたします。ではまた。
用心棒
2006/06/07 23:42
アドを書いてなかったですね。ごめんなさい。下記アドです。
普段は哲学的な記事が多いのですが、今の最新記事がなぜか
フランケンです。
http://plaza.rakuten.co.jp/haiaraky
デンスケ
2006/06/09 00:42
 デンスケさん、こんにちは。早速行かせていただきます。ではまた。
用心棒
2006/06/09 16:28
こんにちは(*^^*) はじめまして!
おっしゃる通り、フラバラの続編のくせにラストがあまりにもおそまつでした(笑)。もうすこしオチのある脚本が書けなかったのでしょうか?ほんと残念です。
でも前編見せ場続きで、子供達は大喜びで見てました(笑)。
ポン太
2006/09/25 21:00
 ポン太さん、はじめまして。コメントを有り難うございます。
 特撮部分、そしてドラマ部分ともに見せ場の多いこの作品は東宝のみならず日本モンスター映画の隠れた名作ではないかと思います。
 人気者ゴジラで表現できなくなってしまった残酷描写やリアルな描写をふんだんに盛り込みながら製作スタッフが日頃の鬱憤晴らしをした作品だったのではないでしょうか。
 ではまた。
用心棒
2006/09/26 08:56
突然のTBで失礼致しました。TB返し感謝致します。用心棒様の鋭い解析、なかなか参考になりました。
「サンダ対ガイラ」は、見れば見るほど万華鏡のごとく色々な味わいを感じさせる不思議な作品ですね。「マタンゴ」と同じく人間の業をモンスターに投影させた深いテーマ性が、時代を越えた魅力を持つのかもしれませんね。
またお邪魔します。これからもよろしくお願い致します。
オタクイーン
2007/01/29 20:02
 オタクイーンさん、こんばんは。コメントとTBをありがとうございました。
 この作品に出てくるフランケン二人なんですが、なんというか「臭ってきそうな」体臭を感じさせる珍しいモンスターでした。
 目には強いインパクト、鼻にも異臭がインプットされる強固な個性を持つ作品ですね。
 こちらこそ今後もよろしくお願いいたします。ではまた。
用心棒
2007/01/30 00:38
初めまして。
私も「サンダ対ガイラ」は東宝特撮の中で気に入っている1つです。攻撃されるガイラを助けるサンダを見て分る通り、彼らは最初から敵対していた訳では無く、人間に対する価値の違いで争う事になります。

ガイラを手厚く介護するサンダの様子に、彼の「弟」に対する愛情を感じ、温かい気持ちにさせられるだけに後に来る悲劇が際立って感じます。独りぼっちで生きてきた彼らにとって「兄弟」というか「同種族」との出会いは、驚きと同時に喜びでもあったと思いますから。
サンダにしてみれば、人間を襲うのをやめない「弟」の所業に嘆き、ガイラにしてみれば、どうして「兄」は例の2本足の生き物の事になるとムキになるのか分らない。彼らは争いながらも、お互い苦しんでいたに違いありません。そう思うと、この悲しい「兄弟」を作り出した人間の罪深さを痛感してしまいます。

この物語を見て思った事は、人間にとって不死身の肉体なんかより兄弟・同族が仲良く生きていける幸せの方が一番大切なのだという事です。私達もコミュニケーションの輪を広げる為に、色々な人達と仲良くしていきたいですね。

http://homepage3.nifty.com/a-world/
A-chan
2010/11/04 19:43
 A-chanさま、はじめまして。

もとは同じ異形の種なのに、まったく違う価値観で生きていくふたりには悲劇しか用意されていないのでしょう。寂しいですね。

 ラドンにもつがいか兄弟かは分かりませんが、一方が力尽きて火山口に落ちていこうとするときに運命を共にしていました。

 二元論的に分けるのは簡単ですが、かれらは二人で一人ですし、人間には良いことを願う心と他者を蹴落としてでも自分さえよければ良いという二つの思いがバランスを取っているのではないでしょうか。

その寓話が今作品なのかもしれないなあと漠然と思っていました。

>コミュニケーション

その通りですね。ニュースを見ていると、嫌なことばかりではありますが、それでも生きていかねばならないわけですから、少しでも良くなるようにしていきたいですね。ではまた!
用心棒
2010/11/04 22:19

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『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966)ガイラがとにかく恐い!気持ち悪い! 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
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