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低予算映画というと、つまんない、ちゃち、やる気がない、など不評のものが多く、映画会社としても時間を埋めるだけでよいという姿勢がはっきりと見えるものも多い。現在ではわが国での映画興行も、宣伝費を掛けた一作品のみのシネコン・スタイルの上映だけで終わってしまい、同時上映という心地よい響きを聞かなくなってしまってから、ずいぶん日が経っています。 しかし、案外掘り出し物も多く、メインで公開された作品よりも、同時上映として添え物扱いだった作品の方を覚えている事もままありました。同時上映作品にはもともと誰も期待していない分、ちょっとでも印象に残りさえすれば、かなり得をした気分になったのです。 映画会社にしても、とりあえず低予算で撮らせてみて、評判が良ければ、徐々に予算を掛けた制作を任せるようになりました。コッポラだって、キューブリックだって最初から莫大な予算を得られたわけではありません。 もちろん、みんなが出世するわけではありませんので、一生この低予算映画を作り続ける者の方が多いのが現実です。そしてこうして一生もがき続けた作品にも、カルト的なファンがつき、再評価される関係者も数多い。これらを子供の頃観た世代が制作サイドに回り、彼らのヒーローを再評価する事もある。 タランティーノ監督が『キルビル』シリーズで、彼が昔観てきた日本映画、香港映画にオマージュを捧げたために、これらの作品が再評価されるようになる例もあります。これらは同時上映でも、低予算でもありませんが、宣伝に多くの金を掛けられるメイン映画とは明らかに区別された映画が後世のファンに多大な影響をもたらす場合があるのです。 この『水爆と深海の怪物』も、そのように後世に語り継がれる、素晴らしいB級映画なのです。この映画が語り継がれる要因はなんといっても、特撮の巨匠、レイ・ハリーハウゼンが制作に関わっていたからに他ならない。 この作品でも、彼の貢献は最大級のものであり、もし彼の仕事がなかったならば、この作品はかなり酷いエド・レベル(エド・ウッド並みという意味です)になっていた事でしょう。エド・ウッド監督の『プラン・9・フロム・アウタースペース』で出てきた蛸の酷さを見た人ならば理解していただけると確信します。 もっとも、この作品には余り予算を掛けてもらえなかったのは明らかです。その理由は、ハリーのオオダコには足が6本しかないからです。しかも上映されてから、姿を現すまで、50分近く掛かるのです。全編に特撮を使用するほどの潤沢な経費をもらえなかったのでしょう。 そのため、反対に「見えそうで見えない」というサスペンス的要素が加えられたために、はじめて海岸で姿を現した時、そして最も有名な、大蛸がゴールデン・ゲート・ブリッジに到着した時には、とても嬉しい気分を味わいました。 ハリーハウゼンが作り出した、蛸の造形は素晴らしく、またその艶めかしい動きはCGには出来ない手作りの圧倒的な美しさを感じます。金門橋を破壊する時の、蛸の締め付けの強さによるギシギシいう音がまた素晴らしい。出来る範囲で出来るだけの事をやり遂げるという、職人の技を堪能しましょう。 蛸が襲い掛かってきているのに、急ぐわけでもなく、普通に運転しているドライバーはご愛嬌ですが、目くじら立てて、「あれがおかしい」などという大人げ無いことを言わないように心がけましょう。 大きな予算を掛けて、映画会社のプライドを懸けて、製作するのも映画ビジネスですが、少ない予算をやりくりしながら、何処にお金を掛けるのか、何処はお金を掛けないのかをシビアに判断して、映画全体を構成して、期日どおりに映画制作し終えるのも、映画ビジネスです。 また不思議なことに、B級作品もカラーよりも、モノクロのものの方が画面構成が上手いような気がします。色というものに惑わされずに、バランスや照明を徹底的に追求する必要がある、モノクロ映画はカラー作品よりも、映像作りのエッセンスを学び、映画言語を習得しやすいのかもしれません。 総合評価 68点 |
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