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zoom RSS 『キル・ビル vol.1』(2003) ファンだからあえて言う。血はいらない。もうやめてくれ!

<<   作成日時 : 2006/01/10 19:12   >>

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 クエンティン・タランティーノ監督、2003年の作品。いまさら書くのもなんなのですが、この作品はタランティーノのものとしては、かなり質の下がってしまっているものです。彼くらいのフィルムメーカーとなると、ファースト・カットはもちろんのこと、おそらくファイナル・カットも自分自身で決めることが出来る立場にあると思われす。

 せっかく自分自身でなんでも決定できる立場まで上り詰め、絶頂にあると思われる彼が作った作品が、この程度のものでしかないのは残念でなりません。素晴らしい作品を切り刻まれたオーソン・ウェルズ監督、シュトロハイム監督、そしてグリフィス監督に比べ、最良ともいえる制作環境にいる彼が、まさかこのような無意味なものを作り出したのは理解を超えています。今こそ作って欲しかったのはリンチ監督の『ストレイト・ストーリー』のような変化球的作品でした。

  作品自体に戻ると、モトネタの多くが判っている僕は、残虐シーンでもニヤニヤ笑えてしまうために、周りの方から見ると映画オタクか変人にしかみえなかったのではないでしょうか。自分が好きなように編集するのは、ほとんどの監督の夢であることは明らかでしょうが、今回に限っては会社がやらせていいこととだめなことの判断を下すべきであったと思います。

 確かに香港映画や深作モノをたくさん見てきた僕らの世代からすると楽しめる作品であり、これを観ることで、モトネタとなった『死亡遊戯』、『修羅雪姫』、『片腕カンフーvs空飛ぶギロチン』、また直接には引用されませんが『座頭市』、『仁義なき戦い』などに見られる立ち回りを髣髴とさせる映像が多く、それら昔の映画が再評価されていることはうれしいことですが、タランティーノの作品としてはあまり面白みの無いものと思われます。

 いつもどおりの時間配置をずらしていくシーン構成も、正直言うとワンパターン化してきています。『パルプフィクション』の時のような驚きはもう全くなくなってしまい、ルーシーとの決闘シーンでかかるマーチのような音楽も(おそらく対位法を狙ったのだと思いますが)あまり効果的とは思えません。せっかく『ジャッキー・ブラウン』で優れた映画作家の仲間入りをしたかと思いましたが、後戻りしてしまったのは返す返すも残念です。

 スプラッターのような血の飛び散り方もむしろB級と言うよりは、c級とでも言わなければならないもので、あそこまで下世話にやるべきものではなく、スクリーンで見せる必要の無い、とても汚らしい映像です。深作監督は『BR』で残酷描写が大問題になりましたが、あの作品では、サブテキストとして極限下での信頼と恋愛を扱っていた作品ですので、特に言われているほど問題とは思いませんでした。

 厳しいことばかり言っていますが、僕は彼のフィルムにとてもほれ込んでいたので、余計に彼がなんでもできるからといって、ゴミのような作品を残してほしくないのです。点数としては70点くらいの出来のものです。この点が高いか低いかは意見が分かれるとは思います。なぜなら世の中には60点もいかない作品が大半を占めているからです。

 ただ彼はタランティーノなのです。堕落させてはならないので、面白いとかつまんないで判断しないで欲しい。先日、知り合いの女の子と話していて、(10代です)タランティーノ監督の話が出てきました。彼女が観たのがこの作品だけであり、印象を聞くと「血がバンバン出るので気持ち悪く、こんな変な監督と思わなかったのでがっかりした」とのことで、僕自身もかなりがっかりしてしまいました。

 もう血はいらない。
総合評価 72点
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
 TB有難うございました。お返し致しました。
 僕は「パルプ・フィクション」をそう面白く思えず、その延長にあった(と解釈している)「ジャッキー・ブラウン」で、いよいよ限界を感じたので、「キル・ビル」シリーズは寧ろ面白かったですね。映画としては「パルプ」の方が上でしょうが、映画の出来栄えと面白さは必ずしも比例しませんからね。ただVol.1と言われているほうのスプラッターぶりは些か度を越していて、確かに良い気はしませんね。血の量もさることながら、手のない人間なんて見たくもありません。その点で用心棒さんのご意見に賛成です。
オカピー
2006/01/11 15:36
 こんばんは。やっと人並みにTBできるようになりました。たまに2回送ってしまいますので片方はお手数ですが、削除しておいて下さい。

 『キル・ビル』は1と2を続けて見て、初めて一本の作品になります。好き勝手やるのは監督冥利に尽きるのでしょうが、作品は後々まで残るので、彼にはもう少しがんばってもらって、名作と呼ばれる作品を作ってもらいたいものです。出来ると思うんですけどね。

 ではまた。

用心棒
2006/01/12 01:12
個人的には、VOL.1が好きです。確かにスプラッターのように残酷なシーンが多かったです。
決闘シーンには血肉踊る興奮を得ましたが、そのほかのシーンではそうでも無かったです。
VOL.2は平凡な内容でがっかりしました。
ヒロスケ
2006/02/07 12:58
 ヒロスケさん、こんばんは。コメントありがとうございます。

 これって、二つ合わせて見て、はじめて意味を持つ作品だと思います。二つで一本としてみると、前半(Vol.1)の疾走感に比べての後半(Vol.2)のグダグダなテンポに我慢できない作品なのではないでしょうか。

 つまり、一本として見た時の山場の構成の分布が前半部分に集中しすぎているために、後半に見るべき物がほとんど残っていないのです。

 実際に記憶に残っているのはルーシー・リューとの決戦なのですが、これこそ後半の最後にもって来るべきクライマックス・シーンであり、タランティーノ監督お得意のプロットばらしが完全に失敗した、まさに策士策に溺れる瞬間だったのではないでしょうか。ではまた。
用心棒
2006/02/08 02:10

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