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zoom RSS 『狂った果実』(1956)ヌーヴェル・ヴァーグにも影響を与えたとされる石原裕次郎の初主演作品。

<<   作成日時 : 2005/12/12 02:23   >>

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 中平康監督による、原作が石原慎太郎現都知事、主演が故・石原裕次郎という今考えるととても豪華な、彼の記念すべき初主演作品です。この作品は前回の『太陽の季節』と同じく、湘南の雰囲気を上手く捉えた良作に仕上がっています。波の音や風の音、海の香りが漂ってくる愛すべき作品です。

 圧倒的な存在感を示す裕次郎ですが、この作品はそれだけのものではありません。物語、演技、音楽、その他の作品を作り上げていく諸要素全てが裕次郎のためだけではなく、作品のレベル自体を更に上げることに貢献しています。特に作品の要である物語の展開は、最高の出来栄えです。ポランスキー監督の『水の中のナイフ』を見たときに、彼の作品をオリジナルな映像感覚だと思っていましたが、後にこの作品を見たときに『狂った果実』の方が先だったので、驚きました。

 ジャズの持つ、気だるいが動物的で破壊的な雰囲気を上手く出したオープニングの音楽と共に、疾走してくる津川さんのモーターボートのモンタージュは、後で重要なシーンに結びついてきます。オープニングとクライマックスが、最後で繋がってくる時間性をずらした構成が効果的に使われています。

 最初と最後は主に津川の視点で物語が展開しますが、中間部は裕次郎と北浜を中心にした群像の視点で描かれています。三人の三角関係に発達していく過程が上手く描かれていました。ただあまりにも常に人物を画面の中心に置き続ける撮り方により、オフスクリーンの広がりをあまり感じられないのは残念でした。意識的に二人だけの世界を表現する時にこういう撮り方をするのは良いと思うのですが、せっかく湘南の若者群像を描くのだから常識にとらわれない撮り方を模索してもらいたかったのが本音です。

 初主演となる裕次郎は、全く硬さもなく自然に演じ、すでに大物振りを存分に発揮しています。またそんな裕次郎に負けることなく、共演の北原、岡田、そして誰よりも津川の演技がとても素晴らしく、作品を引き締めています。荒削りな部分も見受けられますが、それを補って余りある勢いとひたむきさが素晴らしく表現されています。後の名優となっていく片鱗は既に示されています。

 またヒロインの北原も出来がよく、この作品の中で、圧倒的な個性を放つ裕次郎や津川よりも落ち着きと貫禄を示しています。岡田も良い味を出して作品の中で生き生きしていました。各々が荒削りであり、ところどころにぎこちなさがあるのですが反ってそれが新鮮な魅力を作品に与えています。

 また「水」と「太陽光」の映像の出来が素晴らしく、特に「水」に色気を感じました。「水」の香りと「太陽」のギラギラした暑さを画面から放出しています。前述した音楽も素晴らしく、佐藤勝と武満徹を同時に使うというとても贅沢な布陣に驚きました。また美術にも松山崇を起用するのは、賢明であり、彼の作ったキャバレーのセットも上手く使われていました。津川の乗っていたモーターボートの名前が「SUN−SEASON号」、つまり「太陽の季節号」だったのは大笑いしました。松山の洒落か、監督の洒落かどっちだったのでしょうか。

総合評価 92点
狂った果実
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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
石原裕次郎も津川雅彦もボンボン育ち。
この映画に合ってますね。
夏の逗子海岸に遊びに行く兄弟。
チンピラ学生役で石原慎太郎と長門裕之が特別出演しているのも面白いですね。
唖然とするようなラストも良かったです。
太陽族。昭和30年代の青春。
蟷螂の斧
2015/07/26 11:30
 こんにちは!

この映画を観たあとに数年経ってからロマン・ポランスキー監督の『水の中のナイフ』を観る機会があり、そのときには映像の撮り方があまりにもこの作品と似ているので、驚きましたよ。

製作年度は『狂った果実』が先でしたので、たぶんポランスキーかカメラマンが見ていたのではないかと思います。

ラストシーンについてはおっしゃる通り唖然としますね。ヌーヴェルヴァーグやアメリカンニューシネマのストーリーの閉じ方ですよね。

ではまた!
用心棒
2015/07/26 19:06
 用心棒さん、こんばんは。

 僕は「水の中のナイフ」のほうを先に観て、数年後に「狂った果実」と「太陽の季節」を観たんですよ。
吃驚しましたねえ、祐ちゃんの映画がヌーヴェルヴァーグやポランスキーより先に、“ヌーヴェルヴァーグ”してましたからねえ。
 それ以来注目して中平康監督の作品は観ることになりました。
 「日本人よ、日本映画を侮るなかれ」です(笑)
オカピー
2015/08/18 20:42
 こんばんは!

>水の中
ぼくもですよ(笑)
ポランスキーの感覚って凄いセンスが良いなあと思っていたのですが、裕次郎作品を観た時に衝撃を受けましたね。

スター映画はどうしてもスターを中心に撮るはずですが、監督やカメラマンの心意気なんでしょうね。ゾクゾクしながら、先見的な和製ヌーヴェルヴァーグを見ましたよ。

ではまた!
用心棒
2015/08/18 23:28
こんばんは。
僕がこちらの記事にお邪魔したのは1年と4ヶ月前なんですね
オカピーさんのブログにもしょっちゅうお邪魔しています。

>水の中のナイフ

まだ見ていないですそのうちに

>「水」と「太陽光」の映像の出来が素晴らしく

白黒だからこそ、出来が良かったのでしょうか?

>ジョンは何をやってもロックにしかなりません。
>でもそれが彼の良いところですww

用心棒さん。いい事を仰いますね〜
永遠の不良ロッカー、ジョン・レノン
カバー・ヴァージョン(1950年代のロックン・ロール)も様になります
蟷螂の斧
2016/11/25 21:08
こんばんは!

オカピーさんとはブログ開設時からのお付き合いなので、かれこれ10年以上になります。

映画について、とても真摯な方で、邦画を含めて新作映画の現状を嘆いていらっしゃいます。

むかしからのお付き合いの方がどんどん減って行ってしまっているのは寂しいことですが、またかつて遊びに来ていらした方が復帰された時に誰もいなかったら寂しいでしょうから、こつこつマイペースで生き残りながら、みなさんを待っていようと思っていますよww

>ロッカー
ソロ時代に出した『ロックン・ロール』はひところわが国で大流行りしたカバーそのものですものねww

あのころにジョンとポールがセッションで共演していた音源もブートで出ていました。ぼくは買っちゃいましたが、レアという以外は特に何も響かなかったですよwww

ではまた!
用心棒
2016/11/26 01:01
>オカピーさんとはブログ開設時からのお付き合いなので、かれこれ10年以上になります。

そうだったんですかオカピーさんは人柄もいいし、博学だし、本当に勉強になります。まさに教授

>ジョンとポールがセッションで共演していた音源

僕は聞いた事はないですが、「・・・・。」と言う人が多いです

>ヒロインの北原も出来がよく

「風速40米」でギターを弾く場面も良かったです。
「ソーラン節」
蟷螂の斧
2016/11/26 17:40
こんばんは!

オカピーさんとは最近は昔のサイレント映画の話でいろいろやり取りさせてもらっていますww

>聞いたこと
そんなに出来が良い訳ではないので、特に気にしなくても良いと思いますよww
二人がセッションしたというだけしか価値はないですので、なんでもかんでもありがたがる必要はないと思います。

ではまた!
用心棒
2016/11/27 20:20

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『狂った果実』(1956)ヌーヴェル・ヴァーグにも影響を与えたとされる石原裕次郎の初主演作品。 良い映画を褒める会。/BIGLOBEウェブリブログ
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