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まだ監督としての名声を確立する前の作品であるために、予算があまり取れずにいた頃の作品。素晴らしい工夫は随所に見えますが、自分の思い通りには仕事が出来ていない印象はぬぐえません。 今回のピーター・ローレは大ヒットですが、その他の役者の人選に関して強くそれを感じます。古い作品ということもあり、そこかしこに「かびくささ」も感じますが、画面を通してレベルの高さは既に現れています。 またイギリス時代の大ヒット作品であり、『三十九夜』(1935)、『バルカン超特急』(1938)と並ぶ代表作でもあります。当時としては暗殺に始まり、誘拐、追跡、集団の銃撃戦、そして狙撃シーンなど観客を飽きさせない見所満載の贅沢な一本だったと思われます。 作品への決定的な影響を与えたのはヒッチ先生自身よりも、むしろ悪党のボス役でヒッチ作品に初登場したピーター・ローレの持つ雰囲気と演技力でしょう。後の作品『間諜最後の日』(1936)でも出演しますが、この時ほどの輝きはありません。 この作品での彼はまさに支配者であり、強さが前面に押し出されすぎており、他の俳優の個性が弱すぎることもありどこかバランスの悪さを感じます。ヒッチ先生も無理やり彼を引きずり出して、作品に出てもらっているほどのお気に入りだったためか、まるで彼こそがこの作品の主役であるような撮り方をしており、本筋からすると混乱しました。 フリッツ・ラング監督のトーキー時代の傑作『M』(1931)でも明らかなように、悪人を演じさせれば彼は優秀でした。ただ全員が彼の引き立て役以上には目立っていないのが残念です。 作品の展開のリズムがよく、小気味よく仕上がっています。後に見られるようなマニアックすぎるカメラワークも出てきません。ロイヤル・アルバート・ホールでのシンバルの音にまつわる暗殺シークエンスは秀逸な出来栄えで、流石と唸らせてくれました。 ヒッチ先生も気に入っているのか、後年の『知りすぎた男』でもこのシーンはそのまま用いられていました。風光明媚なスイスをきっちりと律儀に作品に取り込むヒッチ先生の「観光趣味」は、ずっと後の『知り〜』でもモロッコの風景を収めてくるように、彼の映画の雰囲気作りには欠かせないようです。敵のアジトから脱出する時に鳴らされる鐘の音も忘れがたいものです。 ロー・アングルから捉えられるピーター・ローレの演技が、とても良い作品です。音の使い方、悪役の選択が見物です。ヒッチ先生の作品では良い悪役を得た時ほど、良い作品が生まれているように思います。 総合評価 74点暗殺者の家
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映画評「暗殺者の家」
☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1934年イギリス映画 監督アルフレッド・ヒッチコック ネタバレあり ...続きを見る |
プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] 2006/07/30 17:39 |
「才能あるアマチュア」対「プロ」
先日のお話で、私が今アルフレッド・ヒッチコック作品を再見している旨をお話しました ...続きを見る |
オタクイーンの「恋するネヴュラ」 2007/07/20 01:59 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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「暗殺者の家」は早稲田のACTミニシアターで観ました。映画館ではありません。会員制のクラブで、今でも続いていると聞きました。後の完熟したヒッチ作品を観た後では地味に感じられますが、仰るように切れ味は抜群ですね。 |
オカピー 2005/11/07 15:59 |
オカピーさん、こんにちは。普通、サスペンスに限らず映画を見るときに、その観客が擦れていればいるほど、ちょっとした映像が出てきても「何かこれは後々意味を持ってくのかもしれない。」などと勘繰って見る癖がついてしまっています。 |
用心棒 2005/11/07 17:06 |
TB致しました。 |
オカピー 2006/07/30 18:14 |
オカピーさん、こんばんは。TBとコメントを有り難うございます。 |
用心棒 2006/07/30 18:40 |
お久しぶりです。以前鑑賞済みの「知りすぎていた男」に続き、先日やっと「暗殺者の家」を初見(情けないお話で(笑)し、両作品を比べる事が出来ました。各々の作品に於ける用心棒さんのご意見には足元も及びませんが、個人的には「ヒッチ研究には格好の素材。当時の製作事情を考慮する必要もあり。プロットを大きくいじらずあえて踏襲しながらも、細部に熟練の技を匂わせるヒッチの姿勢に共感」というスタンスでしょうか。監督の実力は予算の都合やキャスティングの発言権にも表れるものと思います。さすがに不入りの穴は塞げなかったようですが(笑)。 |
オタクイーン 2007/07/20 02:12 |
オタクイーンさん、こんばんは。お久しぶりです。コメントとTBをありがとうございました。後ほど伺います。 |
用心棒 2007/07/21 01:26 |
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